ンサムな彼女
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※虎兎・コテにょバニです。
※バニーが一時的に女体化します。
※R18部分はコテにょバニです。
※ストーリー上必要だったので架空キャラが何人か出てきます。名前は適当なのであまり気にしないでください。



「じゃあ、また明日な、バニー」
「ええ、お疲れ様です」

ここはジャスティスタワーにあるヒーロー専用のトレーニングセンターだ。
ヒーローたちは出動要請があるまでいつものように待機していたのだが、結局何も事件は発生せず平和な一日が終わった。
虎徹とバーナビーは何気ない挨拶をして別れたが、そんな二人の様子はここ数日どこかおかしい。特にバーナビーは覇気がなく沈んでいるように見受けられる。お節介かと思いながらもバーナビーが一人になるのを見計らい、ネイサン・シーモアは声を掛けることにした。

「ハンサム、ちょっとこの後、飲みに行かない?二人っきりで」

断られるかと思ったが、バーナビーはあっさりとネイサンの誘いに乗った。もっとも、ヒーローになり立ての頃と違いバーナビーはだいぶ人当たりが良くなったし一緒に飲みに行ったことも一度ならずある。しかし二人で飲みに行くのは初めてのことだった。
ネイサンがバーナビーを誘ったのは彼女が経営する秘密クラブのうちの一つ。いわゆる、酒を飲みながら女性が話し相手になってくれるような店だ。だが、こういう店に疎いバーナビーでもこの店がかなり特殊な部類に入るということは一目で理解することができた。

「うふ、ハンサムには少し刺激が強すぎるかしら?」
「いえ、そんなことは……」

言葉とは裏腹に、バーナビーは頬を僅かに赤く染めながら視線を泳がせる。

ネイサンがゴールドステージの一画に所有するビルの最上階にその店はあった。高速エレベーターで店舗のあるフロアまで上がり、エレベーターの扉が開くとまたすぐに重厚な扉に遮られる。その扉をネイサンは網膜認証により開いた。セキュリティの高さにバーナビーが驚いていると、ネイサンは片目をつぶってみせる。

「念のためよ。ここに来るお客様は大物ばかり。中には常に誰かから命を狙われているようなお客様もいる……かもしれないワ」

ネイサンに続き、バーナビーも店内へと足を踏み入れた。
一歩足を進めるたびに靴底の沈むカーペット、落ち着いた照明の光源は天井から吊された見事としか言いようのない豪華なシャンデリア。店内の調度品も趣味が良く、育ちの良いバーナビーには一目で内装に掛けられた金額が尋常ではないことが理解できた。
バーナビーが目を瞠ったのはそれだけではない。二人を出迎えた女性たちは全員下着姿なのだ。まともに直視することができずバーナビーが視線を反らすのを見て、ネイサンはくすりと楽しそうに笑う。

「ようこそ、CLUB HALEKULANIへ。天国に相応しい館、その名前に恥じないワタシの自慢のお店よ」

先導するネイサンの後をついて店内を歩いていく。円形のフロアの周りには放射状にいくつもの扉があり、入口から一番奥に位置する部屋にバーナビーは通された。
ネイサンとバーナビーに続き、二人の女性も同じ部屋へと入ってくる。

「失礼します」

にこりと笑みを浮かべ会釈をした女性に、バーナビーも反射的に愛想の良い笑みを浮かべて応対した。栗色のストレートロングヘアのその女性もやはり下着姿で、ブラジャーとショーツの他には何も身につけていない。視線のやり場に困り目を反らそうとしたバーナビーだったがしかし、隣に腰かけた女性の顔を見て首を傾げた。この女性とは初対面のはずなのにどこか見覚えがあるのだ。

「あの……どこかで?」
「あらやだ、ハンサムったら。そんな常套句」

向かいの席に腰掛けたネイサンからすかさずツッコミが入る。自分でもそう思ったが、しかし確かに見覚えがある。
記憶の糸を辿ろうとするバーナビーにネイサンはにんまりと笑った。

「見覚えがあるのも無理はないわ、だって彼女の出てるCM、毎日のように流れているもの」

見覚えがあるはずだった。彼女は最近大手化粧品メーカーのCMに起用された、売り出し中のモデルにそっくりなのだ。

「まさか」
「本人よ」

バーナビーの思考を先読みして彼女はにこりと答える。

「私の名前はアリシア。覚えて頂けると嬉しいわ、バーナビーさん」

彼女に差し出された手を握り返すとき、バーナビーはニコリと笑顔を浮かべ彼女の瞳を見つめながら一瞬だけ強く握った。
アリシアの頬が仄かなピンク色に染まる。
その様子に気付いたネイサンは小さく肩を竦めた。バーナビーはわざとやっているわけではないのだろう、しかしこれでまた一人彼のファンが増えたに違いない。
“タイガーは天然タラシだけど、ハンサムは計算が身についちゃってて自然に出ちゃうのね。”
肉厚な唇をムニュッと微笑ませ、綺麗に爪が整えられた指先を机の上に用意されたグラスへと伸ばした。

「まずは乾杯しましょ」

ネイサンの隣に腰掛けていた黒髪のショートカットの女性が、全員のグラスへワインを注いでいく。グラスを傾け四人で乾杯した。

「自己紹介が遅れたけど、ワタシはヨーコ。よろしくね」

外見と名前から察するに虎徹さんと同じ日系人だろうか。そのことに感心を持ち彼女に話しかけようとした矢先に、隣に座るアリシアが僕に腕を絡ませてきた。僕の腕に彼女の豊かな胸が押し付けられる。
なるほど、下着姿でこんなことをされたら大抵の男なら陥落するに違いない。だけど残念ながら、僕は虎徹さんにしか興味がない。かといって押し返すのも失礼だろう。
弱ったバーナビーが肩を竦めてネイサンに視線を送ると「私のハンサムにくっつくんじゃないわよ、離れなさい」とアリシアを叱ってくれた。アリシアは腕を解いてくれたが全く悪びれた様子はない。ワイングラスを傾けながらにこにこと話しかけてくる。

「この店の女の子たちは、私みたいに芸能関係の子が多いの。モデルの卵、女優の卵。中にはアーティストの卵、なんて子もいるけど」

アリシアの言葉を受けてネイサンが言葉を続けた。

「この店はただの高級クラブじゃあないの。客は金を余らせているような大物ばかりで、ここで気に入った女の子に出会えば投資をする。つまり、スポンサーと、スポンサーを求める女の子たちの橋渡しをしてるってわけ」

説明を受けてバーナビーはネイサンの隣に座っているヨーコと名乗った女性へと視線を向けた。失礼だとは理解しながら、つい観察するような視線を送ってしまう。彼女はどう見ても三十は過ぎているだろう、日系人は若く見えるからもしかするともっと年上なのかもしれない。彼女も芸能人かなにかの卵なのだろうか。
バーナビーの視線に気付いたその女性がニコリと笑う。無躾な視線を送ってしまったことを謝罪すると気にしてないわ、と笑った。

「彼女は違うわよ。そうね、ワタシのお仲間みたいなものかしら」
「お仲間ってなによ、アンタと一緒にしないでちょうだい」

言葉はきついが、砕けた口調から二人が親しい仲なのだとバーナビーは察した。

「こいつ、奥さんも子供もいるくせに、女装癖があるのよ」

ネイサンの言葉にバーナビーは少しばかり驚いた。やはり下着しか身につけていないその人には、大きな胸がある。脚はすらりとしていて体毛も無く、どう見ても女性にしか見えない。なのに妻子持ちだというのだ。

「気になる?下半身もちゃんと女の身体なのよ。バーナビーになら特別にタダで見せちゃう」

彼女?に手を掴まれてバーナビーの背筋をゾワリと恐怖が走った。補食されそうだ、と本能が察したのかもしれない。

「やめなさい、悪ふざけは。ハンサムが引いてるじゃない」

再びネイサンから助けが入り、情けないことに安堵する。

「こいつはね、そういうNEXTなの。女の身体になれるのよ。そして、自分以外の人間も女にできる」
「勿論、制限はあるけどね」

ようやくバーナビーは事情を理解した。自分自身もNEXTなので人のことは言えないが、それにしても様々なNEXTがいるものだ。

「さっき話した芸能人の卵、みたいな子たちの他に、彼女みたいな女の子も何人かいてお店を手伝ってもらってるの」
「ワタシの能力で女の子に変身した子たちね。ワタシみたいにただ女装好きって子もいるけど、大半は本当に女の子になりたいって子よ。ワタシの能力で女の子になれるのは半径50メートルくらいが限界。だからこの店の中くらいは大丈夫だけど、本当に女の子の身体になりたかったら手術するしかないわ。そのためにはお金がいるからね」

そこでネイサンはグラスを置いた。室内に一瞬の静寂が訪れる。

「さて、と。前置きが長くなっちゃった。ハンサムと大事な話があるから二人っきりにしてもらえる?」




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