今此処にいるのは真田幸村、猿飛佐助、伊達政宗、片倉小十郎、前田慶次、毛利元就、長曾我部元親の七人。
その内幼い…そう、"幼児"と呼べるような姿になっているのは真田幸村、伊達政宗、長曾我部元親、毛利元就の四人。

まさに夢小説で好かれるようなこの状況も私にとってはただ恐怖の対象でしかない。

何が怖いって、猿飛佐助と片倉小十郎、それと毛利元就の視線が、だ。

毛利を除いた当の本人達は縮んだ体などどうでもいいようにきょろきょろ辺りを見回してはしゃいだり此方をじっと見つめたり。


「…何も、説明受けてないですか?」


頷く連中にあのクソ野郎、と思わず心の中で悪態を吐いたのは許して欲しい。
野郎かどうかはわからないけど。


「いただきますより、こっちの説明が先だろ…?」


次会ったら殴ろう。もし女性だったら思い切りセクハラしてやろう。俺得などではない。断じて。


「理由、理由……あー…、やったのはあの自称神、なので、私に文句は言わないで欲しいのですが」

「いいから早く言え」

「…私もよく基準はわからないのですが、精神的に幼い者、と聞いています」


例えば外出時。
見たことのないものに囲まれて一々騒がれては身が持たない。
更にそれが十代後半、青年と呼ばれてもおかしくない年齢の人間相手ならば尚更。

興奮が抑えられる人間はいい。
そうじゃないものはやむを得ず騒いでもおかしくないであろう姿にしたらしい。

私の説明を聞いて納得したように頷いたのは猿飛。少し不満気だったのは片倉。見るからに不満だと顔に出しているのは毛利元就。
こ、怖い。


「我も精神的に幼いと?」

「それが…私も何故かわからないのです。
毛利様は大人のまま来ると聞いていたので…多分、こちらの世界に来る際何らかの手違いが生じてしまったのだと思いますが…。
この世界に慣れたら元に戻るらしいので…詳しい期間はわかりませんがそれまで我慢していただいてもよろしいでしょうか…?」


因みに長曾我部が縮んだのはからくり好きが祟って、らしい。
本は前田と張る大柄な体だったらしいのでそんな姿で走り回られたら止められない。


「それ以外に何かありますか?
…無いようなので自己紹介をしていただいても宜しいですか?」


事前資料は貰った。だけど内容は一致していないところがある。
じゃなくても礼儀的に、ね。


「それがしは真田源次郎幸村と申しまする!
こちらは部下の猿飛佐助でござる」


真田幸村と名乗った少年の外見は四歳やそこら。
どちらかというと幼名である弁丸と名乗った方が正しい気がする。


「奥州筆頭伊達政宗だ。こっちは片倉小十郎」


見た目は六歳前後だろうか。
無言で頭を下げた片倉は…確かに資料にあったようにヤクザ顔かもしれない。


「俺は前田慶次!こっちは夢吉ってんだ。よろしく!」


キキッ、と鳴く夢吉がかわいい。
あぁ、小動物には弱いんだよ畜生。


「俺ぁ長曾我部元親だ。四国を治めてた」

「…毛利元就ぞ」


長曾我部の男前な自己紹介も可愛らしい見た目で台無しだ。
歳は、伊達政宗と同じ位だろうか。
成る程、確かに姫若子と言える。
毛利元就もそれくらいの年齢のようだ。


「それでは、この世界の説明をさせていただきます。
この世界は年号で言えば皆さんにとって400年程先の未来になります。
ただし、皆様のいた世界とは似て非なる世界、ですが。
これについてはややこしいのでまた後程話させていただきます。
人を殺めたら罪になり…まぁ、下手人?になるのですが、皆さんの場合どうなるか、とか、説明は?」


―無言。


「(絶対、殴る)」


戦がないってことと同じ位告げなきゃいけないことなのに…

私はズボンのポケットから紙を取り出してテーブルの上に置いた。


「何だそれは」

「必須説明要項…皆さんに最初に説明しなきゃいけない内容らしいのですが…」


1 この世界は自分達のいた世界と異なる

これはもう説明した。
2の戦がないというのも説明済み、ここで暮らすと言うのも大丈夫、となると問題は、


「項目4」


紙に書かれている内容を読み上げる。


「この世界において人間を死なせた場合、又武将同士のいざこざでこの世界のものに迷惑をかけた場合、―全員元の世界に戻れない、もしくは存在を消滅させる」



この世界で守らなきゃいけない
絶対の掟だ


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