※BASARAキャラは出てきません



俺には友人がいた。

その友人は「人間」で、とてもかわった奴だった。

俺達神には姿がない。俺達を見る相手のイメージで姿が変わる。

あるやつは俺を象に見た
あるやつは俺を狐に見た
だけど大抵の人間は俺を人間に見た

人間ってやつは好きじゃない
ただ面白い奴等だと思っていた

神は絶対の傍観者だ。気まぐれに手を貸すがそれはあくまで暇つぶし。娯楽でしかない。不幸も然りだ。

そんな中俺は暇つぶしに自分が司るそことは違う世界に降り立った。猫の姿で。

そこで出会ったのがやつだった。

奴はまだ五歳に満たない幼子で、心臓に病を抱えていた。

にも関わらず俺を抱え笑う姿に気まぐれで病を治してやった。

奴の周りは奇跡だと喜んだ。奴はキョトンとしていた。


それから俺は自分の世界に戻りまた退屈な日々を送っていた。
奴がいたのは東の小さな島国だったか。
なんとなくそのことを思い出しその国を覗いてみた。
勿論やつはいない。時代や世界すら違うのだから当然だ。


「(戦国時代ねぇ…)」


くっだらねぇ


「あぁ、でも」


あいつ等の目は嫌いじゃない



それから数年が経ち、ふと奴のことを思い出した俺は再びあの世界に降り立った。

そこで再会した奴は随分と年をとっていた。あぁ、あれから四十年しか経っていないのに、人間とは本当に老いるのが早い生き物だ。


「どこから来たんだ?」


ベンチに座る奴の足元にすり寄れば奴は昔のように俺を抱き上げ撫でながらそう言った。

それに尻尾をひらりと振りながらにゃぁ、と鳴けば奴は目元に皺を寄せ俺を撫でる。歳をとったってのに撫で方はかわらないらしい。


「…最近、体調が悪いんだ」


どうやら心臓の病らしい
生まれつき心臓は弱かったがある日突然治ったという
不思議な話があったもんだなぁ
今回はきっとそんな奇跡も起こらないだろう。あと、二年も保たないと言われた。俺は社長室の椅子の上で死にたいんだが周りはどう言うだろうか


膝の上で丸まり相槌すら打たない俺に奴はぽつりぽつりと話し始めた。

―そうか、また病にかかったのか
あぁ、でもお前は生きたいとは思わないんだな
なら、俺も手は出すまい


それから幾度も俺は奴の前に現れた。
奴の前で猫に徹したが、いつしか奴は俺を友人と言うようになった。

初めてのお気に入りが友人に変わった瞬間だった。


「私には姪がいるんだ」


ある日奴はそんな話をし出した。

自分は妻を早くに亡くし子はいない。姪や甥は何人もいるが、一人だけどうしても目をかけてしまう子がいる。


「その子は幼い頃から自分を隠すが上手く、器用なくせにとても不器用なんだよ」


―あぁ、俺のお気に入りにもそういう奴がいる。オレンジの毛をしているんだ。珍しいだろう?


「初めて会ったのはあの子が五歳の時だ。驚くことに既に本音と建て前を区別しお世辞すら言っていた。それから会社が忙しくなり再会したのはあの子が高校に上がる前だったか」


あの子はな、死んでたんだ。
勿論心臓は生きている。表情もあった。ただ心が生きてなかった。
焦ったよ、まさかこんな事になっているとは思わなかったからな。


「会う度に少しずつ感情は戻っていったが一番根っこは麻痺したままに見えた。それでも凄く可愛くて…まるで娘のように愛おしい」


奴があまりにも暖かな表情をするから俺はその姪に興味が出た。


「私はあの子を置いて逝く事が唯一心残りなんだ」


奴の言葉を聞き俺は奴の姪っ子を見に行った。あいつもなかなか面白い人間だった。


そんなある時、俺の世界のバランスが崩れた。その原因の場所は、あの「日本」だった。


―力のある奴を異世界に送ろう
あぁ、なら俺のお気に入り達にしよう

場所は…そうだな、あいつの所でいい


あぁ、もしかしたら俺のお気に入り達ならあいつを変えられるかもしれないな
だって、俺のお気に入りなのだから


出来るだけの願いを叶えてやる
醜くて滑稽で輝いてる、人間ってやつになれるように

あぁ、ほら、やっぱり俺のお気に入りは凄いだろう?こんなにもお前の姪っ子は"人間"になった


だから安心して、嫁に会ってこい





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