「mammy!」
叔父さんが眠る部屋に戻った私は二人目の懐かしい顔に再会した。
「政宗…?」
「yes!」
「大きく、なったね」
くすりと笑って頬を撫でれば擽ったそうに片目を閉じる
その仕草は私が知っているそれと一緒で胸が暖かくなった。
「今は高二だ」
私の肩に頭を乗せ、ぽつりと零す政宗
「やっと会えたぜ」
「…久しぶり」
「あぁ。久しぶりのmammyの香りだ」
そんなに睨むなよ小十郎…という政宗の言葉に小十郎さんを見れば眉間にはいつも以上に皺が寄っていて少しだけ笑えた。
「…聞けよ直、mammyだってよ。お前の姪っ子は知らねー間に俺の嫁さんなっちまったらしい」
そんなほのぼのとした再会の場に聞こえた見知らぬ声。
「親父!」
「輝宗様!」
「え、お父さん?」
叔父さんの横に座りくつくつと笑っている政宗似(この場合政宗が似ているのだけど)のおじ様。おお、好み。
…小十郎さんからの視線が痛いのは気のせいだと思いたい。
そしてこの人の存在を忘れていたらしい政宗が顔を真っ赤にしているのがとてもかわいい。
「伊達輝宗。そこにいる政宗の父親だ」
「…加藤あきら、そこで眠っている加藤直道の姪です」
今日は来ていただきありがとうございます
政宗父の前に正座し頭を下げる。
「直とは古い友人だ。嬢ちゃんのこともよく聞いていた」
「そう、なんですか?」
「寡黙なくせにあきらが、あきらがって…よっぽど可愛かったんだろうな」
叔父さんが亡くなってからそれまでよりもっと、自分がいかに叔父さんに愛されていたかを知る。
「最期は静かに逝きました」
「あぁ。馬鹿みてぇに社長室で死にてぇって言ってたが…大好きな姪っ子に看取られるなら本望だろう」
「…だったら、いいんですが」
ねぇ、どうだった?叔父さん。
なんて聞いたところで答えてはくれないけど
「それにしても、mammyねぇ…」
ギクリと政宗の肩が跳ねる。
「随分可愛い呼び方じゃねぇの」
「shit!」
にやにやと笑いながら政宗をからかいだす輝宗さんを見ながらばたばたと走り回る親族達を手伝うために立ち上がる。
「平気か」
「…はい」
こんな小さな心遣いがこんなにも嬉しい。
本当に、小十郎さんには弱いのだ
―葬式当日
「…あきらの事は俺の小十郎に任せて安心して逝ってくれ」
そんな政宗の力強い言葉
「あきらに会わせて下さったこと、あきらを守って下さったこと、本当に感謝しています」
小十郎さんの暖かい言葉
叔父さんの眠る棺桶に向かいそう言った二人の言葉を私は一生忘れないだろう
「え、長野の高校?」
「あぁ、mammyの住んでるとこが長野ってのは覚えてたからな!」
「からな!って…本当に?」
葬式後。親類や会社関係者が集まっての食事の最中。政宗の言葉にぽかんとする。
「長野の高校に通ってるって…じゃぁ一人暮らし?」
「いや、小十郎もだ」
「小十郎さんも!?」
当然だろ?とでも言いたげな表情の政宗に脱力する。
「言っとくが、mammyのことを一番必死に探してたのは小十郎だぜ?」
「政宗様!」
「んだよ、本当のことだろ」
―私が長野に住んでたから
それだけの理由で長野の学校へ?…滅茶苦茶過ぎる…
「長野のどこ?」
「○○高校だ」
「…私の、母校…」
「はぁ!?」
今度は政宗が驚く番だ。
私の母校ってことは偏差値そこそこの私立校、か。
私立だから他県出身の子もそんなに珍しくないけど…
「なんかびっくりしすぎて頭がついて行けない」
「mammy頭よかったんだな…」
「どういう意味だこら」
あぁ、なんか笑えてきた。
ついこの間までのあの虚無感はなんだったんだろうか。
「ふふ、みんなで住んでたあの家、まだ残ってるんだ」
「Really!?」
「Yes。自称神が報酬って名目でくれたんだよ」
もしかしたら奴はこうなることをわかっていたのかもしれない。…否、わかっていたのだろう。二人をこの世界に転生させてくれたのは彼なのだろうから。
「奴らもきっと喜ぶぜ!」
「奴ら?」
「…全員、転生してるんだ」
「……え?」
「後はお前だけだったからな」
つまり、七人全員転生していて
更に私以外はもう再会している…?
「え、ええ…えええええ?」
こんなエンディングも
ありですか?
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