It's a Wonderful Life
ふと思い付いて、バーナビーは駄目元で提案した。
「虎徹さん、バスルームに行きませんか?」
「えっ……」
「一緒に入りましょう。……僕の裸、見たくないですか?」
「そりゃ、見たいけど……」
バーナビーからの提案はとても魅力的だった。
それでも、理性がどうしても邪魔をして素直にそうしようとは言えない。
「今日限りなんですよ、この体。セックス、してみたくないですか?……処女ですよ」
虎徹は思わず吹き出した。
「ふはっ、処女がそんな誘い方するかよ」
「だって、あなたがなかなかYESと言ってくれないので」
バーナビーはくすくす笑いながら、でも目だけは本気で虎徹に問いかけた。
「それで、返事は?」
虎徹はようやく観念した。
「OK、バニーちゃん。俺とメイクラブしようぜ」
虎徹はバーナビーに向かって腕を伸ばすと、軽々と抱き上げた。
お姫様抱っこでバスルームへと向かう。
バーナビーは虎徹の首に腕を回し、おとなしく運ばれた。
「……いつもと逆ですね」
「いつもって、二回だけだろ、おまえにお姫様抱っこされたの」
バスルームまでの短い道中もキスを交わした。
到着し、バーナビーをそっと下ろすと虎徹は蛇口を捻ってバスタブに湯を張り始めた。
湯を溜めながら服を脱いでいく。
下着を脱ごうとして、虎徹はバーナビーがまだブラウスとタイツを脱いだだけで、下着もスカートも身に付けたままなのに気が付いた。
「どうした、バニー。自分から誘っておいて、恥ずかしいのか?」
ニヤニヤしながら虎徹が声を掛けると、バーナビーは顔を真っ赤に染めていた。
「……後から入りますから、先に入っていてください」
そう言われるといじめたくなるのが男の性。
虎徹はじりじりとバーナビーに近付いていく。
虎徹から逃げるように後ずさるバーナビーの背中が壁に付き、逃げ場を失うとバーナビーは虎徹から顔をそむけた。
「先に入って下さいって言ったでしょ」
バーナビーの言葉を無視して、虎徹はバーナビーの胸に触れた。
下着の上から揉まれて、思わず腰の力が抜けそうになる。
「なぁ、パンツもやっぱ、女物はいてるの」
嫌な予感がしながらも、バーナビーは律義に答えた。
「そうですよ……」
「それってさ、アニエスのお古じゃねぇよなぁ」
「当り前じゃないですか、新品のを用意してくれましたよ」
「それさ、アニエスに返すの?」
「……下着は買い取るって言いましたよ、さすがに」
バーナビーの嫌な予感は的中した。
「じゃあその下着、俺にちょ」
「嫌です」
最後まで言う前に、バーナビーは虎徹の言葉を遮った。
「最低だ、変態。どうするんですか、僕の下着なんて」
「え、そりゃあ記念に取っといて、夜のオカズに……」
そう言いながら虎徹の手はバーナビーの下半身へと伸び、スカートの中のバーナビーのお尻へと布地越しに触れた。
さわさわと撫でられ背筋がぞわりと粟立つ。
そのまま虎徹の指先が下着へと掛かり、脱がせようと下に引いた。
「あっ……、嫌だ‥っ!」
バーナビーは膝を固く閉じて虎徹のことを押し退けようとした。
けれど、虎徹のことを力一杯押してもびくともしない。
虎徹は腕の中へとバーナビーを閉じ込めて、丸出しになったバーナビーのお尻を撫でた。
「悔しい……、いつもなら、互角なのに」
「ハンドレットパワー使ったら、バニーのが強いよ。俺、一分しか持たねぇもん」
「そんなこと言うなんてずるい……、こんな時に能力使ったりしませんよ」
虎徹から逃れることを諦めて、バーナビーは虎徹の身体に腕を回した。
引いて駄目なら押してみろ、だ。
突然のバーナビーの態度の変化に虎徹も戸惑う。
柔らかな体を押し付けられて、尻を撫でるのは止め、バーナビーの背中へと腕を回した。
「オカズなんて、必要ないでしょう。僕が満足させてあげます」
「……ハハッ、言うねぇ、バニー」
明日になれば、僕は男の体に戻る。
そうなってしまっても、虎徹さんが僕と身体の関係を望むかはわからないけれど、今は考えないことにした。
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