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FFIのメンバーが選出されてから数日経った。周りのやつらはみんな仲良く馴れ合っているのに、俺は唯一といっていいほどイナズマジャパンに溶け込めずにいる。別に馴れ合いたいわけでも溶け込みたいわけでもないのだが、試合に出してもらえないのはそのせいなのではないか、と考えてしまうようになったのだ。なぜ俺よりも小さい、学年が下のやつらが試合に出てるのか不思議でならなかったし、その度に力不足を感じていらいらするし、なによりも彼女に情けない姿を見られるのがいやだった。
(真帝国学園のキャプテンだった俺が、ベンチ固定だなんて。)
あいつの前では常にかっこいい俺を見せられるように、今までにないくらいにがんばっているのに。それは監督に認められるどころか、あいつが見ているかもわからなくて。俺はいったい、ここで何をしているんだろうか。

小さく舌打ちをしてから、思い切り顔を洗う。水面に映る自らの情けない顔に、妙にイラつく。なにもかもうまくいかない、このままじゃあ代表を外されてしまうかもしれない。不安だ、とても。
もう一度顔を洗おうと蛇口を捻ると、「不動くん!」後ろから忙しい足音と、すこしうわずったような声がして、振り向くと。



「…おまえ、」
「あの…ドリンクを、もってきたんだけど!」



不動くん、いつも休憩時間の終わるギリギリまで戻ってこないでしょ?と明るい笑顔を俺に向ける。
こんなに優しくされたのは久しぶりで、恥ずかしいような苦しいような気持ちが胸をぐるぐると回る。相変わらず優しく微笑む彼女の笑顔が眩しくて、ボトルを無理やり受け取ってから口に流し込む。
ふう、と息を吐くと、「うおっ」彼女が間近にいてびびる。
「濡れてるよ」
顔を洗ってから水を拭うのをすっかり忘れていた。彼女は俺の首からタオルを取り去る。
やわらかく、やさしく、俺の顔中を丁寧に拭くので、いろいろと耐えられなくなって「もういい」とタオルを奪う。それがあまりにも乱暴だったのか、彼女は俯いて「ごめん」と呟く。それにまた反応して、ああだめだだめだ。「…ありがとな」誤魔化すように咳払いを交えながらそう言えば、彼女は勢いよく頭を上げて、また笑った。



「その、あのね、」
「なんだよ」
「ドリンクはついでで、言いたいことがあったの」
「言いたいこと、」

「私、ちゃんと不動くんのことみてるからね!」
「…は!?」



おまえ、それ、なんで、きゅうに、
しどろもどろに伝えれば、彼女はまた極上の笑顔でいうのだ。



「リュウジくんとヒロトくんが、不動くんにそう言ってみろって!」
「あいつらころす」

そして休憩時間に鬼ごっこが始まるのである。





不動が可哀想すぎて泣けるので。



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