It's a Wonderful Life
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そんな経緯で今日という日を迎えることとなった。
楓が到着し、まずは楓の荷物もあるので一同は虎徹の部屋へと向かうことにする。
虎徹は楓の荷物を持ちながら、にこやかに会話をするバーナビーと楓にちらちらと視線を送った。

……楓は絶対に、やらないからな。

心の中で、そう硬く誓いながら。

「おとーさん、まだ荷物片付けてないの?」

虎徹の部屋を見た愛娘の第一声に虎徹は頭が上がらない。
実家からこのアパートに戻ってきてからの、虎徹の荷物はほとんど段ボールに入ったまま部屋の隅に詰まれていた。

「いや、その……、色々忙しくて」

娘相手にしどろもどろで言い訳をする虎徹の姿はとても情けない。
くすりとバーナビーから笑い声が漏れる。

「どっちが親だかわかりませんね」
「うるせー」

いつもの調子でバーナビーに言い返すと、楓から説教が返ってきた。

「悪いのは片付けないお父さんでしょ!」
「……はい」

その通りなので、何も言い返せない。
何とか話題を反らせようと別の話題を探すべく視線をさ迷わせると、バーナビーの姿が視界に入った。

「あっ、バニ、いや、バーナビー。そういやお前、変装ってどーすんだよ」

変装すると言っていたバーナビーは、いつもと同じ赤いライダース姿だ。。

「あぁ、僕、いつも同じライダース着てるでしょう。だから、これを脱いで虎徹さんの服を借りれば変装になるんじゃないかと」
「……服、貸して欲しいってこと?」
「はい」

そんな話は全くもって聞いていない、初耳だった。
虎徹も仕事に出るときはシャツにベスト、というスタイルに決めているので、私服はそう持っていない。
しかもその服はまだ、引越し荷物の中に埋もれたままだ。

「んな、急に言われても……」

正直、探すのも面倒臭い。
と、そこに楓がニコニコとしながら口を出してきた。

「バーナビーさん、そんなことより絶対バレない変装方法があるんですけど!」

楓いわく、今日シュテルンビルトに向かう途中、同じ年くらいの女の子と同じ電車になり、意気投合して会話をしているうちにお互いにネクストだということが判明した。
楓は事情を話し、絶対に悪用しないという条件付きで能力をコピーさせてもらったらしい。

「えーっと、つまり、それって変装できる能力ってこと?」

だから楓は今日、虎徹が触れようとするたびにするりと交わしていたわけだ。

「そう、性別が変わっちゃうの」
「「えっ……」」

虎徹とバーナビーは絶句した。
先に口を開いたのはバーナビーだ。

「あの、つまりそれは僕が女の人の身体になる、ってこと、かな?」
「はいっ。女の人になっちゃったら、絶対にバーナビーさんだってわからないでしょ?」
それはそうだろう。
しかし、そんな能力があるだなんて、虎徹たちは半信半疑だった。
二人の疑いの眼差しに、楓は頬を膨らませる。

「あっ、もうー。本当なんだからね。私、自分で試したもん」
「「えっ……」」

二人は再び絶句した。

「そんな、楓、だって……」

触れて確かめようとしてきた虎徹を、楓は素早く交わした。

「もう、お父さん!触らないでよ、お父さんの能力移っちゃう!今はもう違うよ、電車の中で試したの」

この能力には制限があり、自分自身には使えない。また、変身は能力者本人にしか解くことができない。

「つまり、僕が女になったら、楓ちゃんにしか元に戻せないってことですよね?」
「うん、そうなの」
「……って、それって危ないんじゃねーの?」

楓の能力は不安定だ。
誰か他のネクストに触れれば能力は上書きされてしまう。
バーナビーが女になったまま、楓の能力が上書きされてしまったらバーナビーは元に戻れなくなるのではないだろうか。

「それは大丈夫、ちゃんと連絡先交換して、明日の朝会う約束してあるから。それにね、もう来ちゃうからバーナビーさん、変身しちゃって下さい」
「えっ、来ちゃうって、誰が……」



 
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