それは突然の知らせだった。


『七人が帰る日程の目処がついた』


朝一に鳴った携帯電話
寝ぼけつつも出た電話での第一声


『恐らくあと10日といった所だな』

「…そうですか」


あと10日

いつかは来るとわかっていてもいざ来ると寂しいと感じる

こうならないように、距離をおいたのに。

こぼれるのは、自嘲。


「時間は?」

『この世界に来た日と同じ正午。
この世界の物は三つだけ向こうに持ち帰れる』

「それは生き物も含みで?」

『あぁ。ただし抱えられるサイズならな』


私は一言そう、と返し少しだけ沈黙が訪れる。

10日後、と言えば恐らくそれまでに庭の桜が満開になる。

最後の思い出に花見をしようか。
そこまで考えて自分が思いの外あっさり別れを受け入れていることに気付く。

寂しい、けれど最初から解っていたことだからか。もしくは実感がわかないだけか。


「彼らに告げるのは私のタイミングでいいですか?」

『あぁ。ただし帰るときは元の格好に戻らなきゃいけないから言わないのはなしだ』

「勿論。
じゃぁ、そろそろ誰か起こしに来るからきります」


返答を待たず電話を切る。


ぽた、と手に落ちた雫。


「あは、」


何でだろう、


「ばーか」


涙が出るのは


「わかってたこと」


頭でわかってても心は別物で


「受け入れては、いる」


寂しい


「別れに抵抗はない」


ただ淋しいだけ


「だから」


だから、今だけ


今だけ泣こう


「次は、みんなが帰った後」


それまでは絶対泣かないから


「……ふ…っ」


今だけは、思い切り







不思議なことにひとしきり泣いた後は妙に頭が冴えていて


「告げるのはまだ先にしよう」


しみったれた空気は何日もいらない。

幸村は泣くかな
政宗な辛そうにしながらそれでも無理やり強がって
元親は黙ってそっぽ向くかも
元就はいつも以上に仏頂面で
慶次は多分無理にでも笑う
猿飛はきっといつもの食えない表情で
小十郎さんは…辛そうにしてくれるかな?


…うん。大丈夫。
ちゃんと別れの場面が想像できる。

だから大丈夫。
「暫くいつも通りに過ごして、日常を変えるのはそれから」


顔を洗い、鏡に向かって小さく笑う


「最後は笑ってサヨナラだ」


そんな願望を口にし


「いざ、出陣」


なんちゃって。



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最終章開始


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