It's a Wonderful Life
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虎徹が口を挟もうとすると、既に楓は能力を発動させていた。
楓の両手の掌の間に、キラキラとした輝きが生まれている。
その光の塊を、バーナビーに向かって飛ばした。

「う、わっ……?」

光がバーナビーにぶつかり、バーナビーの身体が白く発光する。
バーナビーを包み込んだ光は徐々に静まり、やがて光は完全に失われた。

「……バ、バニー……?」

光により目潰しを食らった状態の虎徹は、目をしぱしぱさせながらバーナビーへと視線を向けた。
当の本人であるバーナビーはぺたりと床に座り込んでいる。

「大丈夫、か……?」

虎徹が声を掛けると呆然とした面持ちのまま、バーナビーは顔を上げた。

「こてつ、さん……?」

最初の違和感は声だった。
耳慣れたバーナビーの声とは違う、かといってバーナビーの声であることにはちがいない。
いつもよりトーンが高いのだ。
違和感はそれだけではない。

「あれ、なんか……縮んだ?」

フラフラと立ち上がったバーナビーの脳天が、虎徹の鼻先辺りの位置にある。
向かい合って立つと、バーナビーは虎徹を見上げた。

「……虎徹さんが、大きい」

呆然とする二人を余所に、楓は瞳を輝かせてバーナビーを見つめていた。

「バーナビーさん、かわいいっ!」

そう、確かに可愛い。
元々整った顔立ちをしているバーナビーだが、眼鏡越しの切れ長の瞳はやや丸みを帯び、鼻や口は小作りになり、唇なんて綺麗なさくらんぼ色だ。
と、いうことはその下は……。
虎徹の視線は自然と顔から下へと向かった。
バーナビーのライダースの胸元に視線を向けると、案の定そこは膨らんでライダースの布がきつそうに盛り上がっている。
虎徹の喉がゴクリ、と鳴った。

「バニー……」

虎徹の視線の意味に気付いてバーナビーは胸元を腕で隠しながら後ずさった。

「なっ……、どこ見てるんですか?」

いーじゃねぇか、見せろって。なんて、楓がいなければ絡んだかもしれないが、虎徹は娘の手前自重した。
だが視線を向けるとさっきまでそこにいたはずの楓の姿がない。

「あっれ、楓……?」

虎徹がキョロキョロと視線をさ迷わせ楓の姿を探していると、楓は玄関から現れた。
楓の隣にはアニエスがいる。

「ハァイ、タイガーに……、あら、バーナビー、本当に女の子になっちゃったの?」
「どーして、アニエスが……」

虎徹の隣を摺り抜けて、バーナビーに向かうアニエスを見送りながら呆然としていると楓が説明を開始した。

「私がバーナビーさんの服とか、メイクのことで相談したら来てくれるって言うから、お願いしちゃったの」
「……楓、アニエスとも連絡先交換してたの?」
「うん。ときどきメールしてるよ」
「そっか……」

アニエスとメールでどんなやりとりをしてるのか、そもそもよく服やメイクのことまで気が回ったなあとか、言いたいことはたくさんあったが、言いたいことが多過ぎて言葉になって出てこない。
我が娘ながらどこまで用意周到なんだろうか。
バーナビーたちに視線を向けると、アニエスは既にメイクを開始していて楓は興味津々でそちらへと向かった。

「やっぱ、女の子だなあ……」

楓ももう、メイクやファッションに興味を示す年頃なのか、と虎徹がしみじみとしているうちにバーナビーのメイクは終了したらしい。

「わーっ、バーナビーさん、すっごい可愛い!ね、お父さんっ!」
「お、あ、ああ……」

確かに、可愛い。
さっきの素顔のままでも可愛かったが、眼鏡を外してコンタクトにし、アイラインが引かれマスカラを塗られた瞳はパッチリとしていて、さくらんぼ色の唇はグロスが塗られツヤツヤと美味しそうだ。
楓はキラキラとした視線を送り、虎徹は開いた口が塞がらない。

「あの……、本当に変じゃないですか?」
「どっからどー見たって、完璧な女よ。もっと胸張って、自信持ちなさい」

バシッとバーナビーの背中を叩いたのはアニエスだ。

「遊園地に行くんでしょ?服もカジュアルめなの選んできたから、メイクも薄めにしたんだけど……肌すっごく綺麗なんだもの、ムカつくわ」

そう言いながらもアニエスは楽しそうだ。

「さぁ、次は着替えちゃうわよ。タイガーは外に出て」
「……へ?」
「女の子の着替えを覗く気?さっさと出てちょうだい。着替えらんないわ」

すっかりアニエスの手下と化した楓に背を押され、虎徹は部屋から追い出されてしまった。
ここは俺の部屋だっつーの!



 
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