取りあえず仮名と数字を教えた。いろは歌がいつからあるかしらないがいろは順に文字を書いて渡したところ反論はなかったため問題なしとしておこう。
それから時間の数え方や時計の見方も簡単に教えた。
これで大分便利になる、と思う。
それから出掛ける準備をすればちょうどいい時間になった。
「さ、そろそろ行きますか」
昨日買ってきた洋服に着替えた三人を連れ家を出る。
昨日同様三人に自動車の説明をし、三人がシートベルトを装着したのを確認し車を発車させた。
因みに助手席は慶次だ。夢吉を絶対放さないように念を押しておいた。まだ事故りたくないのだ。
「目的地までどれくらいかかるんだい?」
「15分位」
「15分ってぇと…」
「四半刻の半分、かな?」
慶次とたわいもない話をしながら安全運転を心掛けて車を進める。
あれはなんだこれはなんだと昨日同様の質問攻めに遭うこと15分。目的地であるケーキ屋の駐車場に車を止め車から降りる。「いらっしゃいませ…あら、あきらちゃん!」
「え?わ、圭子さん!」
お決まりの台詞で迎え入れられケーキが並ぶケースの前まで行こうとした直後に名前を呼ばれ顔をあげれば顔見知りの女性…圭子さんがいた。
「久しぶりじゃない!元気にしてた?」
「相変わらずな感じですよ。
圭子さんこそ。
いつからここに?」
「ふふ、先月からよー。
ここで働いてるのよ」
圭子さんは二年前まで近所に住んでいたお姉さんだ。結婚と同時に家を出てから会ってなかったからかなり久しぶりになる。
「知り合いか?」
「はい。昔よくお世話になっていた方です」
「まぁ、もしかしてあきらの旦那様?」
「止めてくださいよー彼氏すらいないんですから」
圭子さんの言葉に苦笑しながら返す。
片倉小十郎も苦笑している。
「三人とも何か気になるケーキありましたか?」
「このgreenのcakeはなんだ?」
「これは抹茶のケーキですね。
甘さ控えめでさっぱりしてます」
簡単な説明をしながら留守番組の分のケーキを選んでいく。
ケーキとはどんなものかを説明するためのものだからショートケーキとチーズケーキ、それとフルーツタルトとチョコレートのムース。
「おすすめはあるか?」
「そうですねぇ。甘い物があまり得意じゃないならモンブランはどうでしょう?栗のケーキなんですよ」
それに頷く片倉小十郎に圭子さんにモンブランも下さい、と告げる。
十分少々悩んだ結果伊達政宗はアップルパイ、前田慶次は抹茶ケーキに決めた。
「私は…ミルクレープにしようかな。
以上でお願いします」
これでケーキ、と言われる大体の種類は買ったと思う。
因みに全部二つずつ買ってみた。
「そうだ。今日いい紅茶が入ったのよー」
「わ、本当?」
私はコーヒーが飲めない代わりに紅茶が大好きで、圭子さんもそれを知っているから美味しい紅茶があると教えてくれる。
そして圭子さんのおすすめの紅茶はハズレなしなんだ。
「アッサムよ。大好きでしょう?」
「うん。んー…じゃぁ買っちゃおうかな」
「お金はいいわ。お姉さんが買ってあげる」
「ええー、いいよ。お金払いますって」
遠慮したものの結局お金は受け取ってもらえず今回はお言葉にあまえることになってしまった。
「また来てね?」
「勿論!」
圭子さんに見送られ店を出る。
「すみません、ケーキの箱を持ってていただいてもよろしいですか?崩れやすいものなので出来るだけ揺らさないように」
「OK、任せておけ」
無駄にいいイントネーションに少しだけいらっとしたのは内緒だ。
「ただいまー」
誰に言うでもなく小さく呟きながら玄関をくぐる。
「おかえりー」
だから返事が返ってきたことに少しだけ驚いた。
「ただいま帰りました。何か変わったことや困ったことはありましたか?」
「いや、特に大丈夫だったよ」
猿飛佐助の言葉にホッと一息吐き伊達政宗からケーキの箱を受け取りキッチンへ持っていく。
「あきら殿!けぇきはいつ食べるのですか?」
「そうですねぇ。皆さん大人しく留守番して下さってたようなので今から食べましょうかねー」
そう言いながらポットの中のお湯が十分あることを確認して真田幸村の嬉しそうな声をBGMにティーポットとティーカップを取り出す。
圭子さんにもらった紅茶の茶葉の蓋を開ければいい香りが漂い、それに気を良くし鼻歌を歌いながら茶葉をティーポットに入れお湯を入れて蒸している間に人数分のお皿とフォークを食器棚から取り出しケーキを乗せて行く。
「おお!」
カウンターのイスに座り身を乗り出しながら感嘆な声をあげる真田幸村といつの間に来たのか真田幸村と同じ体制でケーキを見つめている元親、元就、伊達政宗の三人につい笑みが零れる。
紅茶をティーカップに注ぎ一口飲む。
「(うん。美味しい)」
圭子さんが勧めてくれるだけある。本当に美味しい。
「皆さんは冷たいお茶と温かいお茶どっちがいいですか?」
冷たい緑茶は今朝作ったばかりだからいっぱいあるし温かいのなら紅茶…は慣れてないからやっぱり緑茶?ほうじ茶もあったかな…なんて戸棚を漁りつつ七人に聞く。
「あきらちゃんと一緒でいいよ」
そう答えたのは猿飛佐助。
なんとなくそう来る気がしてた。
「南蛮のお茶になっちゃいますけど大丈夫ですか?」
と、さっき一口飲んだ紅茶を手渡す。
「ん…変な感じ。でも飲めなくはないかな」
「hey猿、俺にも飲ませな」
俺も、俺もとみんなが回し飲みしている間に違うマグカップにミルクティーを淹れてまた一口飲む。
「こっちはミルクティー。温かいお茶ならその紅茶かこっちのミルクティー、それか普通の日本茶になります。冷たいのなら昨日食事のときに飲んだ麦茶か冷たい日本茶があります」
ミルクティーを回し飲みしだす七人を見ながら冷蔵庫から冷やしていたお茶を取り出す。
「俺様最初のでいいや」
「それがし、みるくてぃーが飲みたいでござる!」
「俺ぁ普通の日本茶がいいな」
「俺も」
猿飛佐助が紅茶、真田幸村がミルクティー、元親と慶次が温かい緑茶か。
そんで片倉小十郎も緑茶で伊達政宗が紅茶、元就がミルクティー、と。
「猿飛様お茶を淹れるのを手伝っていただいてもよろしいですか?
他の皆様はこっちのケーキとフォークを運んで下さい。
こらこら、元就もだよ」
我関せずと何も持たずにテーブルへ向かおうとした元就を咎めながらティーポットにお湯を入れる。
「不思議な匂いだよね、そのお茶」
日本茶を淹れながらそう言う猿飛佐助。
「私は好きなんですけど…皆様は馴染みがないからそうかも知れないですねぇ」
自分の分の紅茶と猿飛佐助と伊達政宗の紅茶を淹れて残りで真田幸村と元就のミルクティーを淹れていく。
「これ持って行って大丈夫か」
「あ、はい。よろしくお願いします」
それを片倉小十郎が端から運んでくれる。有り難や有り難や。
さて、ティータイムと洒落込もうか
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