いつだったかみんなで来たショッピングモールに買い物に来た。
今日は一人で、だ。
目的はみんなへのプレゼント。
こちらの世界から向こうの世界に持って帰れる物は三つだけと自称神は言っていた。だから持って帰らなかったら持って帰らなかっでいい。ただ私が渡したいだけだから。
そう思ってきてみた此処は、気が付けば随分と彼等との思い出で溢れかえる場所になっていた。
元就行きつけの書店
政宗お気に入りの服屋
幸村や猿飛とお揃いの物を買った雑貨屋に元親が大好きなおもちゃ屋
慶次がいつの間にか度々手伝いをするようになった託児所や小十郎さん御用達のホームセンター
タケの店にみんなで行ったラーメン屋、此処数ヶ月ですっかり常連になってしまた和菓子屋。
本当に、よくこんなに…と言うくらい思い出で溢れかえっている。
「…さて、今日は何を買おうかな」
思い出に浸るのはみんなが帰ってからいくらでも出来る。
今やるべきことはそれじゃないから。
「(先ずは…うん。元就からにしよう)」
元就と言えば本。そして甘味。あとは日輪。
…どれも土産にするには微妙だ。
「元就…元就ねぇ…」
日輪…猫…動物?この前舞ちゃんに犬貰うっての無しになっちゃったなぁ…
「あ、」
そうだ、あれがあった。
あれなら予算内だし大丈夫。
強請られたわけじゃないから欲しがっていたというのは語弊があるかもしれないが以前元就がジッと見つめていたものだからあげていらないと言われることはないはず。
あれが売っている店は奥の方に買うのは後回しにし次は元親。
元親と言えば絡繰りだけど工具セットは既に持ってるし…メイクは気になるようだが元親も貰っても困るだろう。
あと意外に動物好き。
こうしてみんなへのプレゼントを考えると意外と何も知らないのだと実感する。
離れるのが辛いから距離を取ってたけどそれを後悔する日がくるとは。
元親、ねぇ…ん?
「あるじゃん、いいの」
ヘアカット用のハサミ。
でもあげたら困るか?メイク用品よりは困らないし向こう行っても使えなくはないし、何より彼が欲しがってたものだ。
「よし、決定」
次は幸村。
幸村は…甘味が一番喜ばれそうだが流石にね。
幸村にあげるものは決めてある。
向こうに帰ってから使ってもらえるかはわからないけども。
実は慶次、猿飛、政宗にあげる物も決めてあるのだ。
だからあとは小十郎さんなんだけど…これが一番難しい。
農具は向こうにあるし他に小十郎さんが決まって身につけてる物とかもない。さらに物欲が殆どないのか何かを欲しがったりするのは必ず農具やキッチン用品だけ。
…あげたいものはあるけど、あれは、ちょっと…
でも喜んでくれるかな?いや、でもいくらなんでも…
そんなことをもやもや考えている内に気が付けば時間が過ぎ決まらないまま買い物に来てしまったんだ。
「…もう、会えなくなるなら」
いっそ思い切って渡してしまおうか。
いらなかったら捨てて貰えばいい。
「渡さないより、渡した方が後悔は少ない、はず。多分」
数ヶ月前の自分では信じられない台詞。
私は変わった。
それが良いことなのか悪いことなのか
強くなったのか弱くなったのか。私にはわからないけど、それでもその変化を不快に思っていない自分がいる。
私を変えてくれたみんなに感謝する私も。
「(帰りに、明日のお花見の買い出しもして行こう)」
いっぱい料理作ってわいわい騒いで、そして
「(そして、明後日みんなに告げよう)」
みんなが帰る日付や、隠していること、全部。
告げなきゃいけないことを正直に。
タイムリミットまで、あと四日
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