ふた月振りの我が家はずっと家を空けていたとは思えない位綺麗な状態でそこにあった。
きっと奴の仕業だろう。感謝感激。

あの後、葬式に来ていた母に小十郎さんが挨拶したり(恋人、ということになった。間違いではないがむずかゆい)、政宗父と意気投合し政宗の事を頼まれたり、ばたばたしながらもなんとか我が家に帰ってこれた。

そして政宗の話では七人共現在長野…しかも私の地元にいるという。それに関して驚いたのは勿論七人が滞在中普通に外出していたにも関わらずよく鉢合わせしなかったものだと感心した。まぁ、これも自称神の仕業だろう。

家に関してはみんな近場に住んでいるらしいがこの家とは少し離れた、高校を挟んだ反対側に住んでいるという。確かに向こうの方がマンションやアパートは安い。


「花壇、何植えようかな」


片倉農園は残念ながら今は何もない。その内、またなんか作れたらいい。

少し花壇を広くしようか。あぁ、布団も干さなきゃな…食材もなんにもない。

そういえば仕事も探さなきゃ。

高校専門時代はずっと本屋でアルバイトをしていたが正直あそこに戻るとなると微妙だ。どうしてもそりの合わない人が二人もいるから。

専門卒業してから2ヶ月間取り合えず契約社員としていたけどそれが理由で新しい仕事探してて自称神とのあれになったわけで。店長もそれを知ってたから辞めるときに凄い謝られて焦ったくらいだ。

だからまぁ…戻れないよな。

専門では経済を学んでたからそれなりの資格はあるし事務かなんかで探そうか。どっちにしろ明日以降だな。


「あー…」



ゆっくり出来るのはまだ先になりそうだ。

今の私は笑みを浮かべているだろう。
なんとなく、そう感じた。




車を走らせスーパーへ向かう。
お米と、卵と、牛乳と
野菜はなんにもないし家にあるのは調味料と粉類、乾麺だけだから買う物は大量にある。


「(夕飯何にしようかな)」


お肉やすいな…肉野菜炒め?きゃべつ安いかな?うーん。


「ちょっと旦那!団子は二パックだけだって言ってるでしょ!」


聞き覚えのある声とセリフにばっと声のした方を向けば
見覚えのある二人組の姿。


「し、しかし今日は安売りで…」

「安売りでもだーめ!買い溜めしたってあるだけ食べちゃうんだから!」


あの頃とは違う世界、違う時代に生まれ育ったというのに変わらぬ二人の会話に驚きも忘れつい吹き出してしまう。


「あーほら旦那笑われてるよ恥ずか、し…」

「佐助?」


此方を振り向きまん丸くした目をさらに見開いていく猿飛にそんな猿飛を見て首を傾げながらこちらを見る幸村。


「久しぶり、でいいのかな?」


再会がスーパーだなんて私達らしくて笑えますね、なんて軽口を叩けば二人はハッとしたように此方に駆け寄ってくる。


「あきらちゃん!?」

「あきら殿!」


あぁ、懐かしい呼び方。まだ二月しか経ってないのに懐かしいなんて変かな。
取りあえず


「場所、変えない?」




レジで会計を済ましフードコートの一席に座る。

そこで聞いたのは二人が小さい頃から曖昧だけど前世の記憶があったこと
前世と同じように幼い頃から共に育ったこと
記憶が全て戻ったのが政宗達と同じくしてふた月前だということ。


「びっくりしたよ。大学入ったら毛利の旦那や鬼の旦那はいるし高校の入学式から帰ってきた旦那は竜の旦那がいたって騒ぐし」


それから鬼の旦那経由で風来坊に再会して竜の旦那経由で右目の旦那とも会って


「後はあきら殿だけだというのに何故かあきら殿の家だけは誰も思い出せず…」

「ショッピングモール端から回ってここだ!って場所は見つかったんだけどそっからどっちに行けばあの家に行けるのか…それどころかあの家の外見すらわからなくてさ。
でも今思い出した。ここ、よくあきらちゃんと来たよね。初めてここに来たときなんか懐かしいような感じがして不思議だったんだよ」


猿飛の話からわかったのはみんなは戦国時代での記憶やこちらに来た記憶はあってもあの家に関する…例えば家の外見、近所にあったものなどは靄が掛かったように思い出せないということだった。

自称神による記憶操作がそこにあるのは明白で、なんとなくだけどそんな中で再会出来たことが嬉しく感じられた。


「竜の旦那の話で近くに住んでることはわかったのに肝心な連絡先聞いてないとか言うし!」

「あ…」


そういえば再会の感動や叔父さんのことで連絡先の交換なんてすっかり忘れていた。


「あはははは!どうやって連絡とるつもりだったんだろ私…!」

「笑い事じゃないでござる!それ故今日までの間再会出来ずにもどかしい日々を…!」

「あのね…今日こっちに帰ってきたばかりなの、私。
なのに会えるって凄くない?」


まさか帰って早々会えるなんて思っていなかったから本当にびっくりした。


「ではきっとこやつが巡り合わせてくれたのだろう」


そう言って幸村が鞄から取り出した巾着に入っていたのは、ショッピングモールで買ったお揃いの、櫛。


「俺達もあのカチューシャ付けてるしねー」

「え?あ、本当だ」

「気付いてなかったの!?」

「あはははは」

「棒読み…!」


ああ、なんか
すっごく嬉しい





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