Catch me if you can.
ある程度硬くなってくると、虎徹は手を休め男を見上げた。
相手はあまり若くない。そう何度も、というのは無理だろう。
虎徹は奥の手を使うことにした。
身体を起こしながら片手を後ろポケットへと忍ばせる。取り出したのは小さな錠剤だ。
それを手の平の中に忍ばせる。
「……少しは、その気になってくれた?」
男の首に腕を回し、甘えるように抱き着いた。
拒絶されるかと思ったが、意外にもその気配はない。
「ふふ、まあ、少しは、ね」
この様子ならいけるだろう。
虎徹は男に抱き着いたまま、こっそりと錠剤を口に含んだ。顔を上げ、薄く唇を開き男へと顔を寄せる。
錠剤は強壮剤のようなものだ、そう性質の悪い薬ではない。それをキスのどさくさで男に口移しで飲ませてしまおうと思った。
しかし、虎徹の企みは男によって遮られてしまった。手の平で顔面を押されたのだ。
酷い拒絶のされ方だった。
「なっ!……あんたの舐めた口とは、キスしたくないって?」
男からの返答はない。
だが次の瞬間、男に顎を捕らえられ唇を塞がれた。
予想外の展開だったが虎徹にとっては好都合だった。
虎徹は男に錠剤を飲ませてしまおうと、いそいそと唇を開いた。
だが、それは間違いだった。
いつの間に口に含んだのか、男からワインを口移しで飲まされてしまったのだ。
やばい、と思った時には既に遅く、唇をぴっちり塞がれて頭もがっちりとホールドされて逃げ場がない。
結局俺は、男に飲ませるつもりだった錠剤をワインと共に自分で飲み込んでしまった。
「う……、なに、するんだよ……」
けほっ、と小さく噎せながら男に恨みを込めた視線を向ける。
「僕は、ワインを飲ませただけだけど?」
わかっているのだ、この男は何もかも。
虎徹が男に錠剤を飲ませようとしていたことに気付いていて返り討ちにしたくせに、あくまでも知らん顔でシラを切る。
「あー…、サイアク……」
即効性の強壮剤は、虎徹の身体に変化をもたらした。
男のモノを舐めている時から多少の興奮を覚えていたが、股間に熱が集まってくるのを自覚した。
相手をこの状態にして、思う存分跨がってやろうと思っていたのに。
「おや、どうしたの。辛そうだね」
虎徹がずるずると床にうずくまってしまうと頭上から楽しげな男の声がした。
身体が、熱くて辛い。
体内に篭った熱をどうにかしたくて、虎徹が自ら慰めようと下半身に手を掛けようとしたその時だった。
男に腕を掴まれ後ろ手に回される。
普段の虎徹なら後れを取るような相手ではない。しかし虎徹は普通の状態ではなかった。
両手首を背中でひとまとめにされ、何か見えないが手錠のようなもので固定される。
虎徹はそれ程驚かなかった。
そういう趣味の男と寝たこともあるし、プレイとしては嫌いじゃない。
本当にヤバい相手だったら、いざとなればハンドレッドパワーで逃げればいい。
「ハハッ…、意外といい趣味してんね」
背中に膝を乗せ虎徹を押さえ付ける相手を首を捻って見上げた。
「お仕置きだよ、悪戯なんてしようとするから」
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