くしゅん、
朝起きて第一にくしゃが出た。
頭がぼーっとしてまるで靄が掛かったような感覚に陥る。


「あきら、朝だぞ」


起きてこない私を呼びに来たのは珍しく小十郎さんだ。


「おはよー、ございます」


寝起きだと言えど酷い声だ。
喉もヒリヒリする。
あぁ、これは


「…あきら、額を貸せ」


水仕事をしていたのかひんやりとした手が額に触れる。


「酷ぇ熱だ…待ってろ、すぐ桶に水を持ってくる。
今日は一日寝ていろ」


部屋を出て行く小十郎さんを見送りベットサイドの引き出しから体温計を取り出し熱を計る。
耳で計るタイプのそれは一瞬で体温を表示してくれた。


「さんじゅうななど、ごぶ…」


37度5分。
普通の人なら其処まででもない数値だが平熱が異常に低い私にはなかなかない高熱だ。

体温計を引き出しにしまい大人しく横になる。

熱を出した原因を探すが思い浮かばない。
…疲れ、かな。
武将達がこちらへ来てから二週間。やっと生活が落ち着いてきて疲れが一気に出たんだろう。


「あきらちゃん、大丈夫?」

「さるとび…?」

「あ、今日は流石に警戒薄いねー。
右目の旦那は今お粥作ってるから変わりに様子見に来たんだけど…熱相当高そうだね」


ひんやりと額に乗せられたのは濡らしたタオルだろう。
その冷たさが気持ち良くて目を細めれば猿飛が本当どうしたの大分弱ってるじゃん、とからかうように笑った。


「うっせ、さる」


猿飛の言っていた通り熱のせいでいつもみたいに壁を作る気力にもなく思わず素が出てしまう。


「…ねる」

「うん、そうしな。旦那達はしばらく近寄らないように言っておくから」

「ん」


もう喋るのも辛くて目を閉じれば睡魔はすぐに襲ってきて私はそのまま眠りについた。




次に目を覚ましたのは誰かがドアを開けた音でだった。


「起きたか」

「こじゅ、ろ、さん?」

「朝より熱が上がったな。粥は食えそうか」

「…気合いで食います…」


完食は無理かも知れないが何か食べなきゃ薬も食べれない。
小十郎さんに手伝ってもらい体を起こして粥に手をつける。

喉に滲みるためゆっくりとしか食べれないが猫舌な私のために食べやすい温度に冷まされた粥は食べやすく半分くらい食べれた。

薬を飲むにも水ではなく白湯を渡してくれる小十郎さん。
こういう細やかな気遣いにきゅんとする。


「なんか欲しいものはあるか」

「おひる、りんごがいい。すりおろしたの」

「わかった」


くしゃっと頭を撫で部屋を出ていく小十郎さんにありがとう、と呟き再び布団に入った。




それから暫く寝て、起きたら林檎を食べまた寝て、
再び起きたときにはもう大分体は楽になっていた。


「あきら殿!」

「ばっ静かにしろ!」

「貴様もだ姫若子」

「noiseyなやつらだぜ」


うつらうつらとしていた意識は不意に聞こえた賑やかな声達に完全に覚醒された。


「ごめん、起こしちゃった?」


少し体を起こせば苦笑する慶次と目があった。
他の子達は…と視線をさまよわせれば部屋の入り口でこちらを覗く4人が見えた。


「片倉さんと忍君に子供はうつりやすいからって近付かないように言われてさ」

「なる程ね」

「起き上がって平気なのかい?」

「うん。朝より大分よくなったから」


小十郎さんが置いていってくれたらしい汗拭きようのタオルを夢吉が器用に手に持ち首もとの汗を拭いてくれた。


「ありがと、夢吉」

「キッ!」


本当に頭のいい子だと思う。


「あきら殿ぉ…」


心配です、と顔の全面に書いた幸村が私の名前を呼んだ。


「大丈夫、明日には治るから」

「…本当か?」

「ん。もう熱は殆ど下がったからね。
元就、花壇の水やり頼んでいい?元親も手伝ってあげて」


頷く二人にありがとう、と返しうつるといけないからとリビングへ戻るように伝える。

4人が立ち去ったのを見てから慶次に向き合い口を開いた。


「あの子達がこの部屋に来たがってたらマスク付けてから来させるようにしてくれない?」

「お安い御用だよ!」

「キキッ!」


にかっと笑う慶次にもうちょっと寝る、と告げ目を閉じた



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