予定より随分遅くなってしまった、とため息を吐きながら玄関のドアを開ける。

時刻は夜の十一時。幸村や政宗の出迎えは勿論ない。

荷物を降ろすのは明日でいいや、なんて考えつつ音を立てないように廊下を歩けばリビングの灯りがついていることに気づき一旦部屋に荷物を置いて着替えてから一階に降りリビングのドアを開けた。


「お、お帰り」


お猪口片手にリビングにいたのは慶次。


「ただいま。まだ起きてたんだ?」

「うん。さっきまでみんなも待ってたんだけど」


ちょうど寝落ちたから忍君達が部屋に運んでるんだよ、と笑う慶次にびっくりして声をあげる。


「さっきまで…って、こんなに遅くまで?」


四人が寝るのは大体九時前だ。
こんな時間までここで待っていてくれたのか。


「それより…どうだった?法事は」

「疲れた。凄く。本当、暫くは実家帰りたくないわ」


冷蔵庫から酎ハイを取り出しプルタブを開けて一口飲む。


「あ、お帰りあきらちゃん」

「随分遅かったな」

「ただいま帰りました。
ちょっと、出かけにバタバタしちゃって」


リビングに戻って来た二人に挨拶を返しふぅ…と息を吐いた。
本当はもっと早く帰れたのに帰り際親に捕まり夕食を作ることになりそれからなんだかんだ雑用をやらされこんな時間になってしまったのだ。


「(…実家にいるときの方が家政婦みたいだ)」


実際あの人達にとって私はそんなもんなんだろう。


「夢吉ー癒やしてー」


夢吉を抱き締めれば夢吉は小さな手で私の頭を撫でてくれた。
か、可愛い。


「もう酔っぱらってんのか?」

「まさか。流石に一口じゃ酔えませんよ」


ただ疲れてナチュラルハイなだけだ。
ただまぁ…2日振りに"家"に帰ってきて気が抜けたのも大きい気もする。


「特に変わったことはなかったですか?」

「うん。一日目にあきらちゃんが旦那達に釘さしてくれたおかげで大きな問題はなかったよ」

「ただ…やっぱりお前がいないと疲れるな」


小十郎さんに頭をくしゃっと撫でられ頬が緩む。
頭を撫でられるのは、好きだ。


「いつもあきらちゃんが旦那達の世話してくれてるしね」

「元就の機嫌が悪いのなんのって」

「あれは確かにな」


苦笑する三人に元就の機嫌がいかに素晴らしかったかわかり明日は思い切り構い倒そうと決めた。
多分私がいない間幸村達が問題起こさないように見ていてくれたから。そして最終的に機嫌が悪くなった元就に当たられたであろう元親も一緒に構い倒そうと思う。

なんというか本当にベビーシッターみたいだ。…いや、どちらかといえば保育士か。


「もう暫くは実家に帰りませんから外泊もないですよ」

「…いいのか?帰らなくて」

「帰りたく、ないんです」


いつもの笑みが出来なくてへらっと笑うと今度は慶次に頭を撫でられた。


「前も思ったけどさ、あきらちゃん家族と仲悪いの?」


聞き辛いところをさらっと聞いてくるなー、なんて猿飛の問いに対し思ってしまう。


「悪くないですよ?」


別に悪いわけじゃない。
喧嘩もそんなにないし険悪な雰囲気とかもない。ただ、


「ただ、間違っても好きなんて言えないだけで」


仲が悪いわけじゃない。険悪なわけじゃない。ただ大嫌いなんだ。



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