ディなのにおいしそう
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「なっ……」

 否定しなければ、と思った。しかし咄嗟のことで言葉が出てこない。結果としてバーナビーは虎徹の言葉を肯定する形となった。どうして、いつから。虎徹は普段は鈍いので、バーナビーもすっかり油断していた。

「だいぶ前だけどさ、シルバーの繁華街で飲んでて。そんでふらりと立ち寄った店がその日はゲイナイトやってて。酔ってたし、興味本位で入ったのよ」


 虎徹の手が、抵抗を止めたバーナビーのシャツを捲り上げ胸板を撫でる。バーナビーは黙って虎徹の話に耳を傾けた。

「ゲイっつっても、見た目じゃわかんねぇよな。フツーのサラリーマンみたいな奴とか」
「……それで」

 遠回しな虎徹の話が真綿で首を絞められているようで息苦しい。バーナビーは話の続きを催促した。

「そんで、まあ、そこにお前がいたんだよ。バニー」
「……そう、ですか……」
「まぁ、そんだけじゃねぇけど、な。お前、女っ気無さすぎるし」

 シルバーステージにあるその店には何度か足を運んだことがある。まさか虎徹に見られていたとは。

「なぁ、男同士ってどうやんの?おじさんに教えてくれよ。バニーちゃん」
「ふ、あっ」

 感覚の鋭い、長いほうの耳に吐息を吹きかけながら乳首を摘まれて思わず声が上がった。親指と人差し指でグリグリと転がされて、そこに熱が集まっていく。上擦りそうになる声をなんとか抑えながら、バーナビーは口を開いた。

「……女性とするのと、大差ないんじゃないんですか?僕は女性としたことはないから、わかりませんけど」
「マジで!バニーちゃん童貞?」
「男とならありますよ」

 なんて会話をしているんだろう。しかも相手はあの虎徹なのだ。互いに耳や尻尾を生やしながらこんな行為に及んでいるなんて、これは悪い夢のような気がしてくる。しかし夢ではないと言わんばかりに、不意に虎徹に首筋に噛み付かれた。

「いった……!」

 甘噛みだとかの域は超えている。皮膚を食い破る気じゃないかという程にきつく噛まれた。バーナビーの上げた声が思いの外大きく、虎徹も噛みついていた首筋から顔を上げる。新たな噛み跡にはまた、うっすらと血が滲んでいた。

「わりぃ、どーにも加減が難しいな」

 傷痕を虎徹の舌が這う。傷口を舐められてバーナビーの背筋は震えた。そっちの趣味はないはずなのに、未知の感覚に戸惑う。言い訳するようにバーナビーは必死で自分自身に言い聞かせた……これは快感じゃない、痛みだ。

「……痛いんですけど。噛み癖があるんですか?」
「だって、いい匂いがしてさー。……あぁ、お前、兎だからおいしそうなんだよ」
「……ねぇ、僕は食糧じゃないんですよ」

 虎徹の手は胸元をまさぐりながら、もう片方の手はバーナビーの下半身へと向かう。下着をずり下ろされてバーナビーは慌てた。

「や、だ!ほんとに、やめてくださいっ!」
「だめだ、やりてぇ。なあ、お前もほんとはそんなに嫌じゃないんだろ?」

 ……図星だった。散々嫌がってはいるが、本当は行為自体が嫌なわけではない。嫌ではないけれど、虎徹とそういう関係になってしまった後が、どうしようもなく怖いのだ。

「いやだ、……いやです……」

 声が震える。口先だけでもバーナビーは抵抗を試みた。

「細かいこと考えんな、バニー。俺もお前も、発情期なんだよ。春だからさ」

 発情期だから仕方がない、そんな甘い言い訳に流されそうになる。
 下半身を剥かれ、バーナビーの白い尻が虎徹の目の前に晒された。尾てい骨がある位置には丸っこい毛の塊のようなものが鎮座している。虎徹自身にも尻尾が生えているし、バーナビーの下着の上からはみ出ていたので尻尾の存在はわかっていた。しかし丸出しになった素肌の上に存在していると本当に生えているのだとわかる。可愛らしいその尻尾を虎徹は触らずにはいられなかった。

「ふはっ、柔らけぇ」
「っ……!」

 虎徹の指先がバーナビーの小さな尻尾を下から上へと撫で上げた。そんな触れ方をされたらもう、たまらない。

「ひゃああっ!」

 悲鳴じみた声を上げてバーナビーは全身を震わせた。全身から力が抜け立っていられず、上半身を床にべたりと倒し、虎徹に腰を抱えられ尻だけを高く上げた姿勢になる。バーナビーの反応が面白くて虎徹は執拗に尻尾を撫でた。下から持ち上げるようにすると感じるらしく、両腕を拘束され自由にならない身体でずるずると前に逃げようとする。

「んあっ、うぅっ……」

 バーナビーはふぅふぅと肩で息をしていて、本当に獣のようだ。目の前でふるふる震える長い耳がおいしそうで、虎徹は尻尾を弄りながら耳にガブリと噛み付いた。

「ひ、ァッ、あっ……!」

 ぶるりと身体を震わせてバーナビーが一際高い声を上げる。ばたばたと床に落ちる雫に虎徹はバーナビーが達したのだとわかった。

「ははっ、すげぇ。尻尾だけでイッたのか」

 まだ肩を上下させて苦しそうな呼吸を繰り返しているバーナビーからは返事がない。虎徹はバーナビーの身体をひっくり返し仰向けにさせた。太股に手をかけ脚を開かせると射精したばかりのバーナビーの性器が目に入る。男性の証であるそれを見たら正直萎えるかと思っていたが、そんなことはない。身体の皮膚と同じで生白いそれを可愛らしいとすら思えた。

「なぁ、前の尻尾も弄ってやろうか」
「……なっ、……ッ!」

 宣言通り、虎徹はそれを握った。手の中で脈打つそれは自分のものよりいくらか柔らかく、認めたくないが結構でかい。まじまじと観察しているとバーナビーが腰をよじった。

「も、あんまり見ないでくださいよっ!」

 バーナビーの顔は真っ赤で虎徹はますますからかいたくなる。

「前の尻尾も可愛いなァ、バニーちゃん」
「ば、ばかっ!これだからオジサンはっ!」
「うるせぇ、あんまオジサンって言うな」

 先端をぴんっと爪先で弾かれバーナビーは声を詰まらせた。達したばかりで敏感になっているそこには刺激が強すぎて、涙を滲ませ虎徹を睨む。睨まれても虎徹はくっくと喉を鳴らして笑うだけだ。つ……、と指先で幹を辿り先端から根本へと下っていく。

「こいつも可愛いけどさあ、バニーちゃん」

 虎徹の指が幹の根本のその下にある、淡いブラウンの窪みに触れた。バーナビーのそこは虎徹を誘うようにひくりとうごめく。

「ココにいれたい、俺の」
「やっ、い、イヤですっ!」
「……おっ勃たせといて良く言うよ、お前に拒否権はねぇんだ、バニー」

 虎徹は指先に力を込めた。渇いた指先が濡れてもいないそこを無理に拡げようとめり込んでくる感覚にバーナビーの腰は逃げる。虎徹はそんなバーナビーの腰を掴んで捕らえた。

「痛いのイヤだろ?ちゃんとやり方教えろよ。バニーちゃんも気持ち良くしてやるからさ」

 逃げられなくて、バーナビーはせめてもの報いと口先で抵抗を示した。

「……どっかのAVみたいな台詞ですね、オジサン」
「うっせ、ホントは嫌じゃないくせに、しつこく嫌がるからだろ、お前が」

 最初は乱暴に押し付けてきたくせに、虎徹はバーナビーの入口が拒むのを楽しむかのように絶妙な力加減で押してくる。硬く閉ざされていたそこが緩んでくる気配が悔しくてバーナビーは唇を噛んだ。

「……どこから来るんです?その自信は」

 虎徹はニヤリと口角を上げた。

「だってお前、俺のこと好きだろ」



 
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