夕食はとてもおいしかった。
桜料理(馬肉料理)が出て来たときは私以外の全員が青ざめ猿飛達にいたっては「俺様達が来た日にあきらちゃんが言ってたこと本当なんだね…」なんてげんなりしていた。ただの脅しだと思っていたらしい。

残すのは勿体無いので馬肉のすき焼きは殆ど私が食べ、変わりにしゃぶしゃぶなどはみんなに食べさせた。


「お腹いっぱい」

「いっぱい食ってたもんね、あきら」

「誰かさん達が馬肉食べないから」

「だって馬だぜ!?」


食える奴の気が知れねぇ、と言う元親に悪かったな平気で食えて。なんて内心悪態を付きながら腹が膨れうとうとしてきた幸村と元就を抱きかかえ布団に寝かせる。

この子達は本当に欲望に忠実だ。


「はい、あきらちゃんも飲むでしょ?」


そう言って手渡されたグラスには溢れんばかりのビール。


「わーい、ビールビール」


グイッと一飲み。うん。美味しい。


「Heyあきら!俺にも飲ませろ」

「駄目。今は子供なんだから我慢して」


くそー!と騒ぐ眼帯コンビはガン無視。ビールを一気に煽る。


「元親おいで」


両手を広げて言えば呆れながらも大人しく私の膝に座る元親。


「一口だけだよ?」


新しく注いだビールを渡しながら言えば「おう!」と言って一口口に入れる元親。


「う…」


すぐに顔を顰めるのをみてつい笑ってしまった。


「味覚が子供に戻ってるから美味しくないでしょ」

「くそー向こうじゃなかなかの酒豪だったのによ…」


ぶつぶつと言い募る元親に「はい」とオレンジジュースを渡し自分はもう一杯ビールを飲んでから旅館に来る前に寄ったコンビニで買った酎ハイを開ける。


「変われ元親」


元親を押しのけ膝に乗ってきた政宗の髪を撫でながらつまみのさきいかを食べる。

親父くさいだなんて、そんな。


「あきら」

「ん?」


私に向き合うように座っている政宗の顔は近い。
整った顔をしているな、なんて。


「さっきの男は親しいのか?」

「さっきの?」


それは文也と楓先輩どちらを指しているのだろうか。


「sweets shopにいた」

「あぁ、楓先輩ね。…親しい方なのかな…?
元々先輩の彼女さんと仲が良くて知り合ったんだけど先輩達が別れてからも何かと気にかけてもらってたんだよね」


楓先輩の彼女さんは部活の先輩だった。とても美人で少し気が強い姉御!って感じの人で、接しやすい先輩だった。


「文…カンガルーの所で会ったうるさいの居たでしょ?あいつが楓先輩に懐いてて私にも何でか懐いてたからよくみんなで遊んだりしたけどここ暫くそれもなかったし一緒に遊んでもあまり喋ったりしなかったからなんで今日わざわざあんな絡みに来たのかわからないんだよね」


知り合い以上友人未満…まぁ友人というのもおかしいが、そんなポジションにあたる人だから。


「でも一緒にいるのは楽な人だよ。お互い腹の中ではお互いのこと大っ嫌いだから」

「嫌いなのに楽なのか」

「うん。それ以上嫌われることはないし嫌われたとしても痛くもかゆくもない。だから遠慮する必要ないでしょ?だから楽」


楓先輩は私の根本的なところが嫌い
私も楓先輩の殆どのところが嫌い

だから好き勝手言える。だから楽。


「文ってのは?」

「親しいで言えば文のが親しいよ。ペットと飼い主みたいな感覚だけど」

「Ah…」


見ててわかるものがあったのか納得したような顔の政宗。


「恋仲にはなんねぇのか」

「あはは、それこそないよ」

「なんで言い切れんだ?」

「だって文也は男が好きだから」


一瞬、部屋の空気が固まった。
なんだ、みんな話聞いていたのか。


「政宗達の言葉で言うと男色?だから恋仲になることは絶対ないわけ」


カミングアウトされたときもあまり驚かなかった。

あぁ、やっぱり。位に。


「因みに楓先輩は両刀。楓先輩と文は恋人同士」


けらけらと笑いながら言えばなんとも言えない空気が部屋を充満した。


「楓先輩は人で遊ぶのを生き甲斐にするような人だからああいう天然馬鹿の犬属性が合うみたいで、かれこれ二年は付き合ってるんじゃないかな」


一回性根が腐りきってますね、と言って「お前には言われなくない」と言われた記憶がある。


「あきら、」


小声で呼ばれ政宗を見る。


「この中でお前が一番気を許してるのは誰だ」


政宗の質問に、一瞬固まる。


「―それは、言わなきゃ駄目?」

「あぁ」


なんとなく適当な言葉で誤魔化しちゃいけない気がし、覚悟を決める。


「―――」


政宗の耳元で答えを言えば政宗は一瞬驚いたような顔をし、それから「そうか」と嬉しそうな顔で笑った。




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誰かはご想像にお任せします




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