自称神様の話を聞いた率直な感想は「どこの夢小説だ」だった。
「お前に預かって欲しいのはお前の世界からして平行世界に当たる世界に生きる戦国武将達だ。
預かってもらいたい理由は追々説明するから今は先へ進むぞ?
今此処にいる家をお前に与える。広さに問題はない筈だ。数日後、この家の庭に武将達が現れる。最低限の寝具や衣類は用意しておこう。
生活にかかる金は全部こちらで保証する。お前への給金はお前の口座に定期的に振り込むがお前も武将達と同じくこちらの口座の金を使ってくれて構わない」
一気に告げられた言葉に頭がついて行かない。
「また詳しいことは追って説明しよう。
どうだ、受けてみるか」
その日はそこで目が覚めた。
「あんたが加藤あきら?」
橙色の髪の青年が此方を睨みながらそう言う。
う、あ、
予想はしていたがやはり警戒をされているようだ。
しかしここは営業用スマイルで乗り切ろう。大丈夫。出来るはず。
「はい」
端的に、それだけ答えた。
「まずは履き物を脱ぎ家に上がって下さい。
話はそれからにしましょう」
夢から覚めた私は夢で見たあの部屋に横たわっていた。
つまりあれはただの夢じゃない、ということ。
「頷いて、ないんだけどな」
まぁいい。なんとなくだけど逆らっても無駄な気がするんだ。
部屋を出て家の中を散策すればこの家がいかに広いかがわかった。
一般家庭よりは広く、旅館よりは狭い。
庭や家の外見は純和風。家の中は和室と洋室が半々というところだった。
リビングらしき部屋は西半分が洋風、東半分が和室になっていて、和室の方は一段高い位置にあり、掘り炬燵になっていた。
洋室の方はテレビを囲むようにコの字に置かれたソファーとその前にガラスのローテーブル。
キッチンはシステムキッチンになっていて、恐らく和室の方で食事をとれるようにだろう。
洋室には広いテーブルはない。
ローテーブルの上には仕事の詳細が書かれた資料と通帳、キャッシュカード、恐らくここに来るのであろう人物達の保険証が置かれていた。
こうして私のバイトは半強制的に決まったのだ。
「私は加藤あきら。
皆さんの衣食住のお手伝いをさせていただきます。
えーっと…はい。質問は後で受け付けるのでどのような説明を受けてここに来たかだけ教えていただいてもいいですか?」
一旦客間らしき和室に案内して飲まれないのを承知にお茶を出してから話を切り出す。
何人かはきょろきょろと辺りを見回し、何人かはそれを宥め、またある人は此方を睨み、ある人は我関せずを通していた。
そんな中口を開いたのはやっぱり橙色の髪の彼で。
「世界の均等がどうとかって言われてそのために俺様達が邪魔だって事と此処が未来だってこと、それと俺様達がこっちにいる間は向こうの時間が止まるって事と、」
粗方の話は聞いているのか。
それでもこんだけ警戒されてるのは…まぁ、しょうがないか。
「後はいただきますとごちそうさま?だっけ。それの意味」
「ええー」
そこか。敢えてそこなのか。そこを教える必要性はあったのか?いや、あったとしてももっと説明しなきゃいけないこともあっただろう。
まぁ、いいや。取りあえず。
「粗方話は聞いてらっしゃっる様なので、質問に答えていきたいと思います。
何か聞いておきたいことはありますか…?」
「はい」
私の言葉に行儀よく手を挙げたのは前田慶次。
「どうぞ」
「忍君と右目の兄さん、それと俺以外が子供になってるのはなんで?」
ひくり、と自分頬がひきつったのがわかった
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