It's a Wonderful Life
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「ほーら、着いたぞ。起きろ、二人とも」

レストランで食事をして、みやげを買って花火を見て。
俺たちは思い切り、遊園地を堪能した。
楓もバーナビーも疲れたんだろう、帰りの車中で眠ってしまい家に到着しても起きる気配がない。
俺は仕方なく二人を揺り起こすことにした。

「ン…、あれ、もう着いたの?」

少し体を揺らすと楓が目覚めた。

「楓、バーナビーも起こしてやって」

俺はバーナビーのことも揺り起こそうとしたが、触れるのをためらってしまった。
バーナビーの体が、女だからだ。
今日一日、虎徹はバーナビーに触れることをなんとなく避けていた。
いつも気軽に肩を叩いたり、腕を引いたり、考えてみたら無意識のうちに随分気軽にボディタッチしてるんだってことに、虎徹は今日初めて気が付いた。

「バーナビーさん、起きて」
「ん……、着いたって、どこに……」

バーナビーは酷く眠たそうだった。会話はしているが目は細くしか開いていない。

「よぉ、ようやく起きたか。一応お前の着替えとかあるし、俺んちに来たんだけど。どうする?」
「あ……、とりあえず、降ります」

虎徹は車を降り、二人のために後部座席のドアを開けた。

「すみません、すっかり眠ってしまって」
「気にするなって。疲れたんだろ、慣れない格好だしさ」
「本当に。明日から女性のことをもっと尊敬します」

冗談めかして言ってはいるが、本当に疲れたんだろう。
慣れない靴で遊園地に行くってだけでも疲れるのに、アニエスはヒールが低い靴をきちんと用意してくれていたが、それでも疲れたに違いない。
座るときはきちんと足を閉じなければいけないし、ガニ股で歩くこともできない。
まぁ俺と違ってバーナビーは普段からガニ股で歩いたり、そんな足を開いて座ったりもしないけど。
バーナビーは一切弱音を吐かなかったが、足がだいぶ辛そうなのは見ていてわかったので、虎徹は自分が疲れたふりをして、楓に文句を言われながらもなるべく休憩を多く取ったり気を遣った。
相手はバーナビーなのに、まるで恋人をエスコートしているような不思議な感覚だった。
そう、まるでデートでもしているみたいに。
楓という、コブ付きのデートだけれど。
そんなことを考えて、虎徹は思わず苦笑を洩らした。
どうかしている。
いくら女の子にしか見えなくたって相手はバーナビーで、この姿も今日限りだというのに。
バーナビーがどう見ても女の子にしか見えないから、いや実際今は外見も体も完璧に女の子なんだけど、だから妙なことを考えてしまうに違いない。
二人に先に部屋に入るように促して、虎徹が駐車場に車を置いてくるわずかな時間の間に、ソファーに腰かけていた楓とバーナビーは揃って寝息を立てていた。

「ったく、しょーがねぇな」

よほど疲れているんだろう。
起こすのもかわいそうで、虎徹は楓を抱き上げるとロフトの上の自分のベッドへと運び布団を掛けてやった。
問題はバーナビーだ。
このままソファーで寝かせてやってもいいんだが、そうすると自分の眠る場所がない。
まぁ一晩くらい床で寝てもいいんだけど……。

「どーすっかなぁ」

起こしたほうがいいんだろうか。
ロフトから降り、虎徹はソファーで眠っているバーナビーに視線を向けたところで固まった。
……これは、何かの試練なんだろうか。




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