今日は朝から幸村や政宗がべったりだった。

二人だけではなく、元親や元就の距離もいつもより近い。

…可愛い。

これは別れを惜しんでくれてるのだろうか。みんななら離れがたくなるからやらなんやら言って距離を置くのではないかとも思ったがそこはきちんと気持ちの切り替えが出来るから残りの時間を堪能させろと言われた。

政宗が言うと変態くさく聞こえるのは何故だろう。

兎に角四人+何故か慶次とそれから夢吉に囲まれ雑誌を捲るこの光景は仮に四人が本来の姿であったなら立派な逆ハーレムとなっていただろう。私としては今の方が楽園だが。


「本当に大きくなったねぇ」


幸村を膝に抱きながらしみじみと呟く。
子供の成長って早い。

一番小さかった幸村がトリップ当時の政宗の服がぴったりなんだもんなー。


幸村だけでなく政宗はやせ細った手足に肉が付き、元親は真っ白だった肌が健康的なものになり、同年代と比べ(といってもこの体の正しい年齢は不明だが仮に元親と同じくらいとして)小さかった体は成長し頬にも肉がついた。

元の世界に戻ったら体も元の物に戻るからこの世界で幼い体をいくら健康的なものにしても無駄なのだけど食事の大切さなどはわかったはずだ。

元親が言うには元就は向こうでまともに食事をとってなかったらしい。それを聞いて食事がいかに大切かの講義をしたのが懐かしい。私はこれでも学生時代栄養学を学んだことがある。

幸村を下ろして今度は政宗。政宗を離したら元親。そして元就。

四人の感触をしっかり味わい次は夢吉。


「夢吉も大きくなったねー」

「キキッ!」


私の顔にすり寄ってくる夢吉の頭を撫でる。うう、可愛い。


「あきらも髪伸びたね」


そう言って私の髪を触るのは慶次。

元親と一緒に美容院へ行きボブにした髪はセミロング程になり、色も暗めの茶色になっている。

自分で染める時に手伝ってくれたのは慶次だった。


「で、」


にんまり、と笑って話を切り出す慶次に嫌な気配を感じ膝の上に乗ってきた政宗を抱き締める。


「右目の兄さんとはどうなったんだい?」


慶次のその言葉に幸村は破廉恥!と叫び元親と政宗はにやりと笑い元就は此方を一瞥してから興味なさげに本に視線を下ろし、離れた場所にいた猿飛は興味深々といった様子でこちらを見ている。


くそ、小十郎さんが畑に行った隙を狙いやがったか。


「…どうって、何が?」


にっこりと笑って誤魔化せば慶次はまたまたぁ、と茶化すように笑う。


「二人が恋仲なのは知ってるんだぜ?」

「恋仲…恋仲かぁ」


恋仲ねぇ。
あ、幸村が憤死しそう。
じゃなくて


「恋仲では、ないんじゃないかな」


へ?と間抜けな声を出す面々に空気を読まず噴き出しそうになる。


「両思い、ではあるし気持ちも伝え合ったけど」


なんていうかそれだけなのだ。
言うなれば知人以上恋人未満な関係というか。


「ぶっちゃけ気持ち伝えたの昨日が初めてだし」

「え!?」

「あはは…小十郎さんには旅行の日に言われたんだけどね。踏み出すのが恐くて答えられなくって…みんなが帰る直前になってやっと言えたんだよね」


本当は言うつもりすらなかったといったら怒られるだろうか。


「言っちゃったら別れの時辛くなるかなぁって。でも言わなくたって辛いに決まってるじゃんね」

「…某と…」
「ん?」


ぎゅっと私の肩に顔を埋め洋服を掴む幸村を覗き込む。


「某と別れるのも辛いですか?」


…なにかとおもったら…


「当たり前じゃん。ゆきも政宗も元親も元就も、慶次も猿飛さんも夢吉も小十郎さんも、誰一人別れて平気な人なんかいないよ」


いや、猿飛は平気かもしれないけど…ボソッとつぶやいた言葉に猿飛があきらちゃん!?と声を上げる。忘れてた、地獄耳だったか。


「もっと私が強くて、この世界になんの思い入れも無かった頃なら向こうまで着いていきたいくらい」


まぁ、無理な話なんだけど。

今いくら願おうと私は強くなれないし何より此方に一人にしたくない人がいるから。



その晩
小十郎さんは政宗、猿飛は幸村…私にくっついたまま眠ったそれぞれの主人を布団まで運びに行った間の慶次と二人きりのリビング。


「…右目の兄さんのことはいつから好きだったんだい?」


ふとそんな話題を切り出した慶次に一瞬驚いた後にうーん、と首を傾げる。


「いつからだろう。
多分、最初から惹かれてはいたよ。これ以上取り返しのつかないことになる前にって一生懸命目を反らしたけど、その時点で手遅れだったのかも」


あの人の泣きたくなるくらいの暖かさに気付いたとき
あの人の中毒性に気付いたとき
あの人と頻繁に夫婦に間違えられるようになったとき

必死に気持ちに蓋をしていたあのころ、もうすでに引き戻れないところまで来ていた。


「小十郎さんは冬の暖炉みたいな人なんだよ。
暖かくて心地よくて離れなくなくなる…私達みたいな暖かさに飢えた人間にとって小十郎さんみたいな人は惹かれるなって方が無理なんだよね」


「いいねぇ、恋ってもんは。命短し人は恋せよってね。
…俺じゃ絶対にさせられない顔するんだもんなぁ」

「…慶次」

「何?」

「ありがとうね」


私の言葉に目を見開き、それからくしゃりと顔を歪める慶次


「いつ、気付いた?」

「…今だよ」

「はは…っ、あきら」

「何?」

好きだよ



その時慶次が浮かべた笑顔は、いつもの慶次からは考えられないくらい、へたくそな笑顔だった。


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