人の傷に触れるのは好きじゃない。
自分の傷に触れられるのが人一倍嫌いだからだと思う。

私は、人を救えるほど出来た人間じゃない。


「…なぁ、あきら」


なんやかんややってる内にいつの間にか七人が来て二週間が経っていた。
七人は現代にも慣れそれぞれ今の生活を満喫している毎日を過ごしている。

そんなある日少し暗い表情の元親と政宗がキッチンで洗い物をしていた私の下へやってきた。


「どうした?」

「…」

「あの、よ、」


黙りの政宗と言い辛げに言葉を詰まらす元親に濡れた手をタオルで拭き二人の目線に合わせるようにしゃがみ込む。


「ゆっくりでいいよ」


そう言って元親の頭を撫でれば元親は意を決したように口を開いた。


「俺たち、テレビでやってるような眼帯つけた方がいいのか?」


なんだそんなことか。と思ったが口には出さない。なんとなく、言えなかった。

確かに二人は包帯を目に巻いているから目立つと言えば目立つが今の時代子供にパンクな格好をさせる親も多く、あまり気にはされない現実だ。


「どっちでもいいんじゃない?」


あっさりそう返すと二人は少しだけ哀しそうな顔をする。
しまった、言葉の選択を誤ったか。


「あー…別に二人がどうでもいいとかじゃなくてさ。
なんとなくその包帯は二人のバリア…結界?みたいなものでしょう?
だから私は口出ししないことにしてたんだけど…目立つのが嫌なら医療用の一般的な眼帯にする?」


ここ一週間で二人の目について触れたことは多分一度もない。
二人はそれが不思議だったんだと思う。

触れられなくてよかった、なんて安易に納得する程子供じゃないから、何か裏があるのか…もしくは自分達に関心がないのかと思ったのかもしれない。


「あきらは気にならねぇのかよ。俺らの目」

「ぶっちゃけあんまり気にならないよ」


だけどそれは二人に関心じゃないとかじゃなくてさ


「別に私は二人の外見がどうとかで好きなわけじゃないし…その包帯の下がどんなんだろうと正直どうでもいいんだよね」


二人の傷に触れたくない、というのが本当の理由なのだけど。


「your crazy」

「失礼な」

「…じゃぁ俺の左目見ても退かねぇか?」

「さぁ」


キョトン、とする元親。
いやだってさ、


「そんなの見なきゃわからないし。その下がどんなんでも態度を変えたり追い出したりはしないし嫌いにならない程度には好きなつもりだけど口で何言っても二人は疑うでしょ?

だから見せなくていい。二人が見せれるって思う時で。
ただどんな反応かは保証しないよ」


私は馬鹿みたいに心が広い漫画のヒロインとかじゃないから。


「Ha!おもしれぇ奴だ」

「本当だぜ!俺ぁお前になら見せてもいいかもな」

「そこまで言うんだ。どうなっても知らねぇぜ?you see?」

「え?目を合わせたら石になるとかじゃないよね?」


だったら嫌だけど流石にそれはないか。

するすると包帯を外す元親。その手が震えてること、知ってる。

白い包帯の下から現れたのは、赤い瞳。


「…なんだ」


この感想は失礼なのはわかってる。でも率直な感想だ。


「綺麗じゃん」


一言。ただそれだけ。


「怖くねぇのか?」

「全然。今の時代赤い瞳なんて珍しくないよ」


カラコンとかで赤くする人間、うじゃうじゃいる。

だけど多分、戦国時代にはそんな人いなくて髪の色もあって苦労してきたんだろう。

鬼の子、とか平気で言われてそうだ。


「どうする?眼帯、つける?」


頷く元親に立ち上がりリビングを出る。
救急箱どこやったかなぁ…なんて考えながら足を進める私の後ろをついてくる足音。


「どうした?」


さっきと同じ問いかけ。
追いかけて来てたのは政宗だ。


「嫌いにならねぇって言ったな」

「多分、だけど」

「見てぇか?」

「あんまり興味はないよ」


そう返せば政宗はニッ、と笑い包帯を外した。
やっぱり手は震えている。

この世界の伊達政宗と目の前にいる伊達政宗がどこまで一緒かは知らないけれど…もし過去が一緒ならば相当のトラウマがあるはずだ。


「いいの?見せて」

「あぁ」


スッと政宗の前髪をかきあげる。
ビクッと、一瞬震える体。それでもその左目は私をジッと見ていた。


「…醜いだろ」

「確かに見て気分のいいものではないね」


震える瞳
―あぁ、傷付けたか。


「私は人の傷に触れるのは苦手だし、気の利いた言葉は言わない。
だから率直な感想言うよ?」


慰めが欲しいなら残念でした。
なんてね。


「見て気分のいいものではないけどでもそれだけかな」

「…それだけ?」

「醜いとは思わないしだからと言って綺麗とも思わない。
否定もしないけど肯定もしない。
ま、そんなところだよ」


醜いと拒否はしない
けど綺麗だよ、なんて嘘言わない
軽蔑するわけじゃないけどだからと言っていいんじゃない?と肯定もしない


「ただ一つ言うなら…好きになったもん勝ちだよ」

「Aan?」

「誰がなんと言おうが誰に嫌われようが自分がそれを好きになっちゃえば気にならなくなるもんだよ。ま、そう簡単にいかないからコンプレックスなんだけどね」


さて、眼帯眼帯…と廊下の押し入れに入っていた救急箱から医療用の眼帯を二つ取り出し一つを政宗の右目に装着させる。


「…Thank you」


ぼそりと言われたその言葉が何に対してのものかは聞かないことにした


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