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「あたし、豪炎寺くんのことが好きかもしんない」



たまたま日直で一緒になったクラスメート兼サッカー部のマネージャーに唐突にそう告げられ、書いていた文字が日誌から脱線した。それを見てこいつは暢気に「何やってるのー」と笑い、消しゴムを俺に手渡す。お前のせいだと言ってやろうかと思ったけれど、言う気になれなかった。あまりにもさらりと言うものだから、そのまま流してしまいそうになる。けれどそれはれっきとした、好意を伝える言葉だったのだから、流してはいけないのだろう。現に彼女は、じっと俺を見つめて返事を待っているように見える。



「それは…」
「あ、勘違いしないでね?あくまでも『かもしれない』だから」



拍子抜けした。いや、むしろ呆れてしまった。なぜこいつはその『かもしれない』という可能性をわざわざ俺に伝えたのだろうか。勘違いしないでね、ってどういうことだ。勘違いするだろう常識的に考えて。



「お前はいったい…なにがいいたいんだ」
「…なんか言いたかっただけ」
「意味がわからない…」



奇天烈な言動にもはやため息しか出てこないのだが、真剣な面持ちで話すこいつを無視する気にもなれない。結局話を聞いてしまう俺は相当馬鹿だ。



「あたしもわかんない。」
「それは告白ととってはいけないんだろう?」
「正直それもよくわかんない」
「分からないことだらけだな、お前は」
「…だって、あくまでも可能性があるだけであって、本当に豪炎寺くんが好きなのかはわからないんだもの」



そこでふと気がついた。「お前…まさか、」彼女は俺の言いたいことを汲み取ったのか、バツが悪そうに頷く。「うん。恋愛経験は皆無だよ」俺はてっきり、この年頃の女子はだいたいそういった類の経験があるものだと思い込んでいたのだが、違うらしい。別に俺は誰がどういった経験をしたかなんて興味もないし、サッカーをしてるほうがよっぽど楽しいことだと思っているわけだが。



「…はあ」
「もしもこれが恋だったらさ、」
「ああ」
「初恋が豪炎寺くん、っていうことになって、…うん、なかなか乙だよねえ」
「しみじみということか、それは?」
「さあ?」




だって豪炎寺くん、すごく人気だし。軽く伸びをしながら、彼女はつぶやく。
人気がある、というのは自惚れかもしれないがわかっていたし、あまりなんとも思うこともなかった。なのに、こんなに愁い帯びたような声で言われては、知らないふりなんてできなくなってしまうではないか。



「あの、ね」
「なんだ?」
「わたし、全部が初めてで、本当にわからないことばっかりなの」
「そのようだな」
「うん。だから、豪炎寺くんが教えてくれたら嬉しいなって、思う。」



そう言ってはにかむ彼女がなんだか変に可愛くみえてしまって、机の上で硬く握られた指に手をそえる。すると彼女は、はっとしたような目で俺をみてから、いつもみたいに笑顔を咲かせた。俺は一抹の不安を胸に残しながらも、その笑顔に応えてやろうと思った。


(今更俺も恋愛経験がないとは言えまい)




書いてるうちにほんとうに意味わかんなくなってきました。



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