すっかり日課となった元就との花壇の水やり。

花は順調に育ちやっと花壇らしくなってきた。


「ね、元就」

「なんぞ」

「元親って昔女の子みたいだったんだっけ?」


私の急な問いかけに元就は顔を顰めそれから馬鹿にしたような顔で「やつは姫若子ぞ」と言った。


「姫若子か…可愛いもの好きだったりするかな?」

「あやつは戦を恐れかのような格好をしていただけ。そのような事は知らぬ」


まぁ、そうか。

戦うのが嫌で女の子の格好をしていた元親。


「あ―…駄目だ」

「何がだ」

「買い物行きたい」


戦国武将達がやってきて一週間ちょっと。
買い物という買い物は初日だけで後は食材位しか買いに行っていない。


「それとあの馬鹿の話となんの関係があったのだ」

「ん?可愛いもの好きなら買い物付き合わせようかなぁ…とか思ったんだけどさ。
もういっそみんなで買い物でも行こうか」


思い立ったらそく行動、がモットーです。
嘘だけどね。

早速他のメンバーに提案すればほぼ全員から行きたいとの言葉を貰い各々準備を始めた。


「佐助ぇ!おれのズボンは…」

「そこに置いてあるでしょ旦那!」

「政宗様!せめてその上着は止めて下され!」

「Aan?しょうがねぇな…」


そんな会話を背景に私も部屋着から着替える為にクローゼットを開く。

まだ6月とは言え外は厚く薄着をしたいがうるさいのが何人かいるためちょっと露出少なめに…面倒くさいな

結局胸元に大きなプリントが入っているキャミソールに七分のカーディガンを羽織りロールアップしたチノパンを履いた。
首には華奢なペンダント、髪は右耳の下でシュシュで緩く結い、化粧はいつもと同じ様にナチュラルメイク。

最近化粧をしてなかったせいかノリが凄くいい。

大きめのトートバックに必要なものを詰め一階に降りれば七人は既に準備万端でリビングに集まっていた。


「お、可愛いねー」


こうやってサラッと褒めるところが慶次を軽く見せる由縁なのかもしれない。
いや、嬉しいけどね。


「出掛ける前にお約束ね。
1、はぐれる時は二人以上で。2、騒がない暴れない問題起こさない
これは最低条件ね。
必ずゆきは猿飛と、政宗は小十郎さんと、元親と元就は私か慶次と行動すること。
はぐれたら容赦なく置いていきます。
それと、全員にちょっとずつだけどお小遣いを渡します。
欲しいものがあったらそのお金で買ってね」


幾らずつがいいかな…五千円とか?
多い…か?

取りあえず子供達の分はちょっと少なめにして保護者組には多めに渡すか。

子供の財布は大人が預かればいいから…うん。


「みんな最初に自称神が用意した洋服と一緒に財布があったと思うからそれ持ってきて」


つくづく用意がいい奴だとは思う。

七人が持ってきた財布にお金を入れて猿飛と小十郎、それと慶次と元就に渡す。
元就は自分で持つと聞かなくてしょうがなく元親の首から提げる財布と交換して持たせた。

これはこれで可愛いからいいと思う。


「さ、出発しようか」


近所の大型ショッピングモールに行くため今日は歩きだ。

低いヒールのサンダルを履いて家を出る。


久しぶりの買い物だ。





ショッピングモールは平日なこともあって思ったよりはすいていた。
ラッキーラッキー。


「じゃぁ自由行動にしようか。
買い物するもよしブラブラするもよし何か食べるもよし。
ただしお昼はみんなで食べるからその分は残しておくこと。
集合はあの時計台の時計が十二時を指すまでに時計台の下ね」

じゃぁ解散!とバラける。
私は左手を元就の右手と繋ぎ左手は元親と繋ぎ歩き出した。


「まずは何を見るんだい?」

「雑貨か服か…取りあえず目に入った所から見ようかなーって。
三人も見たいところあったら遠慮なく言ってね」


そんな会話をしたのが二十分前で、元就とは早々に本屋で別れた。
知り合いの店だったのもあり絶対にここから動かないことを条件に単独行動中だ。

元親と慶次は先ほどまで一緒にいたがおもちゃ屋の前で別れた。
元親がプラモデルを見たいと言うので慶次に付き添いを頼んだんだ。

そして私はそのおもちゃ屋の隣の雑貨屋にいたりする。

綺麗なシャンプーボトルや可愛いティッシュケース、シュシュやアクセサリーを見ながら買う物を慎重に選んでいく。
幸いお金はあるし引っ越したばかりの部屋には雑貨の類は殆どなく最低限のもので構成されている。

欲しいものを端から買っていってもいいけどそこは染み付いた貧乏性のおかげでそうはいかない。

とは言いつつも台所用品なんかも可愛いものがいっぱいでついつい目移りしてしまう。


「(このケトル可愛いなぁ…でもこのティーポットも可愛いし。
あぁそうだマグカップも足りてないんだよなぁ…)」


雑貨屋、文具店、本屋は私の中で聖地みたいなもので入ったら最後なかなか出れない。それが一人なら尚更だ。


「あれ?あきらちゃん一人?」

「…猿飛さん」


聞き慣れた声に振り返れば幸村を抱きかかえた猿飛が立っていた。


「他の三人は?」

「元就が本屋で元親と慶次が隣のおもちゃ屋です」

「へぇ」

「何を見てるのですか?」


ひょいっと猿飛の腕から飛び降り足元にとたとたと駆け寄ってきた幸村に手に持っていた籠の中身を見せる。


「そんなに買うの?」

「これでも搾ったんですけどねぇ。引っ越したばっかりで殆ど物がないからつい」


今のところ籠に入っているのはシャンプーボトルとティッシュケース、シュシュが幾つかとペンダントやリング、ポーチなんかも入っている。


「いくら神様のお金だからって買いすぎじゃない?」

「失礼な。これは私のお金で買うんですよ」


このバイトを始めるちょっと前までバイト三昧の生活で貯めたお金が結構あるから自分のものは出来るだけ自分で買うようにしている。

因みにそのバイト先が今元就のいる本屋の店長の二号店だったりするんだよね。



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