片倉小十郎と、みんなより一足早く目を覚ました伊達政宗、元親の眼帯コンビを連れ車に乗り込む。
助手席はまさかまさかの片倉小十郎だ。
「どこに行くんだ?」
「ホームセンター。農具とか工具とか…大体のものが揃っている店だよ」
何も知らないまま居ても手がかかるだけだから連れてけと猿飛佐助に言われるがままに連れてこられた元親の質問に簡単に答えながら車で五分の所にあるホームセンターへ向かう。
本来なら歩いていく距離だけど今回は荷物が多くなるのは目に見えてるので車で行くことにしたのだ。
「片倉様と伊達様は…大丈夫ですね。元親、勝手にどっか行ったり物壊さないようにね」
多分ホームセンターには彼が好きそうなものはいっぱいあるだろうから。
自動ドアに驚く片倉小十郎と伊達政宗に苦笑しつつカートを押して農業品売り場に向かえば片倉小十郎の目が煌めいた、気がする。
「好きなものを選んで下さい」
マルチフィルムとかは戦国時代にまずないし…ならどうやってたんだろう。気になる。
嬉々として農具を選ぶ片倉小十郎に本当に好きなんだなぁ、としみじみ思う。
「Hey girl」
「なんですか?」
「Thank you」
何に対してのお礼かわからない。
けれど、なんとなく片倉小十郎に関する事だとはわかった。
「You're welcome」
必要最低限の、けれどそれなりの量の農具を抱えて帰ってきた片倉小十郎にちょっとだけ笑いながら伊達政宗にそう返しておいた。
「次は苗ですね」
あぁそうだ、花の種も買おう。
庭には確か花壇もあった。
レンガを重ねてそれっぽくして、何の花を育てようか。梅に桜と来たら向日葵?秋桜もいいな、なんて、がらにもなく浮かれている自分がいる。
「元親もなんかいるものあれば持ってきていいよ。私はここにいるから。伊達様もよろしければ」
その言葉を聞いた途端に何処かへ走って行く元親に呆れながらその後ろをついて行く伊達政宗。
「今更だが…ここは何処の国だ?奥州ではないだろう」
片倉小十郎の問いかけにあぁ、と答える。
そう言えば説明していなかったか。
「ここは信州…信濃になりますね」
「信濃、と言えば真田の」
「えぇ。真田様の城がある上田よりもやや西にはなりますが」
ここは信濃、もとい長野。
その中で上田に近からずとも遠からずの場所だ。
「なら、作物に関しては猿に聞くのが早いか」
「そうかもしれませんねぇ…でも、皆様の時代よりもかなり天候が異なったりしていますし…今度近所のおじいさんにでも話を聞いてみてもよろしいかと。
家の近辺は農家が多いですから」
蛇の道は蛇?なんか使い方は違うがなんとなく意味はわかるだろうか。
「あきら!」
「ん、なんか欲しいのあった?」
帰ってきた元親の手には…プラモデル?
「これ、組み立てたら絡繰りになるんだろ?」
「よく知ってるね」
テレビでCMでもやってたか。
元親は絡繰り好きが祟って幼児化されたらしいし、これくらいで満足するならいっか。
「伊達様は何かありましたか?」
「あぁ。あったぜ」
そう言う伊達政宗の手には、
「竹刀ですか」
「駄目か?」
「いえ。けれどどうせなら全員分買いましょうか」
戦国時代から来たんだ。
鍛錬くらいしたいに決まっている。
武器は自称神に没収されたけれど竹刀なら問題はないわけだし。
「ただし家に帰ったら約束事を作りましょう。
物を壊さないとか、これから作る畑や花壇を荒らさないとか」
「あぁ。勿論だ」
「竹刀の場所は…元親わかるよね。ちょっと人数分取ってきます」
「…小十郎」
「はい。政宗様」
竹刀を取りに走る加藤あきらと長曾我部の後ろ姿を見送り、小十郎を仰ぐ。
「そろそろいいんじゃねぇか」
何が、とは言わない。
言わなくてもわかるからだ。
「傷一つない手に筋肉の殆どねぇ体。
食事に毒を入れるどころか自ら毒味しやがる。
それに、あの"規約"とやらが本当ならあいつが俺らを殺す理由がねぇ」
俺らの内誰かがあいつを殺せば俺らは全員消滅する。
あいつが俺らの内誰かを殺せばあいつが消滅する。
「…そうですね」
小十郎が頷く。
完璧に信頼はしない。だけど頑なに警戒する相手ではない。
そう判断したからだろう。
「まずは名前を呼ばねーとな?You see?」
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