月22日
1.2.3.4



「……どうして、僕が近付くのが嫌なんですか?」
「それは……」

虎徹さんは口ごもる。

「ちゃんと話してくれないとわかりません。そちらには行きませんから、話してもらえませんか?」
「バニー……」

ロフトの上からは鼻をすする音が聞こえた。
本当は今すぐ虎徹さんの元に行き、具合が悪いというならば看病してあげたい。しかし彼は僕が近付くことを頑なに拒絶する。
なにか僕に近付かれたくない理由があるんだろうが、虎徹さんの話から推察すると、考えたくはないが最悪な事態を思いついてしまった。

「……もしかして、虎徹さん……、そのネクストになにかひどいことをされたんじゃ……」

虎徹さんはかわいい。虎徹さんはセクシーだ。
その魅力はアイパッチをしていても隠し切れるものではない。
特に僕と関係を持つようになってから、虎徹さんのフェロモンは増大している。
虎徹さんに近寄る虫けらどもを虎徹さんに気付かれぬよう追い払うため、僕は日々苦労している。もっともその苦労は虎徹さんを守るためと思えば、ちっとも苦ではない。
具合の悪いふりをして虎徹さんに近付いたその男は、最初から虎徹さんを狙っていて待ち伏せていたのではないか。
そしてネクスト能力で虎徹さんの自由を奪って虎徹さんのことを……。

「あー、ちがうちがう!なんもされてねーから!」

バーナビーから放たれる殺気に気付き、虎徹は慌てて否定した。

「……本当、ですか?」
「マジだって、ちゃんと逃げたよ」

逃げた、ということはやはり襲われそうになったのだ…!
怒りが湧き上がるが、しかしまだ虎徹の話は終わっていない。

「……でも、何らかの能力は受けたんですよね?その男はなんて言ってたんです?」
「それは、その……、だなぁ」

虎徹さんははっきりしない。僕は焦れて再び階段に足を掛けた。
そういえば虎徹さんは頭から毛布を被って顔だけしか見えない状態だった。僕の第六感が怪しいと告げている。

「……もしかして、その毛布を脱ぐとどうなるんです?」
「やっ、そ、それは……」

僕の勘は正しかったようだ。虎徹さんの慌てぶりは異常だ。
僕はもうためらわずに階段を上った。最初からこうすればよかったのだ。
逃げ場を失った虎徹さんは毛布を被ったままベッドの隅へと逃げていく。僕は虎徹さんを追いつめて毛布を掴んだ。

「だ、だめだって!マジ勘弁して、バニーちゃんっ!」

僕は容赦なく毛布を剥いだ。毛布の下の虎徹さんはパジャマを着ていて、なんら変わった箇所はどこにも見当たらない。
バーナビーは首を傾げ、それでもどこか感じる違和感の正体に気が付いた。虎徹は両手で頭を覆っている。それはなにか隠しているように思えた。

「虎徹さん」

バーナビーの手が頭へと伸びると、虎徹はその手をかわした。……怪しすぎる。
バーナビーは容赦なく虎徹の手首を掴んだ。

「も、本当に許してって!こんなのお前に見られたら俺……」

虎徹はすっかり泣きべそをかいている。それでもバーナビーは虎徹の手を彼の頭から引き剥がした。

「……これは……」

虎徹の手の下から現れたもの、それは耳だった。
耳といっても人間の耳ではない。ふさふさと黒い毛の生えた三角形の……これはネコミミというものではないだろうか。
バーナビーはくすっと笑った。

「なんですか、これ。よくできてますね」

虎徹がどうしてそんなものを付けているのかはわからない、しかし飾りだろうと指先で触れると虎徹はクスクス笑いだした。

「や、くすぐってーよ、バニー……」
「……くすぐったいわけないでしょう?どうしたんです?これ」

バーナビーは耳を緩く掴んだ。本当によくできている。バーナビーはあまり猫に触れたことはないが、精巧にできていると思った。

「ちょ、痛いって、引っ張んなよ」

少し引っ張ると虎徹は嫌がって逃げ、かばうように耳を隠してしまった。バーナビーは不思議そうに首を傾げた。

「……その耳は、飾りではない?」

そんなはずはないと思いながら、もしかしてと尋ねてみると虎徹は頷いた。

「……気持ち悪ィだろ、いい年したおっさんがネコミミ生やしてる、なんて」

ほんの少しの間、バーナビーはフリーズした。

虎徹さんに、ネコミミが生えている。

しかしバーナビーの立ち直りは早かった。ネコミミが生えている、ということはもしかして。

「……虎徹さん、もしかして、しっぽも生えてるんですか?」

虎徹の肩がびくりと震える。この人は本当に嘘がつけない。
僕は確信して虎徹さんに迫った。

「生えてるんですね?見せてください」
「ええっ、……バニーちゃん、そういうの好きなの?」

僕はコスプレというものに興味を持ったことがない。
しかしネコミミを生やした虎徹さんは本当にかわいい。この上しっぽも生えているというのだ、それはぜひとも見てみたかった。

「見たいんです、どんなしっぽが生えてるんですか?」

虎徹さんは溜息を吐いて、ゆっくりとパジャマのズボンを下ろし、僕の方にかわいらしいお尻を向けた。

「……満足したか……」

それは僕の目の前でゆらゆらと揺れていた。
長くて細く、真っ黒な尻尾だった。先は少し曲がっている。指先で触れると少し引っかかった、鍵尻尾というやつだ。
尻尾のせいで下着は上まで上げられないらしい、中途半端な位置で止まっている下着の上から尻尾ははみ出していた。
僕は指先で下着を下げ、どこから生えているのか観察した。尻尾は尾てい骨の位置から生えている。尻尾をつ……と指先で撫でると、丸見えになってしまっているお尻の穴があきゅっと締まるのが見えた。
僕の喉がゴクリと鳴る。

「あっ、もう、いいだろ、バニーッ!」

あたふたと逃げ出した虎徹さんの細い腰を僕は両腕で抱き締めた。勿論逃がすつもりはない。



 
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