元就と猿飛佐助、それと畑仕事を終えた小十郎さんと政宗と五人で冷たい麦茶を飲みながら(元就はオレンジジュースだけど)談笑してたら昼寝組がやっと目を覚ましさぁ夕飯にするか、と立ち上がる。


「手伝うか」

「へーきです。温めて盛り付けるだけですから」


サラダもさっきボウルに大量に作ったから適当に盛り分けてもらえばいいし。


「なんと!政宗殿達も和解したのですか!」


喧嘩をしていたわけじゃないから正しくは和解ではないがまぁいいだろう。

政宗が頷けば真田幸村は急にシュンとし恨めしそうな顔で猿飛佐助を見出した。


「何、旦那」

「政宗殿達だけ狡いでござる!」

「あのねぇ旦那。狡いとか狡くないとかって話じゃないでしょ」

「もういいでこざろう!加藤殿に悪意がないのは明白。
それがしもいい加減加藤殿達と飯が食いたい!」


警戒を解くとか解かないとかはぶっちゃけどうでもいいがそういう口論は本人が居ないところでして欲しい、と思う私は間違っているだろうか。

そして論点がずれてると思うのも。

取りあえずカレーを温めようとキッチンに向かいコンロのスイッチを押す。

炊飯器には大量のご飯。
足りるか心配だからとさっきスーパーで買ったナンもオーブンで軽く焼いていく。


「あぁもう!それで毒盛られたらしらないからね!?」

「だから加藤殿は毒など盛らぬと言っておるであろう!」


後ろからはそんな会話が聞こえる。
なんだか駄々をこねる子供と母親みたいだ。
若しくは危機感のない旦那をしかる奥さん。

そんな想像をしてつい吹き出してしまった。


「ちょっと、何笑ってるのあきらちゃん」


しまった、こっちに矛先が。


「というか警戒されてる側の人間なのに我関せずだし自分から毒味するし干渉しないと思えば手助けしたり旦那甘やかすし殺気向けても無反応だし昨日だって薄着でうろつくし目の前で平気に酒飲み出すし警戒心なさすぎ!意地張って警戒してるこっちが馬鹿みたいじゃん」

「ええー…なんで怒られてるんですか私」


毒味はしなきゃ口にしないって思ったからだし真田幸村を甘やかすのは昔飼ってた愛犬に似てるからだし殺気はまぁ害はないだろうって思ったし薄着とお酒は…まぁ確かに全く警戒してなかったけども。


「取りあえず夕飯にします?」

「あぁもう!わかったよ旦那食事は一緒にとってもいいです!ただし明日からは基本的に俺様と右目の旦那が食事作るから!それでいい?」

「本当でござるか佐助!」

「わ、やった。また仕事減った」


そんな私に幾対かの呆れたような視線が向けられたのは言うまでもないだろう。

はぁぁぁあ、と猿飛佐助の大きなため息が妙に響いたような気がした。




「いただきます」


手を合わせてスプーンを手に取る。
元親や小十郎さん、政宗にはさらりと言ってはいたもののみんな見た目が衝撃的だったらしく手を付けようとしない。

が、そんなこと気にしててもしょうがないのでスプーンで一口掬って口に入れる。
うん。美味しい。


「ほ、本当に食えんのか、これ」

「美味しいってば。ほら」


もう一口分掬って元親の口に入れる。
元親は驚いたのかうが!っと変な声を上げたが大人しく咀嚼して飲み込み、小さい声で「…美味い」と呟く。
その顔が赤かったのは本人の沽券に関わることなので黙っておこう。


「は、破廉恥…ふがっ」

「どうですか?」


それを見て叫ぼうとした真田幸村…もとい"ゆき"の口にも同じようにスプーンを突っ込めば真っ赤な顔でこくこくと頷いた。


「ね。美味しいでしょう?」


二人の反応に安心したのか若しくは第三の被害者になりたくないのか(多分両方だ)他の五人もスプーンを手に取り食べ始めた。
反応はそれぞれ「意外に美味しいね」「食えなくはない」「なかなか美味いな」「delicious」「美味いよあきらちゃん!」それと「キキッ!」。

セリフだけで誰だかわかるのが不思議だ。

それからは早かった。
ご飯はあっという間に空になりナンも最初は警戒していたくせに気が付けば完売。まだ足りない慶次とゆきのために余ったカレーでカレーうどんを作ったくらいだ。


「こんなに食べるなら明日から昼食も食べようか…」


あまりの食べっぷりについそんなことを考える。
大体慶次はともかくゆきとかその小さな体のどこにそんなに入るんだ?

しかも食べ方が意外にも(よく考えれば当然だけど)綺麗だから妙にムカつく。

サラダも完売だ。「昼食?」

「あー…昼餉?かな。こっちでは朝昼晩一日三食食べるんです」

「三食ですか!」


みんな朝早いしその分夕飯まで時間長いから余計腹が減るのだろう。
今日はケーキ食べてその後昼寝してたからまだそんなんでもないかもしれないけど。

あれ、なんでずっと寝てた二人が一番食べてるんだ…?


「あ、そうだ。
湯浴みの前に部屋を決めちゃいましょうか。昨日はなんだかんだぐだぐだだったので」


そう言って和室スペースの引き出しから昨日線引きした紙を取り出す。


「もう昨夜の通りでいいんじゃない?」

「待て。我がこやつと一緒なのが気に食わん」

「わがまま言うなよ毛利」


猿飛佐助…もとい猿飛の言葉に異論を言ったのは元就のみ。

気持ちはわかるが元就だけ違う部屋ってのはちょっと心配だ。
中身はともかく体は小さいわけだし。


「じゃぁ元就、元親と一緒なのと私と一緒なのどっちがいい?」

「…我慢してやろう」


そんなに私と一緒は嫌か。
ならば俺が…と名乗り出た政宗は小十郎さんに叱られている。


「じゃ、みんな順番に入浴しちゃって下さい。
もう準備は出来てますから」


順番は適当に決めて下さい。
そう告げてみんなの出方をみる。

一番風呂を、と名乗り出たのは元就と幸村。
言い争い…にもなってはいないが当然とでも言うかのようにさっさと自分の着替えも持ち風呂に行こうとする元就に幸村が必死に食いついてる。


「今日は元就が最初。明日は幸村達が最初でいいんじゃない?」


幸村"達"というのは勿論猿飛もセットだからだ。


「元就一人で平気?」

「誰に口を聞いている。
どうしてもと言うなら手伝わせてやらんこともないぞ」

「はいはい。頭がけ洗わせていただきます」


元就の上から目線には慣れた。
この子はあれだ。ツンデレ。



昨日とは違いそのままの服装で元就の髪を洗いすぐリビングに戻れば六人はテレビをみていた。

番組は普通のバラエティーなんだけども。


「は、この世界の女はみんなこんなに露出が多いんだな」

「うわー化粧濃くない?
化け物みたいだよ」

「野郎がみんなひょろっちいな」


その感想が妙に面白くてついつい笑みが零れた。


「あきらちゃんもああいう格好するのかい?」

「ミニスカートはないけど…まぁ、するよ」


ああいう格好、と言うのは今アップで映っている子の様な服装だろう。
キャミソールに半袖カーディガンを羽織って下はミニスカートのでニーハイブーツ。


「上はともかく下はあんな短いのなかなか穿かないけどね」

「…今穿いてんじゃねぇか」


今の服装は黒いキャミにダメージ加工されててところどころインナーが見える白い七分Tシャツ、下はデニムのショートパンツだけど黒いタイツを穿いてさらにレッグウォーマーも穿いてる。


「肌は見えないじゃないですか」

「そう言う問題じゃねぇ」

「もっと暑くなれば更に露出増えてくるんで慣れて下さい」


夏まで露出なしじゃ死んでしまうよ…


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