ンサムな彼女
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その日の午後、トレーニングセンターのランニングマシーンで坦坦と走るバーナビーの姿を虎徹は眺めていた。当然バーナビーに胸などない。大体、いくら顔が似てるからってうさぎちゃんはこんなに身長でかくないし、おっぱいは大きいし。

「なんですか、ジロジロと。セクハラで訴えますよ、おじさん」

虎徹の視線に気付いたバーナビーから痛烈な一言が飛んできた。そうだ、なによりうさぎちゃんはこんな酷いことは言わない。
それでもやはり、二人は似ている。翡翠色の瞳の色は同じだし、ハニーブロンドの髪の色も同じだ。

「なぁ、バニーちゃん。生き別れの妹とかいねぇの?」
「……は?いませんよ」
「だよなぁ……」

バニーちゃんから返って来たのはわかりきっていた否定の言葉だった。
だけど俺は、バニーにそっくりなうさぎちゃんのことが忘れられない。
数日後、結局俺はあの店にもう一度行ってみることにした。アントニオも誘ってみたが、前回俺がアントニオのことを置いて帰ったのを恨んでいるようで、あの店には絶対に行かないと断られた。何かあったんだろうか。
前回はネイサンやアントニオも一緒だったが、一人だと居心地が悪くて引き返してしまいたくなる。黒服に個室まで案内されて、一人で待つようにと告げられた。本当にタダでいいのかと念を押してしまうあたり俺は小心者だ。こんな高そうな店、支払いを請求されたってとても払えそうにない。
少しだけ待たされてうさぎちゃんは部屋へとやってきた。彼女の蕩けそうな笑顔を見て、やはり来て良かったと心の底から思う。
うさぎちゃんとの会話は今日も盛り上がった。そんな中、俺は彼女に一つだけお願いをした。バスローブを着用してもらったのだ。下着姿の彼女は本当に魅力的なのだが視線のやり場に困るし、俺の息子が反応してしまっても困る。
バスローブを身につけたうさぎちゃんの姿に俺はホッとしたが、すぐに後悔した。座って話しているうちに前がはだけてきて、隙間からおっぱいが見えてしまうのだ。これはこれでエロくて、俺は心底困ったのだがどうにかしてくれとも言い出せない。だってそんなことを口にしたら意識しているのがばれてしまう。
うさぎちゃんは最初、ネイサンに倣ったのか俺のことをタイガーさんと呼んでいたが、この日から「虎徹さん」と呼ぶようになった。鈴の鳴るような声で名前を呼ばれるとなんだかとてもくすぐったい。
酒に酔ったのか、うさぎちゃんが俺にもたれてきて柔らかな胸が俺の腕へと押し付けられた。ついつい鼻の下が伸びてしまったが、俺はそっと彼女の肩を押し返す

「酔っちゃったのか?今日はもう、そろそろ帰るよ」

帰ることを告げるとうさぎちゃんは一瞬悲しそうな顔をした。泣くかと思ったが、にっこり笑ってくれたので俺はホッとして、それでつい油断してしまった。
甘い香りのグロスに包まれた柔らかな唇が俺のかさついた唇に触れる。
また来てくださいね、と言われ俺はフラフラと店を出た。
これはマズイ、頭の中で警告音が鳴り響いているのがわかる。
うさぎちゃんは俺のことが好きだ。これは、俺の勘違いなんかじゃない。



 
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