It's a Wonderful Life
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バーナビーが着替えている間、本来の部屋の主である虎徹は一人外で凍えながら待ち続けることとなった。
どうしようもなく理不尽だが、女3人相手では虎徹に勝機はない。
上着くらい着てくればよかったと後悔しながら15分くらいたった頃だろうか、扉が開く気配に虎徹は振り返った。

「タイガー、もういいわよ」
「うー、さっむかったぁ……」

アニエスに手招きされて、虎徹はようやく温かな自分の部屋に戻ることができた。
さて、バーナビーはどうなったのだろうか。
冷え切った手をさすりながらリビングに向かうと、ソファーに目茶苦茶キュートな女の子がちょこんと座っていた。

「ぅわ……、かっわいいーなァ……」

素直に感嘆の言葉が口から漏れる。
これが本当に、あのバーナビーなんだろうか。
白地の柄プリントのシャツに、黒のバルーン型のミニスカート、足は生足ではなく黒のタイツなところが残念だが今は12月、寒いので仕方が無い。
足元はシンプルな、同じく黒のショートブーツ。
そして上着はピッグカラー(そうアニエスが言っていた。つまりうっすいピンク色)のファーコート。
ファッション誌の表紙になってもいいんじゃないか、っていうくらいに可愛い。

「どう?上出来でしょ」

得意げなアニエスに虎徹は頷く。

「うん、なんつーか意外……。アニエス、こーゆう服も着るんだなあ」

いつもビシッとしたシャツにスリットの深いタイトスカート姿のアニエスが、こういった系統の服を持っていたことが意外だった。

「ちょっとタイガー、それどういう意味?」

虎徹のいらぬ一言のせいで不穏になった空気を崩してくれたのはバーナビーだ。

「あの……、本当に変じゃないですか?」

バーナビーが上目遣いで不安そうに尋ねてきたので、虎徹は手を振り顔を振り全力で否定した。

「ぜんっぜんヘンじゃないって!めっちゃくちゃかわいい!」
「そうよ、私が服を選んで、ヘアメイクまでしてあげたんだから」

アニエスも得意げに虎徹に同調した。
なぜだろう、相手がバーナビーだということは頭では理解しているのだが、いつものバーナビーとは違いすぎて気持ちのほうが追いつかない。

「ほら、お父さんもかわいいって!これなら絶対、バーナビーさんだってわからないよね?」

楓に言われ、虎徹は本来の目的をようやく思い出した。
そうだ、今日は遊園地に行くのだ。

「やっべ、そろそろ行かねぇと。混んでるよなあ、クリスマスだし」

時計の針は10時少し過ぎを指している。
今から向かえばお昼前には着けるだろう。

「……じゃあ、私はそろそろ失礼するわね。服は、ちゃんとクリーニングに出して返してちょうだいよ?」
「あ、はい……。ありがとうございました」
「それから、明日は一日密着するから。いつものバーナビーに戻っておいてね」

広げたメイク道具を手際よく片付けながら、アニエスはバーナビーに言いたいことをポンポンと投げつける。
荷物をまとめると、くるりと虎徹と楓に向き直った。

「じゃあね、タイガー。楓ちゃんも、二人をお願いね」
「はいっ!本当に、ありがとうございましたっ!」
「いいのよ。またね」

楓に向かってニコリと微笑むアニエスに虎徹は異議を唱える。

「いや、二人をよろしくっておかしいだろ、俺に向かって言うべきじゃねぇの?」
「あら、だってタイガーより楓ちゃんの方がしっかりしてるもの」

何も言い返せない虎徹の後ろで、バーナビーがくすりと笑った。



 
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