It's a Wonderful Life
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「……さっきの言葉は取り消します。好奇心なんかじゃありません」

バーナビーは虎徹の手を掴み、自分の胸へと押し付けた。といっても胸の膨らみにではない。心臓の真上だ。

「虎徹さん、僕は、あなたが好きです。すごく、ドキドキしているでしょう?」

バーナビーの心臓は、壊れてしまうんじゃないか、というくらい早い脈を刻んでいた。

「あなたのことが好きだと自覚したのは、あなたがヒーローを辞めると言い出した頃です。僕はずっとあなたとバディを組んでヒーローを続けていくんだって思っていて、まさかあんな急に終わりが訪れるなんて、考えたこともありませんでした」

去年、虎徹は自分の能力の減退と、家族を大切にしたいという思いからヒーローを辞めて実家に戻る決断をした。
一年後、結局こうして舞い戻ってきてしまったわけだが。

「これでも、随分と悩んだんですよ。僕は女性としか付き合ったことありませんし、男の人を好きになったのなんて初めてでしたから……。いえ、ちゃんと人を好きになったのは、虎徹さんが初めてです」

バーナビーが過去に付き合った女性がいる、というのは初耳だった。
これだけもてる男が彼女いない歴=年齢、とはもちろん思ってはいなかったが、今までそういう話題に触れたことがなかった。

「……お前、彼女、いたんだな」

虎徹の少しずれた返答にバーナビーは苦笑を洩らす。

「学生の頃の話です、しかも付き合ってくれと言われて付き合っただけで……長続きしたことはありませんよ」
「入れ食い状態だったわけだ?……って、こら、バニー……」

虎徹が茶化して話題の矛先を変えようとしたのを、バーナビーは再びキスで虎徹を黙らせて遮った。
今度は触れるだけの、啄ばむようなキスだ。
軽くリップ音を立てて、バーナビーは虎徹から離れた。

「……虎徹さん、好きです。だから、あなたとしたい。それじゃダメですか?」
「バニー……」

駄目じゃあない、俺だって何も考えずにこのまま、バニーのことを抱いてしまいたい。
俺があと10歳若かったら、確実にそうしてる。
けど、抱いてしまって、それからどうしたらいい?
こいつは俺よりずっと若くて、結婚して子供もいるような俺とは違う。
こいつの人生はこれからだっていうのに、俺みたいなオジサンがこいつのこれから先の人生を奪っちまうなんて、そんなことできやしない。
そこまで考えて、俺は愕然とした。
俺は、これから先のこいつの人生、丸ごと欲しいと思っているのか。

「今夜だけでいいんです、明日には忘れて、明日からは今まで通りバディとして一緒にヒーローの仕事ができればそれで、僕は十分幸せです」

それは本心ではないだろう。
バーナビーは俺が困っていると思って、俺を困らせないようにそう言ってくれているだけだ。
……そんな泣きそうな顔で、そんなこと言うなよ、バニー。

「ね、クリスマスプレゼントだと思って……思い出を、僕にくれませんか」

バーナビーが精一杯の強がりで笑みを浮かべて、その瞳の端から涙が流れ落ちるのを見た瞬間、俺はバーナビーを抱きしめていた。

「バニーッ……!」

抱きしめずにはいられなかった。
なんて顔をするんだ。
おまえはどこまで俺が好きなんだ。
俺なんかのどこがいいんだよ。
そんなに全身全霊で好きだなんて言われたら、俺は期待してしまう。
俺は期待していいんだろうか。
俺と同じ気持ちで、おまえも俺を好きなんだって思っていいんだろうか。
バニー、バーナビー……
俺の、バニーちゃん。



 
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