待ち合わせ場所に行けば既に三人は来ていて猿飛は旦那!と幸村に駆け寄り元就は若干不機嫌。元親はややげんなりしていた。…ごめんよ元親。
取りあえず元親の頭を撫でながら猿飛に説教されている幸村や慶次を見ればちらちらと注目の的になってたのでそれに苦笑しなんとか猿飛を宥めてた。
「見つかったからいいけど今度いなくなったら置いてくからね」
ちゃんと二人に釘を刺すのは忘れずに。
それからまだまわっていないところをまわり、先ほど幸村を発見したスウィーツショップに立ち寄ることにした。
「日持ちするようなものにしなね」
「く、くっきぃは日持ちするでござるか!?」
「するする」
「あきら、大福はないのか」
「大福はないなぁ」
ここで大はしゃぎするのが幸村と元就の甘党コンビかなわけで。
「こらこら、一人一個だってば」
「し、しかし…」
「旦那、わがまま言うと一個も買わないよ?」
「それだけは…!」
こういう時ほど猿飛がいてよかったと思う時はない。
幸村の扱いは猿飛が一番心得ている。
「…ね、あきらちゃん」
「なんですか?…あ、元就それは反則!」
私の方へ顔を近付け小声で話しかけてくる猿飛に返事をしながらファミリーサイズの大きい箱を手に取った元就を注意する。
「ちっ」
「舌打ちしないの」
最近元就が荒くれて来た気がする。
「で、なんですか?」
「もしかして、右目の旦那となんかあった?」
猿飛の言葉に、一瞬動きが止まった。
駄目だ、これじゃ何かあったっていってるようなものだ。
「なんでですか?」
「俺様これでも忍だよ?ちょっとした変化でも気付くって」
…そっか、忍者なんだっけ。すっかり忘れてた。
「…別に、何かあったとかじゃないんですけどね」
喧嘩したとかでもないし。ただ、
「素の口調で話してるのを聞かれたくらいで」
「素の口調?」
「学生時代の後輩がいて…ついいつもの調子で会話しちゃって。それからあんな感じなんですよ」
喋らないし、目も合わせてくれない。
「だから呆れられたか、どん引きされたかなぁって。四人共決まった?」
はい!あぁ、おう、うむ。
それぞれの返事をいただき四人が選んだものを受け取ってレジへ持って行く。
「お会計2650円になります」
「あ、はい」
財布を開きお金を出そうとした、瞬間
「これで」
すっ、と横から手が出て五千円札がトレイに置かれた。
バッと振り返ればその人物はニヤリと笑い店員からお釣りと商品を受け取り商品を私の手に落とした。
「…うわぁ」
「なんだようわぁって」
「キザ」
「あぁ?」
私の言葉に凄む人のポケットに三千円を無理やり突っ込み猿飛達の下へ行こうと一歩踏み出せば後ろからガシッと頭を掴まれる。
「痛っ」
「久しぶりなのに随分な態度じゃねぇか」
「あれー楓先輩じゃないですかー気付かなかったー」
「棒読みかこの野郎」
青木楓。高校時代の先輩だ。
「野郎じゃないです。
ほら、文があっちで尻尾振って待ってますよ?犬に間違えられて飼育員にふれあいパークに連行される前に行ってやってくださいよ。楓先輩が取られた!ってキャンキャン吠えられるの私なんですから」
「相変わらず酷い言われようだな。つーかいらねぇよ、金」
「いらないなら募金箱にでも入れてやってください。私には奢られる義理もそのお金受け取る義理もないんですから」
じゃ、と再び歩きだそうとしたら頭を掴んだままの手に思い切り力を込められる。痛い痛い痛い痛い、握力どんだけ強いんだこの人。
「本当なんなんですか。連れいるんで行きたいんですけど」
「…ふっ」
ギロリと睨めば楓先輩はちらりとどこかを見た後に小さく笑い私の頭を解放した。
「もういいぜ」
「は?」
一人くつくつ笑いながら去っていく楓先輩をイタイ物を見るような目で見送り猿飛達のもとへ急ぐ。
なんだったんだあの人。
「すみません、お待たせしました」
「…あきらちゃん、さっきの男、知り合い?」
「さっきの?…あぁ、学生時代の先輩ですよ」
「へぇ…」
「あの人がどうかしましたか?」
「ん?ちょっとね」
言葉を濁す猿飛に首を傾げるが聞いたところで答えてくれないのはわかっているので何も言わず黙っていることにした。
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