一人部屋に戻り一時間が過ぎた頃。
ふと冷静になってみて気付いた。


「あれ、突き放す必要なかった…?」


突き放す、というか
嫌われるように仕向けるというか。

よくよく考えれば必要なかったかもしれない。


そこに辿り着けば不思議と頭はすっきりとし、それと同時に僅かな後悔が襲ってきた。


「(ん、いや、でもな…)」


突き放した根本的な理由はまぁなくなったわけだけどこの行為が全く空回りだったかといったらそれは違くて。多分。



バン!


「あきら!」


問題はこれからだなー、とベッドの上をゴロゴロと転がりながら考えていたら突然部屋のドアが思い切り開き、そこから七人が現れる。

私はというと体を起こしそれをポカンとしたままみている。


なんだこの状況。


ドアを開けたのは恐らく政宗。声の主も政宗。

政宗に名前を呼ばれるのは久しぶりな気がする。

フリーズしたまま頭の隅っこでそんなことを考える。

さて、どうするか。

取りあえず七人の出方を見ればいい…?



「…いくつか質問するから答えろ」



あら、命令形。うーん。いつぞやの大人ver.の政宗を思い出す。
頭の中はどこまでも呑気。
これから本来の私だ。



「お前がさっき言ったことは全て本当か?」

「うん」

「全て保身のためか」

「そうですね」

「俺らを騙していたのか」

「騙していた、ことになるのかな」


一問一答
ただ淡々と質問に答えていく。


「このtimingで言った理由は」

「私の我が儘」

「…我が儘?」



そう。このtimingを選んだのはただの私の我が儘。

これ、説明しなきゃいけない感じかな。



「今回の事だけじゃなく今までの生活も大概私の我が儘の上にあったのね。
最初の予定だとみんながここに来たときみたいな態度を貫き数ヶ月世話をしてその後みんなだけで生活出来るようになったらこの家を出るつもりだった」

「っ!あきらは、某達が嫌いだったのですか…!?」

「最初の予定だってば。まぁ、保身のためでね。
あー…保身から話すか。
私は死ねないの。少なくとも後数ヶ月は。
どんな人が来るかわからない状態。いくら規約があれど怪我をしない保証も死なない保証もなかった。だから死なないために、体が傷つかないように保身に走った。これが一つ目の保身。
それとみんなから離れようとしたのは例えば情が移って、嫌われるのが恐くなるのがいやだったから。離れがたくなるのが恐かったから。心が傷つかないように、これが二つ目の保身。
今までの生活は基本的に我が儘と保身で構成されていた」


傷つきたくない
ただその一心。


「だけど計算外のことが起こった。思ったよりずっと早く情が移っちゃった。
この空間が心地良くなった」


幸村や政宗、元親を甘やかし、元就を構い倒し、猿飛と腹を探り合いながら軽口を叩き、慶次となんてことないような話をし、夢吉を愛で、小十郎さんに惹かれ。
何度もやばいって思いながら、気が付けば取り返しのつかない所まで来ていた。


「で、同居を続行。あのことは言わなくてもいいと思ってた。言わなきゃバレないからね。
それに、」


それに


「懐いてくれた。慕ってくれた。好きって言ってくれた、から」


馬鹿みたいに懐いてくれた幸村や、どんどん態度が軟化していったみんな。
それと、旅行の時に言われた小十郎さんの言葉。


「このまま言わないでいればこの時間が続いてみんなが帰った後もいい思い出のまま終わるって」


これも、所詮我が儘。
私は自分が思っていたよりもずっと我が儘で欲張りなんだとこの数ヶ月で知った。


「みんなが帰る日程が決まったって連絡が入ったときだって言うつもりは無かったし、ただ寂しくなるなぁ、とか最後は笑ってさよならしたいな、とか、私に出来ることを全部やろう、とか、そんなことばかり考えてた」


寂しくなるな
そう思った自分に戸惑った
最後は笑ってさよならしたいな
そんなことを自分が考えられるようになるなんて思いもしなかった
私に出来ることを全部やろう
例え自己満足でも、そう思った。


「―最後の日に近付くに連れて一つだけ気になることが出てきた。
この世界に未練が出来たらみんなの中に弱みが出来ないかなって。
だからまぁ私のこと嫌いに…まではいかなくともいい印象なくなればいいのになーってさっき誤解されそうな言い方したんだけど…」


よく考えたらこの子達はそこまで弱くないし、何より向こうの世界に帰れば全てリセットされるんだからそんなこと必要なかったんだよね。


「―結局さ、みんなのためとか言って自分のためだったんだよね」


それで気付いたのは自分で思っている以上にみんなの事を好きになってしまっていたという事実だった。


「…mammyは俺らのことが嫌いだった訳じゃねぇんだな?」

「嫌いだったら数ヶ月前にこの家出てるよ」


ベッドに座り足を組んだまま膝の上に肘を置く。本当、なんでこうなったんだか。


「どうでもいいわけでもねぇな?」

「そりゃ、…あんたらが帰るって聞いたとき泣いちゃった位にはね」


思えばあの時から猿飛には何かあるということはバレていた。
元就も、…もしかしたら小十郎さんや慶次も気付いてたのかな。

本当、弱くて嫌になる。


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