一泊二日の小旅行は一日目はどうあれ二日目は無事帰路に着くことが出来た。

電車の中で幸村が騒いだり元親が騒いだり政宗が騒いだり夢吉が行方不明になりかけたりまぁ色々大変だったけども。

そんなバタバタした旅行から早くも三日が経ち、相変わらずの日常が戻ってきた。


そしてふとしたときに思い出すは旅行一日目の夜のこと。




「…好きだ」




いつもの声とは違う、艶のある声。




「―返事は今はいらねぇ。ただ気付いて伝えたからには今までのようには接することは出来ねぇから覚悟しろ」




片方の口角を上げて告げられた言葉。

あれから何かが大きく変わったかと聞かれればそんなことはないがだからと言ってなにも変わっていないかと言うとそうでもなく。


「あきら、この間買った石鹸はどこに…」

「あ、それならそこの棚の上にありますよ」

「あぁ、あれか。ありがとな」


ポン、とすれ違いざまに頭を軽く撫でられる。

例えば、こんなとき。

前との違いを実感する。


前は小十郎さんからのスキンシップなんて殆どなかったのに最近は何かと頭を撫でられ肩を叩かれ稀に頬を引っ張られ。

更に雰囲気が柔らかくなるものだからやってられない。


「(本当ずるい)」


大人の余裕ってやつなのか、それらをさらっとやるから質がわるいと思う。


「ゆきー」


ソファーに座る私の隣に腰掛けテレビを見ていた幸村を抱き上げぎゅぅっとする。

一瞬あわあわとしながらもすぐに照れたように俯きながら私の服を掴む幸村に不覚にもきゅんとした。


「猿飛さん、ゆき下さい」

「だーめ。雇い主いなくなっちゃう」

「チッ」

「舌打ちしないの」


あぁ、癒される。
幸村の頭を撫でながらほっこりしていれば今度は政宗が幸村を押しのけて私の膝の上に登ってきたので二人まとめて抱きしめる。

冷房が効いている室内だからこそ出来ることだ。


「Ah?少し胸でかくなったかあきら」

「あ、わかる?特に太ったわけじゃないのになんか育った気が…」

「は、破廉恥!」


あ、幸村がいるの忘れてた。


「あきらちゃん何気に胸大きいよね〜」

「あはは、猿飛さんセクハラ」

「佐助ぇ!」

「ええー…竜の旦那はいいのに何で俺様だけ…」


それはたぶん普段の行いの違いだと思う。


「お前は少しは恥じらいを持ちやがれ!」


…小十郎さんに怒られた。
これくらい今更な会話なのに。
顔を赤らめていそいそと私の腕から抜け出し庭へ出て行った幸村を見送り政宗の背を此方に向くように座り直させる。


「政宗は胸は大きい方が好き?」

「ないよりゃあった方がいいな」

「あは、やっぱりそうなんだ」


けらけらと笑えばまぁ俺は胸より足だがな、とのこと。

戦国時代ってみんな足出していないのにそんな頃から足フェチなのか。


「猿飛さんも胸でしたよね」

「小十郎は確か…」

「政宗様…?」

「…Ah…冗談だ」


この間誤魔化された小十郎さんのフェチが聞けると思ったのに邪魔されてしまった。

ここで追求すると後々面倒そうなので黙っておこう。

政宗をぎゅぅっとしながらそんなことを考える。


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