ディなのにおいしそう
1.2.3.4.5.6.7


「噛ませて」
「えっ……、アッ!」

 思いの外、ガリッときつく噛み付かれた。思わず声を上げてしまうほどの痛みで、バーナビーは苦痛を与えている張本人の虎徹の腕に爪を立てる。

「い、た……、やめて……」

 押しのけたいのに身体に力が入らない。本能で彼には勝てないと悟ってしまっているのだろうか。虎徹の犬歯はバーナビーの皮膚を突き破り首筋には赤く血が滲む。口の中に血の味を感じて、虎徹はますます興奮を覚えた。首筋に吸い付き、滲み出た血液を舐める。もう皮膚を食い破るほどきつく噛み付くことはしなかった。ただ首筋に吸い付きながら、虎徹はバーナビーを押し倒す。

「え……、ちょ、待って……」

 視界が回って部屋の天井が視界に飛び込んでくる。視線を下げれば首筋に顔を埋めたままの虎徹の姿が見えた。虎徹の頭では見慣れない耳がぴょこぴょこ揺れている。こんな事態なのにバーナビーはそれをかわいいと思ってしまった。一度そう思ってしまうと恐怖心はだいぶ和らぐ。

「ふふっ」

 思わず声を漏らして笑ってしまった。笑い声に反応し顔を上げた虎徹と視線が合う。彼の瞳孔はやはり縦長だった。でも琥珀色のバーナビーが大好きな綺麗な瞳の色はそのままで、バーナビーは目を細める。

「……なに、笑ってんだ」
「いえ、耳が可愛くって……」

 指摘されて虎徹は自分の頭に生えている耳に触れた。丸っこくてふわふわで、触るとくすぐったい。内側のほうを擦ると少しぞわりとした。……ならばきっと。

「お前にだって立派な耳が生えてるじゃねぇか」

 虎徹はバーナビーの頭から生えている耳に手を伸ばした。ガードしようとするバーナビーより素早く、長い耳を握ってしまうと彼はきゅっと身体を縮み込ませる。どうやら耳は急所らしい。

「なに、おまえ、耳掴まれるのヤダ?」
「う……、あ、……や、イヤです……」
「へぇ……?」

 虎徹は身体を伸ばして長い耳へと顔を寄せた。すん、と匂いを嗅いでみる。やはりおいしそうないい匂いしかしない。舌を出し、薄い内側の皮膚を舐め上げるとバーナビーは悲鳴のような声を上げた。

「ひゃ、ああっ…!やぁ、だめ、それっ!」
「ふはっ、なに?耳舐められるとどーなんの?」

 バーナビーは顔を真っ赤にして虎徹の胸を押してくるがそんなものは抵抗のうちに入らなかった。ただ煽られているだけのような気がする。虎徹は嫌がるバーナビーに構わず再度長い耳を舐めた。チロチロと擽るように舌を這わせると面白いくらいにバーナビーの身体が震える。

「ひぁん!やだ、虎徹さんっ、あ……」

 虎徹の胸を押し返していたはずのバーナビーの手は、今や虎徹のシャツをしっかりと握っていた。耳の先端を口に含み甘噛みすると嫌がるように耳が震え、それが面白くて執拗に追いかける。

「や、噛まないで……」

 楽しくてつい噛み過ぎてしまっただろうか。バーナビーの耳は少し赤くなっていて、虎徹に組み敷かれたまま翡翠色の瞳の中に涙の膜が張っている。虎徹はためらうことなくバーナビーの瞳を舐めた。

「ひゃあ!?」

 突然の虎徹の行動についていけず、バーナビーは裏返った声を上げる。二人の青の距離はとても近い。間違ったら唇が触れ合ってしまうほどの距離だ。

「なぁ、いいだろ?バニー……」

 虎徹のその言葉の意味が理解できないほど、バーナビーは奥手でもなかった。でも、まさか、彼から、そんな。

「こて……、ふ、ンッ……」

 名前を呼ぼうとした声は彼の唇に奪われた。手入れなどされていない、少しかさついた唇の感触が擦り付けられる。舌が侵入してくる気配にバーナビーは正気に返ると虎徹の肩を強く押した。虎徹の唇が離れた隙に顔を背ける。

「……いったい、どういうつもりなんです?」

 まだ潤みの残る瞳でバーナビーは虎徹を睨んだ。睨まれた張本人はへらりと笑う。

「すげぇ、いい匂いがするんだよ。お前から。兎だからかな?」
「……知りませんよ……」
「我慢できねぇ、なんでそんなおいしそうな匂いさせてんの」
「アッ、ちょっと……」

 虎徹の動きは素早かった。バーナビーの耳を両手で一纏めに握りおとなしくさせると、彼の両腕を掴み背中側へと回す。そしてしゅるりと引き抜いた自分のネクタイでバーナビーの両腕を拘束してしまった。
 そのまま背後から覆いかぶさる形で虎徹の手はバーナビーの下半身へと向かう。虎徹の手がベルトのバックルへとかかり、バーナビーは強い危機感を覚えて暴れた。

「なっ、何考えてるんですかっ?あなたは!」
「なにって、男同士でもできるんだろ?」

 虎徹からしれっとした返事が来て、バーナビーは困惑した。今更、虎徹が本気でバーナビーを食べようとしているだなんて、そんなことは思わない。しかし、別の意味で僕は今、食べられようとしている。

「む、無理です……」

 バーナビーの声が震える。虎徹の手はバックルを外し、バーナビーのジッパーを下ろした。

「無理ってこた、ないだろー。お前のここ、パンパンじゃねぇか」

 指摘されて顔から火が噴きそうになる。虎徹の手が下着の上からバーナビーの性器を握った。

「ははっ、パンツ濡れてんじゃん、お前」
「いっ、言わないで……」

 虎徹の言う通り、バーナビーの下半身はすでにぐずぐずの状態だった。下着の上から膨れた性器を揉まれて与えられる快感に流されそうになる。

「も、やだ……、離して、ください」
「やだね」

 弱々しい声での抵抗は逆効果だったらしい。虎徹は下着の中に手を忍ばせ直に性器を握り込んでくる。

「ははっ、すげぇ、どろどろ」
「っ……!」

 敏感な先端に触れられてひゅっと喉が鳴った。親指の腹で鈴口を撫でられて足の力が抜ける。

「も、やめてください……。あなた、そっちの趣味があったんですか」
「ねぇよ、俺女の子大好きだもん」
「だったら……!」
「けど、お前は男もイケるんだろ?」

 虎徹の言葉に抵抗していたバーナビーの動きがフリーズした。頭から冷水を浴びせられたみたいだ、全身の血液が一気に冷える。



 
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