バディなのにおいしそう
SIDE・T
バーナビーが自分に好意を寄せていることには、もう随分と前から気が付いていた。
それでもバーナビーの方から具体的なアクションは何もなかったし、実害は何もなかったので虎徹としては気付かぬ振りで通してきたのだ。
仕事上のパートナーとしてのバーナビーに対して全く不満はなかったし、むしろ相性がいいとすら思っていた。だから、バーナビーが自分のことを好きだとしても全く問題はなかった。
ヒーローを辞め、シュテルンビルトを離れ実家に戻ることを決めたときも、バーナビーは俺を引きとめたりはしなかった。最後だからと迫られたりしたらどうしよう、なんて考えていた俺は随分と拍子抜けしたもんだ。必然的にバーナビーと顔を合わせることもなくなり、これでバーナビーも熱が醒めるんじゃないかな、なんて考えたりもした。
一年ぶりに再会したバーナビーは、相変わらずバディとして以上の好意を自分に向けてくる。彼は気付いているんだろうか、俺に対する笑顔がやたらキラキラしていることを。それともこれは、俺の自意識過剰なのだろうか。
タイガー&バーナビーとして活動を再開することになり、以前のようにほぼ毎日バーナビーと顔を合わせるようになった。俺は以前と変わらず、なんにも気付いていない振りを貫くことにして、バーナビーもやはりなんのアクションも起こさない。
バーナビーと久々に再会して思ったんだが、俺はこいつと相性がいいらしい。四六時中一緒にいても気疲れしないし、仕事中も息がぴったりと合って気持ちがいい。
俺はバーナビーが自分に好意を持っているってことを知っているから、多少図々しいお願いもするようになった。バーナビーは嫌そうな顔をしながらも断りはしない。仕事で帰りが遅くなった時には家まで送ってもらったり、バーナビーの部屋に泊まらせてもらうことも増えた。自分のことを好きな男の部屋に泊まるなんて、自分でもどうかしていると思うが、俺はキスくらいならしてやってもいいか、なんて思っていた。もっともバーナビーは俺に対してなんの要求もしてこなかったのだが。
「く、っ……」
ドクン、とバーナビーの中で虎徹は爆ぜた。
目の前では白い長いお耳がピョコピョコ揺れていて、どうにもそれが現状から現実味を失わせる。でもこれは現実だ、夢でも俺の空想でもない。
視線を二人の接合部へと落とす。バーナビーの入口はシワが伸びきってピンと張った皮膚が俺のをぴっちりくわえ込んでいる。ゆるゆると引き抜くと中がめくれて僅かにピンク色の肉が覗いた。
やってしまった、と頭の片隅で思う反面、ついにこういう関係に持ち込めたことが嬉しくてたまらない自分がいる。
そうだ、俺はずっとバーナビーとこうなりたかった。ただ臆病な俺は自分から行動を起こすことができなくて、バーナビーがアクションを起こしてくれるのをずっと待っていたのだ。……情けないことに。
「ははっ、……悪ィ、中出ししちまった」
大して悪びれた様子もなく笑って告げると、バーナビーは振り返って虎徹を睨んだ。そんな涙の膜が張ってうるうるした瞳で睨まれても何も怖くはない。ただ、もっと苛めたいと、仄暗い嗜虐心が頭をもたげるだけだ。
「なんで……、こんなこと……」
ずっと前からこうしたかった、なんて本当のことを俺は告げるつもりはない。それは俺の薄っぺらいプライドが許さなかった。
「言ったろ?おまえからうまそうな匂いがするんだ」
繋がったまま身体を倒し、バーナビーの肩口へと歯を立てた。今度は血の滲むような噛み方はせず、ちゃんと加減する。バーナビーはびくりと肩を竦め、長い耳をピンと張った。
「……ッ、もう、満足したでしょ……、抜いて下さいよ」
可愛げのないことを言うバーナビーにイラッときて、俺は甘噛みしていた肩にきつく歯を立てる。
「あうっ……!」
バーナビーは背を反らし声を上げた。腰を掴みずるりと引き抜くと、再び最奥まで白い身体を穿つ。
「ヒィッ、あっ、ア……」
バーナビーから一際大きな声が上がり虎徹はほくそ笑んだ。バーナビーの中はもう、虎徹のものをキリキリと締め上げたりはしない。虎徹を柔らかく受け止めて、虎徹の出したものとバーナビーの腸液で中は潤い、接合部からは出し入れするたびにヌチャヌチャと粘着質な音が立つ。
「すっげぇ、奥まで入るのな……」
バーナビーの中は突き当たりが無い。ずるずるとどこまでも呑まれていくような錯覚に陥る。
「ふあ、アッ……、いや、だ……」
深く呑まれていく感覚を味わおうとゆっくり腰を引き、ゆっくりと時間を掛けて押し込むとバーナビーはブルブルと全身を震わせた。そうか、こうするのが弱いのか。他には?
「イヤだって言いながら、すっげー気持ちよさそうじゃねぇか、バニー」
長いお耳に息を吹きかけるように囁くと、ぴるぴると耳を震わせる。かわいい。目の前で揺れる耳に噛みつきたくて、でも耳に残る歯型に気付き舐めるだけに留めた。
「ひあぅっ……!や、あ、」
ガクリとバーナビーの身体が脱力して崩れてしまった。虎徹は咄嗟に腰を抱いて支えたが、バーナビーの前に触れるとどろどろに濡れている。
「何回イッてんの?バニーちゃん」
「あ……、しらない……」
掠れた声で返事をするバーナビーがたまらなくかわいくて、俺は抱き締める腕に力を込める。
「虎徹、さん……?」
「かっわいいなぁ、おまえ」
バーナビーの首筋に顔を埋めて匂いを吸い込んだ。汗ばんだ身体からはより濃くおいしいそうな匂いが香って、虎徹はバーナビーの首筋を舐め上げる。
「だめだ、全然おさまりそうにねぇわ……」
バーナビーと繋がったままの俺の半身は、硬く反り立ったまま萎む気配がない。これもNEXTの能力の影響なんだろうか。
「……おじさんのくせに」
「んだよ、お前も素直になれよ」
バーナビーは嫌がる素振りをみせるばかりでどうにも乗り気になってくれない。いや、さっきは一度、気持ちいいと言ってくれたか。しかし俺はあまり色いい返事は期待してなかった。
「なら、ベッドに行きたいです……、膝が痛くて」
バーナビからの返事は予想外のもので、虎徹は思わず頬を緩ませた。
「おう」
「それから、腕も解いてくれませんか。痛いんですけど……」
「それは、……どうしようかな?」
「……解いてくれたら、サービスしますよ」
そう笑ったバーナビーの顔はやけに艶っぽくて、俺は内心ドキリとした。いっつも涼しい顔したハンサムで、たまに熱くなることはあるけれどこれまでの付き合いでバーナビーのこんな表情は見たことが無い。
男に抱かれるときは、いつもこんな表情をみせるのだろうか。不意に胸の中に湧き上がった黒い感情を俺は打ち消した。
どうかしている。顔も見たことのない相手に、嫉妬するなんて。
俺は努めて軽く振る舞った。こんな感情をバーナビーに知られたくはない。
「サービスってなんだよ、期待しちゃうよ?」
繋がったままだった身体を離すと意外ときつく拘束していたバーナビーの腕を解いた。手首にはくっきり赤い痕が残っている。手首を掴み、回してみたり様子を確かめるバーナビーに虎徹は両手を合わせて謝罪した。
「ゴメン、バニーちゃん」
虎徹の頭に生えている耳はシュンと項垂れていて、バーナビーはあまり怒る気になれず苦笑を洩らす。
「大丈夫です。見た目ほど痛くありません」
それより、とバーナビーは虎徹へと身体を寄せた。両腕を首へと回し、熱の籠った吐息混じりに虎徹の耳へと囁きながら、頭に生えているほうの耳も指先で擽る。
「……ベッドに行きませんか。僕もまだまだ、足りません」
小悪魔のような笑みを浮かべるバーナビーに、虎徹はたまらず噛みつくようなキスをした。
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