きょとん、という反応を密かに期待してた。
もしくは大爆笑。
だけど


「誰だテメェ」


流石にこれは酷いんじゃないかと思った。



元親を見ればそりゃもう面白そうに笑みを堪えていた。
よし、後で制裁を加えよう。


憂鬱な気分のまま家に帰りドアを開ければいつもの如く幸村と何故か小十郎さん(多分畑へ行こうとしてたのだろう)が出迎えてくれた。

だが問題はその後に吐かれた冒頭の台詞だ。


「ぶっ」


遂に耐えきれなくなり吹き出した元親に殺気を覚えたのは内緒だ。
何か感じ取ったように元親が青ざめたとかそんな。


「あきら殿、でござるか…?」


恐る恐る、と言った感じで私を見たのは幸村だ。


「…そんなに変わった?」


雰囲気は変わったと言えどそんな、誰かわからないくらいなんて。


「あきら…!?」

「わ、その反応傷付きます」


信じられない、と言ったような小十郎さんにふざけて言う。
いやでもそんな驚かれるなんてショックだけども。


「お綺麗でござります!」

「ありがとう、ゆき。お世辞でも嬉しい」


元親は未だ爆笑中だ。
誰のせいだと思っているんだ。


「…雰囲気がちげぇからわからなかった」

「まぁ、確かに雰囲気は変わりましたよね。
でもこの服だって小十郎さんが選んでくれたものだし」


実はこの服を着るのは今日が初めてだった。
なんとなく、着辛くて。


「あぁ、よく似合ってる」


その顔は反則だ。
普段の強面が嘘なような、柔らかい笑顔。


「旦那?さっきから何して…誰アンタ」

「もういいよそれ」


あ、つい敬語が。





「まぁ、あれは冗談だけど本当に変わるもんだね」


場所をリビングに移し慶次や政宗から賛美の言葉をもらい元就には二度見され、やっと一息吐いたところで猿飛がそう切り出した。


「元親が悪ノリしたんですよ」

「でもすげー変わっただろ?」


ドヤ顔する元親の頭を軽く小突き猿飛が入れてくれた紅茶を一口飲む。


「殆ど化粧のせいですけどね」

「女の子は化粧で変わるからねー」


けらけらと笑う慶次に政宗も頷く。
プレイボーイという言葉が似合う二人だ。


「…化け物め」


ボソリと言ったのは元就。


「小声でも聞こえてるよ元就」


ちょっといらっと来たため元就を抱き上げ頬がどこまで伸びるか実験してあげた。


「ひゃひをふる!」

「ふふ、伸びる伸びる」


ぷくぷくしてて気持ちいい。
ちょっと名残惜しいけど頬を解放すればひりひりと痛む頬を両手でさする元就にまた萌えた。


「にしても、ばっさり切ったねー」

「本当はもうちょっと短くする予定だったんですけどね」


元親が舞ちゃんと勝手に決めた結果こうなったのだ。

ショートにするつもりで行ったのにな。


「鬼の旦那も大分すっきりしたね」

「おう!やっぱりこれくらいじゃねぇとな」


肩に付くくらい長かった元親の髪は佐助位までにカットされそれでも女の子に見えるから不思議だ。
今度女装させてみようかな。元就と一緒に。

未だむっすりしてる元就の頬を軽く撫でごめんごめん、と笑いながらそんなことを考える。
きっと二人とももの凄い可愛くなるんだろう。楽しみだ。


「あきらちゃんって毛利の旦那抱き上げる率高くない?」

「…そうですか?」猿飛の問いに首を傾げて聞き返せばコクンと頷かれた。


「毛利の場合はあきらを怒らせることが多いだけだろ。抱き上げるっつーんなら真田が一番多いんじゃねぇか?」

「あぁ。一番youngだからな」


それは確かに、と思う。
元就はいらっと来たりツンツンしたりしたときに抱き上げて頬を引っ張ったり抱きついて嫌がる様をみて楽しんだりするけど純粋に甘やかす意味なら幸村が多い。

性格が一番純粋で体も一番軽いから。何より反応も面白いし。


「元親おいで」


元就を膝から下ろし元親を抱き上げる。
一番こうすることが少ないのは多分元親だ。


「今更だけど嫌じゃない?」

「本当今更だな」


最初に抱き上げたのは…ドライヤーの時?それ以外はあれか、生理痛の時。
そう考えると何もないときにこうしたことないや。


「別に嫌じゃねぇぜ?」

「そ、それがしも、あきら殿にぎゅっとしてもらうと安心するでござる」

「むしろwelcomeだ」

「…ふん」


そうか。嫌じゃないのか。
ならこれからも遠慮はしないぞ。
膝に乗せたままの元親の肩に顎を乗せる。

四人との間に甘さはない。
四人の目はそう、母親に向けるそれのような。


「(懐かれたもんだ)」


何がきっかけか、とか全くわからないがいつの間にやら。
特に政宗とか。
政宗は一番距離があった。誰よりも…それこそ猿飛よりも。
警戒心は解いてもそれはそれこれはこれ。

恐らく彼は"母親"という物にトラウマがある。
甘えたいのに甘えられない、近付きたいけど体が拒否する。気を許したのに触ることは出来ない。

甘えることを拒んではそのたびに僅かに傷付いた顔をしていた彼にだからこそ自分から近付いてくるまでせいぜい頭を撫でるくらいしかスキンシップを図ってこなかった。

それは政宗のためなんかじゃなく、私のため。

だから彼が自分から膝に乗ってきた時はびっくりした。
私も、だけど小十郎さんが。
二人で顔見合わせて目を丸くしたのは記憶に新しい。

けれど小十郎さん曰わく一番驚いたのはショッピングモールに買い物に行ったときに家族に間違えられた時に政宗が笑ったこと、だと言っていた。


「小十郎がfatherであきらがmotherか」


そう言って、微笑んでいたと。

私の何がそこまで彼等に気に入られたかわからないけれど、
なんとなく嬉しく感じるのは私も彼等に気を許しているから、か。
それも悪くない、と思う私はつくづく絆されたと思う。


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