It's a Wonderful Life
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「どうしてです?」

虎徹が照れているのがわかりながら、バーナビーはクスクスと笑った。
虎徹の顔はもう、耳まで赤い。

「虎徹さん、かわいい」
「……うっせ、おじさんをからかうな」
「好きですよ、大好き……」

視線が絡まって、どちらからともなくキスをした。
触れるだけのキスから、互いに舌を伸ばして舌先を触れさせ合う探り合いのようなキスへと移行する。
キスだけでは足りなくて、力いっぱい抱きあった。
とは言っても、今日のバーナビーの体は華奢に思えて虎徹は自然と力を加減していたけれど。
キスを交わしながら虎徹の指先はブラウス越しにバーナビーの背骨を辿り、バーナビーは鼻に掛った声を漏らした。

「ふ……、もう、虎徹さんのえっち」

思わず漏らしてしまった声が恥ずかしくて、バーナビーは冗談交じりに虎徹に絡んだ。

「悪い、つい……」

虎徹は謝って腕を解こうとする。
バーナビーはそんな虎徹にきつく抱きついた。
柔らかな胸が、虎徹の胸板に密着する。

「……続き、しないんですか?」

バーナビーから上目遣いで見つめられて、虎徹の下半身は再びうずいた。

「……楓がいる」

キスだけじゃなく、それ以上のこともしたい。
けど、娘が上のロフトで眠っているというのに、さすがにこれ以上のことはできない。
先ほどまでの会話も聞かれていないといいのだが……楓がタヌキ寝入りじゃなくぐっすり眠っていることを願うばかりだ。

「でも……硬くなってますよね…」

バーナビーに指摘され、虎徹は気まずさに視線を反らした。

「……んなモン、お前が離れてくれたらそのうち収まるよ」

バーナビーは一瞬ロフトの上に視線を送り、それから虎徹へと視線を戻した。
実は、楓は朝まで目覚めたりはしない……はずだ。
遊園地の帰り、車の中で楓が口にしたペットボトルには、バーナビーがどうしても眠れないときに常用している睡眠薬が混入されていたのだから。
バーナビーは、今夜虎徹とどうしても二人きりの時間が作りたかった。
昨日、一年ぶりに再会して、僕は心底この人を愛していると確信した。
一年前のようにつかず離れずの距離のまま、ただの仕事上のパートナー以上には親密だけれど友達でも恋人でもない、じれったい距離感。
そんな距離を保ったまま、一緒にヒーローを続けていくなんて無理だと思った。
駄目なら駄目と、すっぱり拒絶されてしまったほうがマシだ。
そのほうがまだ、諦めがつく。
なんせこの一年、離れていても彼を諦めることができなかったのだから。
バーナビーは決意した。今夜、虎徹との今の心地よい関係に終止符を打つと。
僕の気持ちを伝えよう。
拒絶されるかもしれない、今の関係は壊れてしまって、もう今までのように接してはもらえなくなるかもしれない。
それでも、決意したのだ。
それには、申し訳ないが楓の存在が邪魔だった。
自分がこんな体になってしまったのは本当に予想外の出来事で、けれど好都合だと思った。
この女性の体でならば、虎徹さんを誘惑できるかもしれない。
一度間違いででも体の関係をもってしまえば、情に厚い彼のことだ、そう簡単に僕のことを突き放せないだろう。
とても迷ったけれど、僕がこの体でいられるのは今日限り。
楓ちゃんには申し訳ないけれど、どうか神様も今夜だけ目を瞑って見逃して欲しい。
今夜を逃したら、僕は虎徹さんとただのバディのままだ。
そんな思いから、悪いとは思いながらも虎徹の愛娘である楓に一服盛ってしまたわけだが。
しかし楓ちゃんを睡眠薬で眠らせたなどと、そんなことを正直に言うわけにもいかない。
どうしようか……。



 
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