It's a Wonderful Life
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「おい、バニー。そろそろ起きろって」

バーナビーは虎徹の声と共に、肩を揺さ振られて目が覚めた。

「んぁ……、あれ、虎徹さん…?」

どうして虎徹さんが僕の部屋にいるんだろうか。
いや、ここはどこだろう……ここは僕の部屋じゃない。
バーナビーは虎徹の部屋のソファーで眠っていた。

「いつまで寝ぼけてるんだ?今日は一日中取材責めなんだからな、おまえのせいで」

ああ、そうだ。僕はヒーローに復帰して、それで……。
そこでようやく、バーナビーは昨日の出来事を思い出した。
慌てて自分の身体を確認する。
胸には本来の自分にはないはずの、柔らかな膨らみが確かにあった。
昨夜、バーナビーはバスルームで意識を失ってしまった。その後の記憶はないが、虎徹が処理してくれたのだろう。
自分から誘ったくせに気絶してしまうだなんて、本当に最悪だ。申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。
いっそのこと夢であればいいと思ったけれど、脚の付け根の間に残る、何ともいえない異物感が昨夜の行為が夢ではないとバーナビーに突き付けた。
……どうしよう、虎徹さんの顔が見れそうにない。
ソファーから身体を起こし、朝食の支度をしているらしい虎徹の背中へと視線を向けると、霞みがかかったようにだが彼の姿がはっきり見えて、コンタクトを入れたまま寝ていたのだと気が付いた。

「おはようございます、バーナビーさん」

突如掛けられた明るい声に、バーナビーの肩は文字通り跳ねた。
声を掛けてきたのは楓だった。
楓はもう着替えも終え、すぐに出掛けられそうな格好になっている。

「……おはよう、楓ちゃん」

そうだ、虎徹さんと二人きりというわけではない。ここには楓ちゃんがいる。
昨夜は楓に邪魔されたくなくて一服盛って眠らせたくせに、今は楓がいてくれて有り難かった。
バーナビーは苦笑を隠し、心の中で楓に謝罪しつつ微笑みを浮かべた。

「バーナビーさん、おとーさんに変なことされなかった?」
「え……」

そう来るとは想定していなかった質問に、バーナビーは一瞬固まってしまう。

「だって、バーナビーさん、凄くかわいいんだもん!」

不意に苦い顔をしている虎徹と目が合い、バーナビーは不安でたまらなくなった。
どうしよう、虎徹さんは昨夜のことを後悔しているんだろうか。
楓の手前、不安を押し隠し顔面に笑顔を貼付けた。

「大丈夫ですよ、虎徹さんもさっさと眠ってしまいましたから。ね、虎徹さん」
「……おぅ」

同意を求められ虎徹はバーナビーから視線を反らし、ぽりっと頬を掻いた。
昨夜バーナビーが気絶してしまった後、激しい自己嫌悪に襲われた。
いい歳して手加減できずに気絶させちまうなんて。
せめてもの罪滅ぼしのつもりで、シャワーで身体を流した後、できるだけ丁寧に髪も乾かして自分のパジャマを着せた。
結構な重労働だったが、女の子になったバーナビーは小柄で軽くて助かった。
だが、サイズの合わない男物のパジャマ姿のバーナビーは目の毒だ。
楓がいなければとっくに押し倒している。
虎徹はバーナビーに近寄って、楓には聞こえないようにぽそりと囁いた。

「早く着替えちまえ。……襲いたくなる」

不意に耳元で囁かれた声にバーナビーは目を見開いた。
時間差で顔がカーッと熱くなる。
どうしようどうしようどうしよう。
心臓がドクドクと早鐘を打ち、バーナビーは軽くパニック状態に陥りそうになった。
どうしよう、抱き着いてしまいたい。
しかしすぐ隣には楓ちゃんがいる。
バーナビーは不審に思われる前に素早く立ち上がった。

「すみません、バスルームお借りしますね」

バスルームに逃げ込んで、熱めのシャワーを浴びた。
昨夜、僕はここで虎徹さんと結ばれたのだ。
あの壁に押し付けられて、繋がった。
思い出すと顔だけでなく身体まで火照りそうで、バーナビーはその壁から視線を背けた。
邪念を頭から追い出してしまわなくては。
これから男の自分に戻って、今日は山のような取材をこなさなければならない。
今日からまた、ヒーローとしての生活が始めるのだ。
タイガー&バーナビーとして、虎徹さんと二人で。
また二人でコンビが組めるのだ。
……なんて幸せなんだろう。

シャワーを済ませると、いつもの服を身につけた。
黒のトップスに、パンツは流石に緩いけれどベルトでウエストを締めて調整した。パンツの裾は折り返す。
いつもの服を身につけたのに、どうにもしっくりこないが仕方がない。サイズが全く合わないのだ。
鏡を見るとトップスだけではどうにも胸が目立ってしまって、ライダースも身につけることにした。



 
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