朝起きたら今度は幸村じゃなく元親が私の体にぴったりとくっついて寝ていた。
昨晩眠りについたのは深夜二時で今の時刻は早朝五時。
朝食は八時からだからまだ寝れる。
気持ちよさそうに眠る元親の背中に腕を回し湯たんぽ代わりにしながら目を閉じれば緩やかな眠気が私を襲う。
二度目に起きたとき既に腕の中の元親は起きており、若干疲れていたことから必死に腕から抜け出そうと奮闘したのがわかった。
「おはよう元親」
「…おー」
元親を抱いたまま起き上がり周りを見れば日課である日光浴中の元就、何故か小十郎さんに説教されている幸村と政宗、それを見て笑っている慶次、それとこちらを見ながら苦笑している猿飛。
「あー…」
私が一番最後か。
いや、最初に起きたときは一番だったんだよ。ただ元親があったかくて…なんて誰に言うでもなくぼそぼそと言い訳しながら元親を解放し伸びをする。
「で、」
なんで二人は朝っぱらから説教されてるの?と首を傾げれば「あきらが起きるちょっと前にちょっと乱闘を…」と慶次。
え、乱闘?
「物、壊してないよね…?」
きょろきょろと周りをみるが一応何も壊れていない。
「壊す前に右目の兄さんが止めたからねぇ」
「小十郎さんグッジョブ…!」
よかったよかった。
流石に物を壊されては私もフォローできない。
「ゆき、政宗」
はぁ、とため息を吐いて小十郎さんに怒られている二人の名を呼ぶ。
ビクッとした二人はどうやら後ろめたいらしく(まぁ、当然だろう)なかなか此方を見ない。
「…怒ってないからこっちを向きなさい」
やっとこさ布団の上から降り二人の元へ向かいながら言う。
「ほ、本当でござるか…?」
「本当でござるよ」
二人の近くに腰を下ろし「ほら、」と促せば二人はそろそろと此方を向いた。
「反省した?」
こくん
「本当に?」
…こくん
何故二回目は間をあけたか知らないがまぁいい。
頷いた二人の頭を撫でて立ち上がる。
「家ならともかく此処は旅館なんだから暴れない事」
さて、着替えるかぁ。と呟けば後ろにいた元親がバッと立ち上がり此方の部屋に来た。
どうやら襖を閉めてあちらで着替えろということらしい。
気にしないのに…と言ったら猿飛に気にしなさいと怒られたので大人しく襖を閉めて着替えを済ます。
今日は七分シャツとショートパンツと言うシンプルな格好。
勿論タイツは履いている。
最近ショートパンツには慣れたが素足でいると未だに怒られるんだ。主に小十郎さんと猿飛に。
襖を開ければみんなも着替えを終えていて駆け寄ってきた夢吉を抱き上げながらその場に座る。
時刻は7時。朝食にはまだ早い。
「ご飯来るまで暇だから化粧でもするか…」
因みに七人にはすっぴんどころか寝顔を見られようが寝起き姿を見られようが気にしない。
今更過ぎるからだ。
洗面所で顔を洗い化粧水や乳液で肌を整え鞄から大きめな鏡とポーチを取り出す。
下地クリームを塗ってファンデーションを乗せ、目はブラウン系のアイシャドウにやっぱりブラウンのアイライン。睫を上げて黒のマスカラ。頬に軽くチークを乗せて眉毛を描けば完成だ。
口には何もつけない。元々色が赤いから似合わないのだ。
「あきらちゃんが化粧するの見るの初めて」
「こっちの化粧品はおもしれーな!」
化粧をする姿を興味深々に見ていたのは猿飛と元親。
男が見ても面白いものじゃないだろうに。
「舞の所でしたようなのはしねーのか?」
「甘々メイクは苦手なんだよ…こう、精神的に。道具もないしね」
基本的にナチュラルメイクが好きだしね。
「なぁ、その睫に塗ったのは何だ?」
「これはマスカラって言って睫を長く見せたりボリュームを持たせたりして…」
これは?これは?と聞いてくる二人に苦笑しながら答えていく。
楽しいのか。そうか。ならいいけどさ。
元就が冷たい目で見ているよ、お二人さん…
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