「美味いでござぁぁあ!」
「Shut up!」
ケーキを一口食べ雄叫びをあげた真田幸村の頭を伊達政宗が叩く。
二人とも小さいから可愛い光景だけどこれが大きかったら更に喧しいだろう。
因みに真田幸村が食べたのはショートケーキ。
伊達政宗は自分が選んだアップルパイ、片倉小十郎はモンブラン、慶次が抹茶ケーキで猿飛佐助がチーズケーキ、元就がチョコレートムース、元親がフルーツタルト、私がミルクレープだ。
二つずつ買ったケーキをちょっと行儀は悪いがみんなで回しながら食べていく。
「真田様が最初に食べたのがショートケーキ。ふわふわしたのがスポンジで白いのが生クリーム、赤い果実が苺です。
伊達様が食べたのがアップルパイ。そういう生地をパイ、と言って、中に入っているのが林檎。片倉様が食べたのはモンブランと言って栗のケーキ。猿飛様が食べたのはチーズケーキですね。チーズというのは牛の乳の加工品です。
慶次が食べたのは抹茶のケーキ。スポンジケーキやクリームにお抹茶を使ってて、元就が食べたのがチョコレートムース。茶色いのがチョコレートで、生地をムースって言いいます。
元親が食べてたのはフルーツタルト。フルーツは果物。タルトは生地の名前です。わからない果物があったら聞いて下さい。
私が食べているのはミルクレープ。薄い生地を何層にも重ねて間にクリームやジャムを塗ってあります。
これらが一般的にケーキと呼ばれるものです」
元親から回ってきたタルトを食べながら説明していく。
キウイが甘酸っぱくて美味しい。
圭子さんオススメの紅茶は本当に美味しいし対して悪かったわけでもないが良くもなかった機嫌が右肩上がりになっていくのがわかる。
「ん?」
不意に視線を感じ顔をあげると片倉小十郎と目があった。
「どうかしましたか?」
「…いや、美味そうに食う奴だと思っただけだ」
「あぁ。よく言われます」
というか好きなものと嫌いなものがすぐわかると言われる。
顔が違う、らしい。
「あ、皆さん完食ですか。
どうでした?初めてのケーキは」
「この、このすぽんじけぇきというものもくりぃむというのもまっこと美味でござらした!」「それは良かった」
本当に甘味が好きなのだろう。テンションが凄いことになっている真田幸村に笑みを返す。
「苺、だったっけ?美味いね」
「このちょこれぇとというのもなかなかうめぇな!」
「キキッ!」
「気に入ったなら何より。
ん?夢吉もケーキ食べたのか。口の周りクリームだらけ」
クリームだらけのまま寄ってきた笑いながらティッシュで夢吉の口を拭いてやる。
ついでに同じく口の周りが凄いことになっていた元親の口元も拭く。
「ふん、中身まで稚児になったか」
「うるせぇ!」
正反対な二人だけどなかなか仲がよろしいようだ。
食器を洗い終えリビングに戻れば幼児化武将達+夢吉が気持ちよさそうに眠っていた。
お腹が膨れたからだろうか。そんな四人と一匹にブランケットを掛け昨日の自称神からの電話以降弄っていなかった携帯を取り出す。
溜まったメールは大半がメルマガで、その中に混ざる友人達からのメールに返信しながらソファーの背もたれにもたれかかる。
慶次は四人の側でうつらうつらしていて猿飛佐助はその側で窓の外を眺め、。片倉小十郎は先程庭へ出て行った。
静かで心地いい午後の時間。
襲ってくる眠気に必死に抗えながらふ、と笑みを零した。
「(こんな静かな時間、久しぶりだ)」
七人が来てからはずっとばたばたしてたし、ここ数日は最低限のものしかなかったこの家に必要なものを揃える為に忙しなかったから何も考えずまったりする時間というものが本当に久しぶりに感じられた。
「あらら、風来坊まで寝ちゃってるよ」
そんな猿飛佐助の言葉に顔を上げれば慶次もついに夢の世界へ旅立っていて。
それに笑いながらもう一枚ブランケットを持ってきて慶次に掛けた。
「今日は日差しが気持ちいいですからねぇ」
お昼寝にはもってこいだろう。
八人の寝顔を眺めていたらふとあることを思い付き自室に戻って机の引き出しから相棒を取り出し、リビングに帰る。
「何、それ」
猿飛佐助との会話は大体この問いかけから始まっているような気がする。
「これはカメラって言って、こうして撮りたいものにレンズを向けてシャッターを押すと、…ほら」
試しに窓の外の風景を撮ってみると猿飛佐助は不思議そうにカメラを眺めた。
「精密な絵みたいなもん?」
「そうですね。さっきケーキの説明のために雑誌を見たじゃないですか。あそこに載ってたのも写真ですよ」
そんな説明をしながら未だ気持ちよさそうに眠る八人と夢吉にピントを合わせシャッターを切った。
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