友人が勤めている店のポスターを機械音痴な彼女のかわりに作ってあげたらお礼にとおいしいと評判の豆大福と苺大福を沢山貰った。大福、ときたらもうやることは一つだ。


「いらっしゃい、ゆき、元就」


日曜日の昼過ぎ、あたたかな日差しが射し込む中2人そろって我が家にやってきた幸村と元就を招き入れ、うがいと手洗いをさせている間に熱いお茶と大福を用意し居間にある和室スペースちゃぶ台にそれらをことりと置けばちょうど2人がやってきて我先にとそれぞれの定位置へ腰を下ろす。

目は真っ直ぐに大福を見つめながらも手を出さないのはあの数ヶ月の間「全員揃って合図を出すまで食べない」というのを徹底させた結果だろう。

幸村はともかく元就は私より年上にも関わらずやっぱり可愛い。何故だ。


「じゃ、食べようか」


いただきます、と手を合わせてから苺大福を手に取りぱくりと一口。


「おいしー」


ああ、幸せ。
私の分はそれぞれ2つずつ確保しているため食いっぱぐれることはないが2人とも相変わらずすごい食べっぷり。

元就は好物以外もこうならいいのになかなか上手くいかないものだ。


「今日は片倉殿はいらっしゃらないでござるか?」


そういえば、といった感じにきょろきょろと部屋を見回す幸村に苦笑しながらその口元についた白い粉をぬぐう。


「小十郎さんだってそんなに頻繁には来ないよ」


事実週に2回会えれば多い方だ。数週間会えない時だってあるし外で会うだけでここには来ない日もある。


「とはいえ暇を見つけては庭の農場を見に来てはいるみたいだけど」

「そうなのですか…」

「お互い仕事もあるからね」


こればかりはしょうがないと割り切っている。
そりゃああの頃みたいに朝から晩まで一緒に居られたらとも思うけど、これはこれでいいものだ。
なんというか…あの頃にはなかったわくわくやうきうきがあるっていうか。そんな感じ。


「そういえば元就昇進したんだってね、おめでとう」

「ふん、当然のことよ」

「はいはい。お母さんは嬉しいよー。あ、そうだ。元就にはこの前…と言っても一緒に住んでた頃だから2人にとっては何百年も前だけど…言った気がするけど猫をね、貰うことになったんだよ。まだ子猫なんだけど…」


猫、という単語を口にした途端ギラリと輝く元就の瞳。
か、かわいい…猫好きは健在か…!


「猫でござるか!」

「猫でござるよー。灰色の美形さん。ちょっと臆病な子みたいだけど…来週からうちに来るから仲良くしてあげてね」


ふん、とそっぽを向きながら大福を食べる元就はそれでもうきうきしているのがわかって思わず萌え悶えてしまいそうになるのを必死にこらえる。ああ、後ろからぎゅっとして思い切り撫で回したい…!大きいからしないけど…!




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