毛利元就と長曾我部の髪を洗いリビングに戻れば真田幸村と伊達政宗はソファーに座ってテレビに釘付けで猿飛佐助と片倉小十郎は二人で何か話していた。

私はそんな四人を横目に和室スペースに座りテーブルに手に持っていたドライヤーを置いて後ろにある棚の引き出しから紙とペンを取り出す。

紙にはこの家の間取りが書いてあり、その中にペンで線をひいていく。


「何だそれは」

「わ!」


いつの間に近付いたのかすぐ横から紙を覗き込んでいる片倉小十郎に驚く。その横には猿飛佐助もいる。


「この家の見取り図ですよ。
皆さんのお部屋を決める際にわかりやすいように空き部屋に線引きしてるんです」


空き部屋はいっぱいある。ここと私の部屋、客間以外使ってないから。


「一階と二階に二部屋ずつ、か」


人数は七人。一人だけが一人部屋になる。
ただ幼児化武将達を考えると出来れば一人にさせたくはない。
まぁ、どうでもいいが。


「あきらちゃん、あがったよー」

「あ、前田様。湯加減は如何でしたか?」


ひょこっと現れた前田慶次に当たり障りない言葉を吐きながらドライヤーのコンセントを入れ座り直した。


「それ、何」

「熱風で髪を乾かす絡繰りですよ」


警戒したような表情の猿飛佐助に業と飄々とした様子で返す。


「前田様、こちらに」


流石に少し警戒しながら(拳銃に形が似てるからか?)寄ってくる前田慶次の首に掛かっていたタオルを手にとって頭に被せる。


「わっ」


わしゃわしゃと拭いて大体の水分を飛ばしてからタオルを退かしてドライヤーを手に取った。


「大きな音が出ますが攻撃しないで下さいね」


前田慶次の背後に周り電源を入れ、乾かしていく。
前田慶次は一瞬ビクッとなったが害がないのがわかったのか大人しくしている。


「便利だなー、これ」


にこにことしている前田慶次に他の二人も警戒を解いて不思議そうな顔でドライヤーを見つめている。


これどうなってんの?
さぁ…
…知らずに使っているのか
そんなもんですよ


あらかた乾かし終わってから仕上げに冷風を掛けて終了。


「はい。終わりましたよ」

「ん…?あ、ありがとね!」


うとうとしていたらしい。一瞬の気を抜いた声がかわいかった。


「気持ちいいね、これ」


ニカッと笑うその後ろに毛利元就と長曾我部が見え手招きすれば入れ違いに猿飛佐助が真田幸村を連れてリビングを出て行った。





猿飛佐助と真田幸村が帰ってきた時には毛利元就と長曾我部は夢の世界へ旅立っていてびっくりされてしまった。

ドライヤーの使い方を猿飛佐助に教え前田慶次に手伝ってもらい二人を適当な部屋に布団を敷いて寝かせる。


「気持ちよさそう」

「寝てればかわいいな」


そんな事を言いながらリビングに戻れば早いことに片倉小十郎と伊達政宗もちょうど帰ってきたところで。


「じゃぁ、部屋割りをしますか」


伊達政宗の髪を乾かしている片倉小十郎にも聞こえるくらいの声で話を切り出す。


「長曾我部様と毛利様はひとまずこの部屋に寝ていただいています。
まだ仮、なので取りあえず今日どこに寝るかだけ決めてまた明日正式に決めましょう」

「それがいいだろうね。毛利の旦那とかうるさそうだし」


猿飛佐助と真田幸村が私の隣の部屋。片倉小十郎と伊達政宗が私の部屋の正面で、前田慶次は長曾我部達と同じ部屋で寝ることになった。


「では…そろそろ寝ますか?」


視線の先には半分寝ている真田幸村と伊達政宗。

保護者組みはそれに苦笑しそれぞれの主を抱き上げ立ち上がる。


「猿飛様達と片倉様達のお部屋にはお布団は敷いてありますのですぐ休めると思います。私はこれから湯浴み?に行きますから何かあったら浴室まで来て下さい」


四人を見送り自分も入浴に行くべくリビングを出る。


「あ、前田様も眠られる時はそのままにしておいて下さってよろしいですから」

「はいよー」




ふぅと息を吐いて湯船に体を沈める。温かいお湯に浸かれば体の疲れが取れていくのがわかる。


「長かったな…」


本当に長い1日だった。
明日からもこんなんだと考えると逃げたくなるがバイトである限り頑張ろう。


「ん?」


視界の端に何かが揺れた気がして顔を上げる。

―浴室の窓の外で揺れる影。


覗き?いや、曇りガラスだから見えない筈だしそもそも窓の外には人が通れるスペースなんかない。

鳥かな?と首を傾げた瞬間


「キキッ」


聞き覚えのあるその声に慌てて窓を開ける。
僅かに開いたその隙間から現れたのはやっぱりと言うかなんというか夢吉だった。

そういえばさっき前田慶次達に入浴の仕方を教える際開けっ放しになっていた窓を閉めた記憶がある。
その時に締め出してしまったのか。


「ごめんね、怪我とかはない?」


夢吉を抱いたままちゃぷん、と再び湯船に体を沈めれば「キッ」と元気のいい返事が返ってきた。野犬とかに襲われていないらしくよかった。

それにしてもつくづく頭のいい子だ。


「君も一緒に入って行くかい?」


キキッ!と言う返事を受け、桶にお湯を汲みその中に夢吉を浸からせる。
あぁ、かわいい。


「あきらちゃん?」


ドアの向こうから声を掛けられ少し浮かせていた体を湯船にしっかり戻してから返事をする。

この声は…猿飛佐助だ。


「どうかしましたか?」

「いや?厠に来たら話し声が聞こえたから誰と話しているのかと思ってさ」


ドアを挟んでの会話。
この家のトイレは浴室の隣にあるから声が聞こえるのもわかる。


「扉を開けて下さっても大丈夫ですよ」


説明するより見せた方が早い。

ガラッと遠慮なく開けられたドアの向こうから顔を覗かせる猿飛佐助。
ちなみに自分が入る直前に入浴剤を入れたから体が見える心配はない。


「猿?」

「はい。さっき入浴の説明の時に窓の外に行っちゃったまま気付かずに閉め出しちゃったみたいで。今帰ってきたので一緒に入浴してるんです」


湯で遊ぶ夢吉の首を指でちょいちょいとすれば気持ちよさそうに目を細める。
あぁ、癒やされる。


「へぇ…じゃ、俺様も一緒に入ろうかな」

「えぇ、構いませんよ?」


え?と言う顔の猿飛佐助ににっこりと笑みを返す。


「お"猿"さん、なら大歓迎ですから」


残念ながら口では負けせん。


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