「んー、お花見日和!」


庭に佇む大きな桜の木の下に茣蓙を敷き、その上には昨日の晩からせっせと準備した大量の料理と大量の飲み物。

今日はお庭でお花見だ。



「団子でござる!」

「桜餅は我の物よ」

「こらこらこら、甘味は後にしなさい。あと元就桜餅はみんなのものだから」


茣蓙に上がり込んで早々に甘味に手を伸ばす二人を止め政宗を抱き上げ慶次の隣に座る。


「さ、食べますかね」


いただきます、と手を合わせてから料理に手を伸ばす。

卵焼きに唐揚げ、天ぷらに漬け物、魚は照り焼きにし、おにぎりは梅、鮭、昆布、塩の四種類。
果物はみかんと苺、バナナにさくらんぼ
デザートは苺のムースと桜餅、団子に饅頭。

それらが八人分となればかなりの量だ。

あっという間に平らげられていく料理を見て準備はあんなり大変だったのに、と猿飛と小十郎さんと三人で苦笑。

まぁでも美味しそうに食べてもらえて何よりです。

あ、政宗に逃げられた。



―今日を含めて後四日
もしかしたら、みんなで笑い合えるのは今日が最後かもしれない。




「あきら!」

「何、元親」

「これ桜だよな?」

「そうだよ」


どっからどうみても

そう返せば「ほらな」と後ろを振り返る元親とそれを不満げに見る政宗。


「うちの庭にあるのとちげぇ」

「あぁ。ソメイヨシノだからかな?今桜って言ったらソメイヨシノだけどソメイヨシノはすべてクローン…まぁ、とにかくみんなの世界にはないからね。政宗のところはどういう桜?」

「枝垂れ桜だな」

「綺麗だよねー、枝垂れ桜」


桜は好きだ
一年の経った数日間咲くだけなのにその数日間でみんなを魅力する
儚いけれど強く美しい桜。


「いいねぇ花見は」

「慶次好きそう」

「あぁ。大好きだよ」


胡座をかき方に夢吉を乗せ杯で酒を呑む慶次。

その光景があまりに似合いすぎて、一瞬スクールの向こう側を眺めているようなそんな気になった。



「Hey幸村!勝負だ!」

「む、負けませぬぞ!」

「…若いなぁ」


いつものように下らないことでしみじみと勝負を始める二人を見て呟けば元親に呆れたような顔をされた。
なんだその顔は。


「はい。あきらちゃんも呑むでしょ?」

「あ、ありがとうございます」


猿飛から缶ビールを受け取りくびっと一口。

うん。美味しい。


「ほら、全然食ってねぇだろ」

「はは。それなりに食べてますよ」


でもありがとうございます、とお皿を差し出してくれた小十郎さんに礼をいう。


「みんな楽しそう」

「…もう少し静かにできねぇのかあいつ等は」

「まぁまぁ、なにか壊したりしてるわけじゃないんだから…」



ガッシャーン!




「旦那!」

「政宗様!」




お説教タイム突撃
なんてね。

…はは…




「もう!どうするのこの植木鉢!」

「いつもあれほど周りには気を配りますように言ってますのにまだ足りぬのですか!」




平和だねぇ、と慶次が杯を傾ける

懲りねぇなぁ、と元親が呆れたように笑う

馬鹿共め、と元就が鼻で笑い桜餅を頬張る

キキッ、と夢吉が慶次の肩で跳ねる。


目の前では正座させられている幸村と政宗
それを叱りつける猿飛と小十郎。



「(本当、平和)」



いつの間にか日常になっていたこの景色

これがもうすぐ無くなってしまうのかと思ったら

少しだけ鼻の奥がツンとした。




「話があります」


お説教が終わり
再び始まった宴会が落ち着いたところで話をきりだした。


「みんなの帰る日にちが決まったらしい」


情け無いことに声が震え、みんなの顔を見ることも出来ない

けれど、七人が息を呑んだのがわかった。



「三日後の正午。みんなは元の世界に戻る」


*← →#
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -