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けたたましい靴音を響かせながら、全力で走ってきた彼女は、こちらを見た途端、「鬼道さん!いいところに!」と俺の背中とマントの間に隠れた。なにをやっている、と聞けば、風丸がきたらうまく誤魔化してくださいね!と小声で返された。概ねまたイタズラかなにかをして追いかけられているのだろう。毎度のことながらも、背中にある華奢な体だとか、細い息遣いだとかに緊張してしまう俺も相当なわけだ。「鬼道!」あいつがマントに隠れてから数十秒の間があいて、風丸が走ってくる。「あいつを見てないか?」と予想通りの言葉をいわれ、今向こうに駆けていったと答える。すまない、風丸。こいつをかばわなくては後が面倒なのでな。短く礼をいうと、風丸は素早く走っていった。



「危なかった…」
「今日は何をしたんだ?」
「風丸の髪があんまりにも綺麗だから、まどろんでる間にみつあみして遊んだんです」



そうしたら、あんなに怒っちゃって。彼女は悪びれもせずに無邪気に笑う。そのたびに誤魔化す俺の気持ちも考えろと咎めると、眉を八の字にさげてごめんなさいと謝る。その姿が小型犬に重なり、かわいらしいと思ってしまった。「でもね、鬼道さん」物思いに耽っていれば、彼女は顔を上げて俺をまっすぐ見つめながらまた笑う。「鬼道さんは、私の救世主なんです。だから、頼りにしてるんですよ!」ああ、やはり。ふにゃりと脱力しそうな笑みをうかべる彼女には敵わない。



「…仕方ない、助けてやろう」



その微笑を俺だけに向けてくれるのなら、喜んで。






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