カシャカシャと泡立て器を動かす政宗。
器用にフルーツを切っていく元親


「Mammy、これ位か?」

「ん、角立ったね。OKだよ」


Mammyという呼び方につっこむことはとっくに止めた。

満足気な表情の政宗の頭を撫で冷やしていたスポンジケーキを取り出す。

今日はすっかり熱も下がった元親と当たり前のようにキッチンに着いてきた政宗と三人で昨日幸村と約束したケーキ作りをしている。


「切れたぜあきら!」

「お、早いね。って…うわ、キウイ星形?いつの間にそんなこと…」


流石というかなんというか器用な元親はあっという間にフルーツを切り終え飾り切りまでしている。
今更だけどさ、私のプライドってやつが、こう…


「よし、じゃぁ飾り付けしようか」


スポンジの真ん中に切り込みを入れクリームとフルーツを挟み上段を重ね均等にクリームを塗ってフルーツを飾るだけのシンプルなケーキ。
二人が飾り付けをしている間にもう一つ作ったショコラバウンドケーキをのあら熱を取って切っていく。

こちらは甘いのが苦手な小十郎さん、猿飛、私の分。


「元親、みんなに飲み物何がいいか聞いてきて」

「おう」

「政宗はボウルとか流しに運んでくれる?」

「OK」


食器棚からティーセットを取り出し戸棚に並ぶ茶葉を前に思案。

…今日はダージリンにしよう。


「猿飛が珈琲で真田が牛乳、後は俺含めて全員熱い茶だとよ」

「了解。政宗は?」

「Mammyと一緒でいいぜ」


はいよーと答えながらティーポットに茶葉とお湯を入れしばらく蒸らす。

その間に幸村の牛乳と他のみんなのお茶を淹れてお盆に乗せれば何も言わなくても運んでくれる元親と政宗。

最後に自分たちの紅茶を淹れて席につく。

既に猿飛によって切り分けられていたケーキを受け取って全員揃ったのを確認し、いただきます。


「美味しいでござる!」

「それはよかった」


フルーツケーキを食べる五人を見ればやはり気になるケーキのサイズ。


「(幸村と元就で半分食べてる…)」


甘党が二人もいるからと大きめサイズにしたが成る程。なめてたわ。


「(二人が騒いだか、その前に猿飛が気を遣ったか)」


恐らく後者だろう。

二人が四分の一ずつ食べもう半分を元親政宗慶次で分けて食べ、夢吉は余ったフルーツを食べている。…か、かわいい。


「Mammy、」


名前を呼ばれて横を向けばあ、と口を開けている政宗。
その様子にクスリと笑い自分のケーキを一切れ政宗の口に入れればお返しにと自分のケーキをくれた。

まぁ、所謂「あーん」というやつだが相手は(中身はあれだけど)子供。更に言えば自分をmammyと呼ぶ存在。
照れることはない。

―――若干小十郎さんの視線が痛いけど。

それから政宗だけズルいと騒ぐ幸村にも同じようにし騒いでないけども元親や元就にも同様にすればいつの間やら自分のケーキよりもフルーツケーキの方が食べた量が多いという妙な状況になったけど、まぁいいや。

結局幸村と元就は自分の分だけじゃ飽きたらず残っていたパウンドケーキもペロリと平らげ満足気に庭へ出て行った。

…幸村はいつもだけども元就はこの前私が「太ったね」と言ったのを気にしてるようだ。




「あきら、」


和室スペースで携帯を弄っていた私のもとに現れたのは元親。

「どうした?」

「いや…たまにはな」


ん?と首を傾げればトン、と私の背中に背中を預けるように座る元親。

その暖かさに小さく笑いくるっと方向転換して元親を抱き締める。

ふわふわしている髪の毛に顔を埋めれば僅かにしていた抵抗も止み、大人しくなる。

元親が自分から甘えてくることは殆どないから嬉しいんだ。


ふと視線を感じて顔を上げればチラチラとこちらを見ている政宗。

手招きをすれば少し躊躇ってから此方に来るので手を引っ張り元親と一緒にぎゅぅ。

暫くすれば気持ちよさそうな寝息が二つ。


「かわいいなぁ、」


本当に。


「(あと、一週間)」


命一杯甘やかせてね
二人とも




―タイムリミットまで後七日


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