幸村は私とお揃いの櫛とプレゼントした結い紐
猿飛も同じくお揃いのカチューシャとプレゼントの工具セット
政宗は私があげたキセルとお気に入りの眼帯
小十郎さんは御守りと野菜の種
元就は筆のセットと和英辞典
元親は鋏と工具セット
慶次は組み紐と愛用していた徳利

それぞれ、思い入れのあるものと全員で撮った写真を持ち、リビングに集まっていた


「置いていってよかったのに」


全員が全員律儀に私の渡したプレゼントを持ち帰るなんて。


「なーに言ってんの。折角あきらちゃんがくれたものを置いてくわけないでしょー?」

「そうでござるよ!」


チラリと時計を見れば正午10分前を指していた。


「…みんなに言いたいことはいっぱいある」


出来るだけみんなに伝えてきたつもりだけど、それでも、やっぱり沢山。


「ゆき、ゆきの真っ直ぐさは危うくもあるけど、だけど全員が持っているわけじゃない大きな長所だよ。ゆきの笑顔にはいつも助けられた。その優しさは大切にしてね」

「あきら殿…」

「猿飛。ずっとゆきのオカンとか人でなしとか色々言ってきたけどその面倒見の良さにいっぱい助けられた。仕事柄難しいかもしれないけど、ゆきを大切に思うならもう少し自分を大切にした方がいいんじゃない?人は、人形にはなれないから」

「…そうかもねー」

「元就。憎たらしくて悪態ばっかついてたけど、一番最初に頼るって言ってくれて嬉しかった。花壇、一緒に育ててくれてありがとう。
優しい元就だからきっと誰よりも冷徹であろうとしてしまうだろうけど…元就も自分を大切にしてね」

「…ふん」

「元親、元親にはいっぱいいっぱい支えられた。誰よりも優しくて誰よりも大らかな元親だから心配はしないけど、もし辛くなったら人を頼ることも大切だよ。絡繰り作りは国が傾かない程度にね」

「おう!」

「慶次、最初から最後まで甘えっぱなしだったね。
優しいのも甘いのも悪いことじゃない。自分が信じる道を真っ直ぐ進めばいい。
あと、…気持ち嬉しかった」

「…うん」

「…政宗。沢山の痛みを知っている政宗はきっといい城主なんだろうね。思えば政宗に背中を押してもらうことも多かったね。
挫折しようが道をはずそうが政宗ならきっと気高き竜に戻れるだろう。
大好きだよ、私の可愛い息子」

「mammy…」


一人一人、ゆっくりと抱擁をしながら別れの言葉を告げていく。
涙は、自然と出なかった。


「…小十郎さん」


そして、最後は小十郎さん。


「小十郎さんには、言いたいことが、今まで言えなかったことが、多すぎて何を伝えたらいいかわからないです」

「あきら…」

「こんな私を愛してくれてありがとうございました」

「…あぁ」

「向こうに帰ったら私のことは忘れて素敵な奥さんを娶って、幸せになって下さい」


それで、出来るならば


「出来るならば、最期のその時、一瞬でいいんです。走馬灯の中に私の姿がありますように」


私のそれに一瞬だけ触れ、離れていく柔らかい唇。



「―時間、だね」



そう呟いたのは猿飛だったか


小十郎さんから離れ視界に映ったみんなの姿は少しずつ、透け始めていた。


「本当に、本当にありがとう。願わくば、全員に幸せな未来が待っていますように」


最後の瞬間。私は笑えていただろうか


まるで最初から何もなかったかのようにその場から消える七人


私はその場にうずくまり
生まれて始めて声を上げて泣いた


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