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「ガゼルさま」「どうした」「一緒に寝てください」「とりあえずしねばいいよお前」

ガゼル様は相変わらず冷たいお方だと思うけれど落胆はしない。なぜって、冷たいのがガゼル様のチャームポイントというかアイデンティティだから。むしろガゼル様がものすごく優しかったら気持ち悪い。すいません睨まないでください。
とりあえずなぜこんなことになっているか言い訳をさせてほしい。そもそもなにもなければガゼル様に頼ることもなかった。事の発端はグラン様の「怖い話が聞きたいなあ」という言葉からだった。そこに「お、いいな、やろうぜ」とバーン様がのっかり、お二人に無理やり参加させられてしまったのだ。ありとあらゆる怪談話を吹き込まれた私は、風が窓を揺らす音だとかドアの外を歩く足音だとかに妙に敏感になってしまい、ひとりでは眠れなくなり、ガゼル様に助けを求めることに。



「と、いうことなんです」
「お前は馬鹿か」
「そんな冷たいこと仰らないでください!今日だけですから!」
「そんなの私には関係ない」



ここまで情が冷えていらしたとは計算外だった。仕方ない、じゃあグラン様かバーン様か…ああ憂鬱だ。あの人たちは絶対にさっきの延長話をそれこそ一晩中聞かせてくるに違いない。まああのお二人くらいしか泊めてくれる友達がいないというのも考えものなのだけれど!私の行く末路を想像をしてため息をつくと、ガゼル様が相変わらずノーザンインパクトうつぞコラみたいな視線を向けてくる。いやいつもこんな顔なんだけど、この目は人を殺めることも可能かもしれない。「まあ、今日だけなら…」ん?今、なにか聞こえた?「すいません、なにか言いましたか?」問い返すとガゼル様の目元はまるで般若のように私を睨みつける。これはもう人が一人二人死ぬわ、と思った。



「お前を部屋に置いてやると言ってるんだ。…今回きり、だからな。」
「ガゼル様…!」



私は感動した。氷の心をも溶かせた自分に。私グッドジョブ。自分に対して拍手喝采を送っていれば、ガゼル様は何事もなかったかのようにベッドに潜り込み、「電気を消せ」と顔を見せずに命令なさった。…あれ?私は?



「すみませんガゼル様、私は…」
「電気を消せ」



まずは電気を消すことが先決らしいので、大人しく従うことにする。パチンと電気を消せば、窓から入る僅かな明かりしかなくなってしまう。この微妙な光の具合が今の私にとっては恐怖なのに!



「あのう、ガゼル様?」
「…」
「私はどこで寝れば?」
「…」
「ベッドにお邪魔してよろしいのですか?」
「床で寝ろあつかましい」
「ゆ…か…」



せめてお布団…いや座布団でもかまわないから敷いてほしかった、などと抜かせばきっと私の命はない。諦めてベッドの横のスペースに持参の枕を置いて横になる。…寒い。



「ガゼル様…」
「黙れ寝かせろ」



ガゼル様を縋るように呼べば、厚手の毛布をくださった。あのガゼル様が、私の体を気遣って毛布をくださったのだ。これは奇跡としか言いようがない出来事だ!歓喜の表情でガゼル様を見れば、あの方はもうあちらを向いてしまっていた。



「ガゼル様、床固いです」
「当たり前だろう、床なのだから」
「床冷えします」
「勝手にすればいい」



ちょっと酷すぎやしないか、この人。いやあくまでも私は招かれざる客だということは自覚しているんだけど。じゃあどうして私を部屋にいれたんだ!と訴えれば、ガゼル様は起き上がり、あの目のまま口をひらく。



「お前を他のやつのところへ行かせるのが癪だったからだ」



早口で仰るので、文句の言葉をそれ以上返せなかった。






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