ンサムな彼女
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SIDE・B


どうしてこんなことになってしまったんだろう。結局男でも女でも、虎徹さんは僕に振り向いてはくれないのか。
僕が男だから駄目だというのなら、女になれば障害は無くなるのかと思っていた。なのに、今度は好きな人がいると言う。どんな人かと尋ねた僕に語ってくれた虎徹さんは、目尻に皺を浮かべ幸せそうに微笑んでいた。彼が好きな人というのは亡くなった奥さんのことだろう。今でも彼女を愛しているというのか。だったら、最初からそう言ってくれればよかったのに。
最初から何の望みもないとわかっていれば、こんな馬鹿げたことはしなかったのに。虎徹さんに振り向いてもらおうと、こんな女の格好までして。とんだ道化だ、僕は。

「……最後に、キスしてくれませんか」

それは賭けだった。
バーナビーが瞳を閉じて待つと、虎徹は額にキスをした。予想通りの行動で、とても虎徹さんらしいと思う。でも、こんな子供にするようなキスで終わりだなんて。
虎徹の頭を抱き、バーナビーは自分から唇を重ねた。驚いて、肩を押し返そうとする虎徹に全体重をかけソファーへと押し倒す。身体は女になっても身に付いた体術まで失ったわけではない。バーナビーは虎徹の上に馬乗りになると邪魔なバスローブを脱ぎ捨てた。
どうしようかと一瞬躊躇したが虎徹のベルトに手をかける。当然、虎徹の手が制止しようと伸びてきた。その手を掴まえて自分の乳房を握らせる。

「……子供扱いしないで下さい。あんなキスじゃ、物足りない」

もう可愛いうさぎの役を演じるのはやめてしまおう。僕は欲しい物を手に入れる。虎徹さんの心が手に入らないというのなら、体だけでも手に入れよう。女の体の今ならば、それは可能なはずだ。
虎徹の上に跨がったバーナビーはキャミソールの肩紐をずらした。その下にブラジャーは身につけていない。キャミソールはカップ入りのタイプで単体でも問題なさそうだったし、揃いのブラジャーは肩紐が外せないタイプで肩紐が二本になるのは見た目が悪く嫌だったのだ。肩紐が二の腕を滑り落ち乳房が片側だけあらわになる。

「抱いてください、虎徹さん。もう最後だというのなら、そのくらい、いいでしょう?」

上体を前に倒し彼の耳元に囁いた。ぺろりと耳を舐めれば、虎徹さんの身体が小さく震える。可愛い。でもそう思ったのも束の間、僕は彼の股間が膨らんでいるのに気付いてしまった。

「あ……」

そして、気付いたことに気付かれてしまった。

「クソッ……」

強い力で押されて、体重の軽い僕は簡単によろめいてしまう。やはりウエイトの差は大きい。バランスを崩して二人揃ってソファーから転げ落ちた。床に仰向けになった僕の上に虎徹さんが馬乗りになり形勢は逆転する。このまま拒絶されて終わるのかと思ったその時、彼の声が頭上に降ってきた。

「可愛い子兎ちゃんかと思ったら、とんだ雌兎だな。誘惑しやがって」

……どうやらまだチャンスはあるらしい。どう答えれば彼をその気にさせられる?バーナビーは必死で考えを巡らせ、可能性に賭けることにした。

「……猫被ってたんですよ。そのほうが虎徹さんの好みかと思って」

僕は彼を挑発することを選んだ。唇を三日月形にして笑みさえ浮かべてみせる。

「そんなに抱いてほしいなら、抱いてやる」

噛み付くようなキスが降ってきて、僕は自分が賭けに勝ったことを知った。

二人は、ベッドのある鏡の向こう側の部屋へと足を踏み入れた。
バーナビーも仮眠を取るために利用したことはあるが、こうして誰かとこの部屋に入るのは初めてだ。部屋の中央に鎮座するベッドを目の当たりにして情けないことに足が竦んでしまう。
次の瞬間、身体がふわりと浮き上がった。立ち止まったバーナビーを虎徹が抱き上げたのだ。綺麗にベッドメイキングされたシーツの上に落とされ、ベッドのスプリングで身体が弾む。仰向けになったバーナビーの胴を跨いで虎徹が馬乗りになってきた。

「あの、シャワーは」
「必要ねぇ」

駄目元で申し出た言葉は最後まで口にする前に却下されてしまった。虎徹の両手が胸の膨らみへと触れバーナビーは身体を強張らせる。キャミソールの上から両手で乳房を握られて背がしなった。

「んっ……」

胸を揉みしだく虎徹の力は強くて痛みが走る。眉間に皺を寄せ虎徹を見上げれば、彼は唇の端を吊り上げて笑った。

「うさぎちゃん、細いくせにおっぱいでかいなァ」

笑みを浮かべたままの顔で、虎徹はキャミソールを左右へと引いた。レースとシルクで仕立てられた繊細な作りのキャミソールは簡単に左右に裂け、白い乳房が剥き出しになる。バーナビーの顔に怯えの色は浮かんだが、悲鳴を上げることはかろうじて回避した。遮る物が無くなった乳房を直に虎徹の手が握り、桜色をした先端へと吸い付く。ぴくりと長い睫毛が震えた。

「ンあっ……」

経験したことのない刺激に鼻に抜けた声が漏れ、その声がとても大きかったような気がして慌てて手の平で口元を塞ぐ。その反応を嗤いながら、虎徹は小さな乳首を口に含んだ。口の中で舌で転がすうち硬く芯を持ち、ツンと上を向いたそれを前歯で甘噛みするとバーナビーの身体は小さく跳ねる。

「んっ、ふ」

口を押さえて声を殺しても、くぐもった声が漏れるのは止められない。乳首からビリビリとした刺激が全身に走る。

「乳首弱いんだ、気持ちい?」

虎徹に問われて、この刺激は快感なのだと知った。虎徹さんの言う通り、気持ちいい。でも、こういう時はどう答えるのが正解なんだろう。この一ヶ月、男を夢中にさせる手練手管は学んできたが、ベッドでの所作なんて全くわからない。ファイヤー・エンブレムとヨーコさんにそれとなく相談を持ち掛けたこともあるがアドバイスらしいアドバイスなんてもらえなかった。
バーナビーが戸惑っている間も、虎徹は手を休めない。片側は乳房を揉みながら乳首を吸われ、もう片方は指の間に乳首を挟まれクニクニと弄りながら揉んでくる。虎徹の手つきは相変わらず乱暴で乳房に痛みは走るが、乳首に与えられる刺激には電流が走るみたいに身体が痺れた。無意識のうち太股を擦り合わせてしまう。

「なに下半身モゾモゾやってんだよ」
「ん、アッ……!」

口に含まれた乳首をガリッと奥歯で噛まれバーナビーの身体が大きく跳ねる。虎徹の手が胸から離れどうするのかと見上げていると、虎徹は腰を浮かせ膝立ちになり自分のパンツのファスナーを下ろした。次の段階を予想してバーナビーはほんの少し後ずさる。



 
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