少しだけ記憶を遡ってみよう。
彼らが此方に来たのは6月の上旬、初夏の事だった。




「今日も雨か」


七人が来てから一週間。
例年通りの梅雨入りで朝から昼まで雨続き。

洗濯物は乾かないし偏頭痛はするしで気分は低迷。
七人…特に幼児化武将たちも外に出られず元気を有り余らせているようで表情は晴れず、その中でも一番機嫌を害していたのは元就だった。


「…散れ、姫若子が」

「いてっ何しやがる毛利!」


かれこれ二日は太陽を拝んでいないからか日に日に苛立っていく元就の主な被害者は元親。


「こらこら」


八つ当たりの現場を見つけては注意をするもののキリがない。

…さて、どうしようか。


「あきらちゃん、洗剤がきれちゃったんだけど…」

「あ、了解です。あとで買ってきますね」


洗剤を買うならあそこのスーパーが安いな…ならついでに洋服を…洋服?


「あ、そうだ」

「どうかした?」


バタバタと階段を駆け上がり二階へ向かう。
自室のクローゼットを漁れば


「…あった」


出てきたものを持って再びリビングへ行けば幸村がごろごろと床を転がり猿飛に叱られていた。


「ゆき、外出たい?」

「出たいでござる!」


おお、即答だ。


「じゃぁ、外出ようか」

「外って、まだ雨止まないよ?」


猿飛の言葉に両腕に抱えていた袋を見せる。

中から出てきたのは4人分の合羽と長靴だ。


「なんだそれは」

「合羽って言って、水を弾くんです。
履き物の方は長靴。これも水を弾くから外に出ても塗れないんです」


七人が来た日に服屋で買ったもののまだ必要ないからとしまい込んだのを思い出したんだよね。


「しかもパジャマとお揃い」


つまり幸村が虎、元親が犬、元就が猫、政宗は龍の着ぐるみみたいになっている。


「おお!」


感動する幸村に合羽を着せてやり長靴も履かせる。

あぁ、可愛い。


「と言っても外に出て車に水をかけられたりしたら大変だから庭だけね」


そう言い聞かせ庭へ続く窓を開ける。

ちょうど小雨になってきているから、大丈夫だろう。


「はい、行ってらっしゃい」


我先にと庭へ駆け出す三人を見送り一人だけ外に出ない元就の隣に座る。


「元就、見てみなよ」

「…何ぞ」

「お日様出てきたよ」


私が指差す先には雲の隙間から顔を出す太陽。

狐の嫁入りというやつか、雨は止まないものの太陽はしっかり姿を現した。


「ほら、元就も外に行ってきな?」


僅かに表情を明るくさせた元就に合羽を着せて長靴も履かせれば早々に庭へ出ていつもの儀式を始める。

いやいや顔濡れますよ元就さん。


「…これで暫く静かになるかな」

「流石だな」


小さく呟けば小十郎がくつりと笑いながら隣に座った。


「あーあ、幸村泥だらけ」

「慶次も外行きたい?」

「晴れの日は外で遊んで雨の日は家の中でごろごろするってのが醍醐味だろ?」

「ふふ、慶次らしいわ」


にしても子供は元気だ。
雨の日が嫌いになったのはいつからだったか。

昔はよく雨の中外へ出てはびしょ濡れになりながら遊んだものだ。


「最近あきらちゃんの目つきが母親のそれになってきたね」

「いやいや猿飛さんには負けますよ」


ひくり、と口元をひきつらせる猿飛も見慣れてきた。


「あとでてるてる坊主でも作ろうかな」


てるてる坊主照る坊主
あーした天気にしておくれ



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