It's a Wonderful Life
少なくとも今、虎徹さんは僕を求めてくれている。
虎徹さんの気が変わらないうちに、行動を先へ進めなければいけない。
「……虎徹さん」
「ん?なんだ、バニー」
体を密着させたまま、上目遣いで見上げれば虎徹は少し照れたように笑った。
あと、もう一押し。
「ブラジャー、外してもらえませんか。うまく外せなくて」
バーナビーが視線を外しながら訴えると、虎徹の体が少し強張った。
「お…、おう……。そうだよな、外すの難しいよな」
そう言いながら虎徹はあっさりとブラジャーのホックを外した。
既婚者な上に虎徹の年齢を考えれば手慣れていて当たり前なのだが、少し妬ける。
ブラジャーを外して胸元があらわになると、虎徹の視線が泳いだ。
「どうしました?」
女性の裸なんて見慣れているだろうに、今更どうしたというのだろうか。
「いや、その……、おまえ、恥じらいとかないの?さっきまで、脱ぐの渋ってたじゃん」
相手が虎徹だからだろうか、裸を見られることには慣れていてバーナビー自身にはそれほど抵抗がなかった。
けれど、虎徹にしてみればいつものバーナビーの体とは違うので、気恥ずかしさがあるのだろう。
バーナビーが脱ぐのをためらっていたのは、裸を見られるのが恥ずかしいからではない。
そんな理由ではないのだが、できれば気付かれたくはない……。
虎徹が気付かないことを願いながら、バーナビーはスカートと下着を一緒にまとめて脱いだ。
下着はスカートの中に丸めて隠してしまう。
バーナビーが脱ぎ終えたのを見て、虎徹も下着を脱いだ。
あらわになった虎徹の下半身をバーナビーはしげしげと見つめてしまった。
自分のとは違う色、形……。
「ちょっと、バニーちゃん。そんなに見つめたらおじさん恥ずかしい」
そう言って虎徹はタオルで前を隠してしまった。
脱いだ下着や靴下を洗濯機に放り込みながらバーナビーを振り返る。
「あ、バニーちゃん。下着、洗う?」
嫌な予感がしていたが、まさかここでそうくるとは。
「いえ……、結構です。捨ててしまいますから」
バーナビーが辞退すると虎徹は唇を尖らせた。
「えー、捨てちまうの?勿体ない」
「勿体なくありませんから、ほら、お風呂行きましょうよ、虎徹さん」
かたくななまでにバーナビーに拒まれて、虎徹はようやくあることに思い当った。
虎徹の顔にニヤリとした笑みが浮かんだのを見て、バーナビは半歩下がる。
「な、なんですか……」
「なんでもねーよ、風呂入ろう、バニー」
手首を掴まれて抗えないまま、二人はようやくバスルームへと入った。
バーナビーは下着を見られなかったことにほっとしつつも、虎徹の先ほどの笑みが気になって仕方ない。
バスルームへ入ると虎徹は出しっぱなしだった湯を止め、くるりとバーナビーを振り返った。
「バニー」
「はい……」
虎徹が半歩踏み出すと、バーナビーが半歩下がる。
しかし狭い浴室内で、バーナビーはすぐに逃げ場を無くした。
背中にひやりと冷たいタイルが張り付き身震いする。
「誘ったのはおまえだろ、逃げるなよ」
「……逃げてません」
「そう?」
腰に腕を回されて、二人の体が密着した。
素肌で抱き合うことは勿論初めてで、とてもドキドキする。
バーナビーは恐る恐る虎徹の背中へと腕を回した。
「……怖い?」
「怖くなんか……」
そう答えるバーナビーの声は小さく震えている。
「うそつき」
虎徹は小さく笑って、バーナビーの腰を強く引き寄せた。
バーナビーの下腹部あたりに虎徹の股間が触れる。
バーナビーの肩がピクリとはねた。
そのまま、虎徹の手は腰からお尻へと下がり、さらにバーナビーの足の間へと滑っていく。
バーナビーは硬く目を閉じて虎徹の肩口に赤くなった顔を押し付けた。
「……濡れてる」
指摘されて、ますます顔が熱くなる。
「下着、汚しちゃった?だから、俺に見られたくなかったんだろ」
死にたい!
もう死ぬほど恥ずかしい!!!!
バーナビーの身体が青く発光しバーナビーが能力を発動しかけたのに気付き、虎徹は慌ててバーナビーを力いっぱい抱き締めた。
「わっ!バカ、早まるなって!悪かった、俺が悪かったから!!」
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