可愛くないのが可愛い元就は狡いと思う。憎たらしいのになんでか許してしまう魅力がある。
少なくとも幼児化武将の中では一番年上なのに幸村と違う意味で末っ子っぽい。
いや、こう言ってはなんだだけど元親が以外全員同い年に感じる。

幸村はまぁ…幼すぎる感もあるが同い年でしっかりした子とちょっと子供っぽい子がいるような、そんな感じ。

元就もまたこちらに来てから精神年齢が幼くなった人物の一人なのだ。


「あ、こら元就それは食べ過ぎ!」


この数ヶ月で元就は丸くなった。
精神的にもだけど、外見的にも。

それは悪い意味ではなくむしろいい方に。


「今日はまだ五つめぞ。それを寄越せ」

「もう、五個めでしょ!そんな大福ばっかり食べてるからほっぺたが大福みたいに柔らかくなるんだよ」


病的なまでの細さじゃなくなり青白かった顔は頬が紅色に色づき皮しかなかった体が抱き心地のいい柔らかさになった。

それは純粋に嬉しい事で、だけどそれを口にするのは癪で。
口調がきつい元就と話すとつられて嫌みがポロッと口から出るから困ったものだ。


「あれ、元就身長伸びた?」

「ふん、今更気づいたか。もう三日前から服の丈が足りなくなったぞ」

「言いなさいよそういうことは…」


子供の成長は早い。
こちらに来た当初の服が着れる子はもういない。

身長が伸びればワンサイズ大きい子のお下がりを着る。だから幸村が今来てるのは政宗がこの間まで着ていた服だし政宗は元親のお下がりをちょっと直して着ている。

元親は一番大きいから買わなきゃいけないのは当たり前なんだけど元就は元就で少し華奢すぎるため(大きくなっても華奢だから元々が細いんだろう)(骨格とか)物によっては自分と同じくらいのサイズの政宗のお下がりが着れてしまうことがある。

それでも合わない場合買うんだけども。

別にお金はあるんだし着れなくなったものは売って新しいのを買えばいいんだけど本人達がそれでいいと言うのだからそういう風にしているんだ。


「みんな、大きくなったなぁ…」

七人が此方に来たばかりの頃撮った四人の写真(昼寝中のもの)を見ればその違いがわかる。

こうやってみんなの成長を見守れたら…なんて思う私はすっかり母親思考になってしまったものだ、と苦笑。

大体、中身は大人なのだから成長もなにもないんだけど
それでも、ね。

なんとなく元就の体を抱き上げその重さにも成長を感じる。


「あったかい」


考えてみれば七人が来てからすっかり抱きしめ癖がついてしまった。

案外七人が帰って一番困るのはこれかもしれない。


「髪さらさら」

「貴様の髪が死んでるだけだ」

「…元就なんて将来禿げちゃえばいいんだよ」


確かに髪死んでるけどさ!


「…この間から何を沈んでいるのか知らぬが抱えきれぬのなら吐き出せばよいだろう。
見ててイライラする」

「…」

「なんだその顔は」

「…いや、まさか元就がそんなこというなんて」


言い方はあれだけど私の変化に気付き気に掛けていていてくれたのはよくわかる。
…嬉しいなぁ、もう。


「ありがと。
…そうだね、もうちょっとしたら言うよ。それまでは一人で抱え込んでみる。
だから暫くこのままでいさせて」


ぎゅ、と元就を抱き締めその髪に顔を埋める。


もうちょっと、もうちょっとだけ
そうしたらちゃんと言おう


―みんなが、もうすぐ帰れるって




「さて、そろそろ花壇の水やりするかー」

「…雑草が繁っておったぞ」

「だからそういうことは早く言いなさいよ…」


朝の水やりを元就に任せたのがいけないのか?

確かに最近草むしりサボってたからな…


「桜もうすぐ満開だね。
満開になったらお花見しようか。美味しいものいっぱい作って」

「桜餅も用意するのだぞ」

「はいはい」


うん、楽しみだ。




―タイムリミットまであと六日


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